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November 18, 2016
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みなさん、こんばんは。
トランプ氏のブレインが着々と決まっていますね。一方隣の韓国では大統領弾劾が始まりそうな勢いです。

国が乱れると国民が苦しみます。かつてこの国も苦しみました。

サラエボのチェリスト
The Cellist of Sarajevo
武田ランダムハウスジャパン
スティーヴン ギャロウェイ


 「サラエボは何があった街?」と聞かれ、歴史を学んだ学生ならば、その場所がどの国にあるのかは答えられなくても、ある事件については答えられる。小さな町で起こった皇太子狙撃事件から、世界中を巻き込む大戦の一つ―第一次大戦―が始まった。しかしこの町を襲う戦火はそれだけでは済まなかった。第二次大戦後、ユーゴスラビアという国になっていたその場所は、チトー大統領の死後、ボスニア・ヘルツェゴビナとして独立しようとした勢力と、セルビア人国家を造ろうとする側との武力衝突が繰り返された。その中で、水を汲むために並んでいた22人の市民がテロにより亡くなった現場で、『アルビノーニのアダージョ』を死者の数だけ演奏し続けるチェリストがいた。

 映画『戦場のピアニスト』にも戦場でピアノを弾く演奏家が登場したが、今回のチェリストはピアニストとは立ち位置が異なる。彼は何も語らず、従って背景や心情は何一つ紹介されない。むしろその方が良い。彼は演奏で、その立ち姿で語っている。

 本作は史実に材を取った作品である。実在のチェリストは、取材にやってきたCNNのクルーが「あなたは気は確かですか?」と尋ねると、「私に気が確かかどうか聞く前にサラエボを砲撃した人々に訊いたらどうですか」と答えたそうだ。著者は特に取材をせずに、彼をモデルにチェリストを作り上げた。

 章毎に視点が変わり、チェリストは冒頭に登場するのみで、それ以降は彼は物語の遠景になる。近景として登場するのは、丘の上に陣取って狙撃するセルビア軍に対応するスナイパーのアロー、家族と口やかましいアパートの住人のために水汲みに通うケナン、妻子を疎開させて妹の家に住むドラガンの三人で、彼等の動向が時系列に沿って描かれる。奇しくも実在の演奏家と小説の中の彼は、ぴたりと重なる。いつ自分が砲撃を受けてもおかしくない場所で演奏を続けるその姿勢に、上述の三人が影響を受け、或いは何かを仮託して、日々を生きていく。
 
  どんな状況下であっても、人の命が無残にも奪われることはあってはならない。これは大前提だ。しかしこれほど頻繁に世界でテロ行為がおこなわれてしまうと、大前提に対する執着を失う。戦争なら仕方がない、と。「仕方がない」と思うから、「なんでこんな時にこんな場所で演奏を」と、客観的な視点を持つジャーナリストまでが尋ねてしまう。しかし逆に尋ねよう。「人が亡くなった場所で悼んで音楽を演奏することは、当たり前のことではないのか」と。来る日も来る日も身をすり減らして、狙撃の恐怖に怯えているのは非日常で、本来あるべき姿は、妙なる音楽に耳を澄ませて人を思いやる余裕を持って生きられる日常だ。荒廃した戦場で響く音色は、どんな雄弁な演説よりも、本来はそうあるべきなのだ、という日常を、人々に呼び起こす。


    出版社   武田ランダムハウスジャパン   著者・翻訳者   スティーヴン ギャロウェイ (著)   初版発行日   2009-01-22【中古】サラエボのチェリストKSC






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最終更新日  November 18, 2016 12:02:28 AM
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