映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんは、デニス・ホッパーを御存知ですか？
アメリカンニューシネマの象徴のような存在でした。
彼が映画で演じたのはこの映画の主人公です。

アメリカの友人 河出文庫
Ripley's Game
パトリシア・ハイスミス

『太陽がいっぱい』で手に入れたディッキーの有価証券と、『贋作』で関わっていたダ―ワット商会からの歩合、それに裕福な妻の実家からの仕送りを得て、もはや四苦八苦して金を得なくてもいい生活を送っているトム・リプリー。怪しい友人から「簡単な殺し」を依頼され、断ると誰か出来る人はいないか？と打診される。一度は断ったものの、トムは貧しい額縁商ジョナサン・トレヴァ二―をにわか殺し屋にしようと考える。

　トムがジョナサンをターゲットに選んだきっかけは、とある集まりで挨拶をしたところ「お噂はかねがね」と応えたジョナサンの物言いが勘にさわったからだ。酷い。八つ当たりではないか。ところがここにもリプリーのこだわりがあった。

「もしかしてトレヴァニーはわれわれの仲間なのか？しかし、トムにとってわれわれとは、トム・リプリーひとりにすぎない。」


　思いがけない状況に身を置くことによって、誰でも自分のような殺人者になり得るのか。それとも、そうなれるのは自分だけなのか。自分が特別であって欲しいと願う一方で、半身を探すような気持ちがあるようにも見える。後半彼の思いがけない登場シーンで、ジョナサンへの執着が明らかになる。やはりハイスミス、女性と男性の絡みより、男性間に漂う感情を描くのがうまい。なぜならば、最初はジョナサンを心配して「怪しげなリプリーから離れて！」と説く妻シモーヌに共感していたのが、ある時点を機に恐ろしくウザイ存在に映る。半身たる存在が見つかることは、リプリーにとっては幸福だろうが、世間にとっては完全犯罪を起こせる恐ろしい人間がもう一人存在することになる。さて、本当のところはどうなのか。

　デニス・ホッパーがリプリー、ブルーノ・ガンツがジョナサンを演じたヴィム・ヴェンダース版や、ジョン・マルコヴィッチがリプリー、ダグレイ・スコットがジョナサンを演じた日本未公開版の映画化作品がある。


アメリカの友人 河出文庫 / パトリシア・ハイスミス 【文庫】ローチケHMV 1号店