映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。
風邪をひいて週末は散々でした。
みなさんはお元気ですか。
さて、こちらは奇行？で知られるフェル博士のミステリシリーズです。

緑のカプセルの謎
The Problems Of The Green Capsule
ジョン・ディクスン・カー
三角和代

予感はあった。なぜならープニングがイーデン・フィルポッツの「赤毛のレドメイン家」にそっくりなのだ。イタリアのポンペイで、街の名士らしき一家が“毒殺者の家”と呼ばれる観光地を訪れていた。その中に若い女性が一人おり、一家は彼女の恋愛についてなかなか厳しい意見を述べていた。その一部始終を立ち聞きしていたらしき男の正体は、フェル博士と『曲がった蝶番』でコンビを組んだスコットランド・ヤードのエドマンド警部。

　彼は、殺人事件の捜査に出向いた先で、旅先で見かけた女性マージョリーと再会する。しかし、彼女が忘れているのを幸いに、初対面であることを告げない。まあ、これだけなら、自身が捜査を担当する身であり、彼女が容疑者の一人なのだから当然だ。ところがエドマンド警部は、この事件を振ってきたクロウ少佐やボストウィック警視にまでも、マージョリーと会った事実を隠す。ここが納得いかず、「どうも既視感があるなぁ…」と思っていたら、湯治中のフェル博士を前にしたエドマンド警部の堂々の大告白シーン。「あちゃーやっぱり!」と膝をうつやら疲れるやら。つられてフェル博士もいろいろと不思議な言動を繰り広げる。ま、これはいつものことか。

　さて肝心の事件はといえば、被害者は多くの目撃者の前で毒を飲んで死に、かつ当時の様子が映画撮影機で残っている。物証と目撃証言があれば、犯人逮捕なんて簡単じゃん!と思うなかれ。実は目撃者の証言が微妙に食い違い、映像には、ありえないものが映っていた。カー作品お馴染みの密室は登場しないが、後半にフェル博士の「毒殺講義」が行われ「どのような人物が毒殺犯たり得るか」という心理分析が為されている。

　創元推理文庫で刊行され、入手困難となっていた作品の新版。本編でも言及される“クリスティアナ・エドマンズ事件”という現実の毒殺事件がベースになっている。


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