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April 21, 2017
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みなさん、こんばんは。
私の上司は年下なのですが、時々高慢に思える物言いをします。
残念だなぁと思います。
言葉は人そのものを表現する手段なのに、誤解を受けがちです。

この短編集も人々の心のすれ違いについて書かれています。

レンブラントの帽子
Rembrandt’s Hat
バーナード・マラマッド
夏葉社

美術史家のアーキンは、職場の美術学校の同僚で彼よりも一回り年上の彫刻家ル―ビンが帽子を被っていたのを見て帽子を誉めたあとに、こう言う。
私が気に入っているわけは、レンブラントの帽子そっくりなんですよ。中年ころの自画像は、どれもすばらしい。あれがかぶっている帽子に似ているんですよ。あの絵はたしかアムステルダムの王立美術館にあると思いますがね。お仕事のご成功を祈りますよ。


 途端にル―ビンは表情を変えてアーキンを睨みつけ、彼を避けるようになる。もちろん帽子も姿を消した。訳がわからないアーキンはあれこれと思い悩むが、自分は褒めたつもりなので段々むかむかしてくる。 

 表題作「レンブラントの帽子Rembrandt’s Hat」は二人の男性の間に行き交う感情と言葉の物語だ。「行き交う」と書いたがル―ビンの内面は一切描かれず、そのため読者も理由のわからないアーキン同様「彼は一体何に不快になったのか?」を思い悩む。これと同じ事は日常でもある。ちょっとした言葉の行き違いで、相手がふと黙ってしまったり、声の調子が変わったりする。余裕があればふと立ち止まって「あれ、何か悪い事言ったかな?」と考えることができるが、忙しいと相手の様子だけが残ってかえってこっちに澱みが残る。なかったことにして日々が過ぎていくのを待つか、相手と話してリセットするか。どちらでもうまくいく場合があるが、後者は関係を繋ごうとする気持ちがより強く出ている。

 「引出しの中の人間Man in the Drawer」は、冷戦時代のソ連にやってきたアメリカ人のフリーライターと、作家を夢見るユダヤ系ロシア人運転手の話だ。運転手が自分が書いている作品を出版して欲しいと執拗に迫るのに対して、アメリカ人は関わり合いになるまいと防戦一方―一方的な関係で始まる。最初は大したことないだろうと思っていた運転手の作品に見込みがあることがわかっても、やはりアメリカ人は逃げ腰だ。偽善者であることは百も承知で「自分に出来ることは何もない」と突っぱねるが、やはり途中で心がぐらぐらと揺れて来る。心は一人の時には揺れない。他者と関わることで揺れ動き、変化する。

 「わが子に、殺されるMy Son The Murderer」はタイトルこそぎょっとするが、内容はさほど過激ではない。ひきこもりで何もしようとしない息子と、彼を心配する父親の物語だが、父親の切実な思いがタイトルに込められたのか。

 感情が一方向にしか進まない関係は苦しくて出られない迷宮のようだ。皆そこから出たくてもがき、周囲を傷つけ、自分も傷つく。人とコミュニケーションを取るということは、傷を抜きには成立しない。それでも必要なことである、といずれの短編も伝えている。










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最終更新日  April 21, 2017 12:00:24 AM
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