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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
大型連休まであと少しですね。だいぶ暖かくなってきましたが
今夜は遅くから天気が崩れるようです。隣の国の北朝鮮が気になります。 極右政党が飛躍しそうなフランスのことも。 さて、今回はやきものの話をします。 修羅の器 澤田ふじ子 いいものは、時代を越えて生きる。それは正しい。でも、「生き残ってきたものだけがいいものだ。」と言い切られると、「いや、必ずしもそうではない。」と異義を唱えたくなる。時代の趨勢に逆らって生きた人々が、不当な評価を受けてきたのを、今まで何度も見てきた。人に対して行われた事が、ものに対して行われなかったはずがない。 天正元(1573)年、尾張国知多の常滑領は一万二千石だったが、須恵器の伝統を受け継ぐやきものがもたらす利益で、常滑城主・水野監物は十万石大名となった。織田信長麾下の武将だった彼は、信長の躍進と共に、茶匠武野紹鴎・連歌師里村紹巴・今井宗久・千利休らと懇意になる。常滑のやきものは茶湯者達にも好評で、全て物事は順調にゆくかに見えた。ところが信長が、自領瀬戸のやきもの(後の瀬戸物である)保護を目的に禁窯令を出した事から、監物と常滑焼の運命が大きく狂い出す。 身分にとらわれず、能力ある者をどしどし取り立てた革命児・信長。けれどやきものに関しては、出自にとらわれず素晴らしいものを愛でるわけではなかった。この時点で彼は全国を統一したわけではないのだから、やはり、いざという時に自分のために働いてくれる兵となり、戦費の支えをしてくれる地元を優遇するのは、当然の処置なのだろう。しかし、他の地域に全く生産を禁じてしまう所が、いかにも極端な性格の信長らしい。日本六古窯の中で最も古い歴史を持つ常滑焼に誇りを持っていた人々にとっては、どうあっても堪え兼ねる理不尽極まりない仕打ちだが、時の為政者・信長に、命を賭してまで異を唱えられる者など、いるはずがない。かくて常滑焼も、監物も、そして監物の近習の平蔵も、不遇をかこつ日々が続く。 歴史の授業では、能楽、浄瑠璃、歌舞伎、障壁画など、自由闊達な雰囲気の安土・桃山文化を教えられる。けれど、もてはやされるものの影には、片隅に追いやられるものが、常にある。不当に潰されていったもう一つの文化がある事を知らずして、真の歴史は語れまい。 この物語の各章は、全て平蔵と関わりを持つ二人の女性の独白から始まる。前半は常滑焼に殉じる側に身をおいた加世が、後半は前田玄以の家臣・小笠原図書の妻となった刀禰が語り手となる。あえて歴史の表舞台に登場しない女性を主人公にした作品に、幸田真音氏の「藍色のベンチャー」がある。奇しくもこの本も、時代の波に翻弄された幻のやきもの、湖東焼に関わった人々を取り上げている。 【中古】 修羅の器 / 澤田ふじ子伊藤書房ネット事業部 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
April 25, 2017 12:00:19 AM
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