映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。
6月ももう半分を過ぎましたね。来週は夏至です。あまり暑くないですね。

さて、こちらは宇宙を舞台にした岩窟王のはずなのですが…。

虎よ、虎よ！ （ハヤカワ文庫）
Tiger!Tiger!
アルフレッド・ベスター

時は25世紀。“ジョウント”と呼ばれるテレポーテーション(瞬間移動)により、世界は大きく変貌した。

「まさに黄金時代だった。雄渾な冒険が試みられ、生きとし生けるものが生を謳歌し、死ぬことの難しい時代だった…しかし、誰ひとりそんなことを考えていなかった。これこそ、富と窃盗、収奪と劫略、文化と悪徳の未来の実現だった…しかし、誰ひとりそのことを認めてはいなかった。いっさいが極端にはしる時代であり、奇矯なものにとって魅惑的な時代だった…しかしそれを愛するものとてなかった時代なのである。」


　　カッコいい前振りから始まるスペース版岩窟王。ある一つの能力の優劣によって、国家や惑星の力関係、個人所有の財産などが容易く入れ替わってしまうというアイデアは面白い。舞台を宇宙に持ってきたことで、ガリヴァー・フォイル＝エドモン・ダンテスが感じる苦悩や孤独感が一層際立つ。「絶海の孤島ならともかく、おいそれと人がやって来ない宇宙からどうやって戻って来る？」という難題も、ジョウントという能力によって解決。

　自分の存在に気づきながら逃げた宇宙船ヴォーガへの復讐心に燃えて、ガリヴァーは関係者を探すも、次々と殺されていく。「身分を偽り、肉体改造を繰り返し、どんなに上辺を飾っても、怒りが抑えられなくなると虎の刺青が浮き出てしまう」という設定は、本性はどんな事をしても消せないという比喩か。復讐心に燃えたガリヴァーの女性に対する態度もいろいろひどいが、ヒロイン達もそんな彼に対抗しうる一筋縄ではいかないキャラクターに設定されていて、負けず劣らず逞しい。原作を踏襲して個人的な復讐譚に終わるのかと思いきや、ガリヴァーがとんでもないものに変貌していくラストは賛否両論。後半部分は訳者の苦労＆工夫が偲ばれる。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。　


【楽天ブックスならいつでも送料無料】虎よ、虎よ！ （ハヤカワ文庫） [ アルフレッド・ベスター ]楽天ブックス