映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。オリンピック見てますか。
時差がなくていいですよね。

さて、今回紹介するのはフィリップ・K・ディックの作品です。


銀河の壺なおし〔新訳版〕
Galactic Pot-Healer
（ハヤカワ文庫SF）
フィリップ・K・ディック

ジョー・ファーンライトは自称地球一の壺なおし。ところが今や壊れやすい陶器ではなくプラスチックが流行して商売はあがったり。失業手当をもらいながら、仲間と言葉遊びをする毎日を送っていた彼の元にシリウス星系のグリマングから巨額のオファーが届いた。海底に沈む大聖堂ヘルズカラを引き揚げるため、グリマングの待つ惑星へと向かうが…。

　映画『トータル・リコール』のイメージがあったので主人公はヒーロータイプかと思っていたら、離婚した妻からは手当をせっつかれ、日がな一日言葉遊びで時間をつぶす真逆のキャラだった。ではそんな彼が思わぬ出来事で今まで隠されていた能力を発揮するのでは？(どうしてもヒーローにしたいらしい→自分)と更に期待すると、これもどうやら眉唾だ。大体オファー相手のグリマングが、事前情報によると｢無一文で貧乏｣らしいし、ジョ―によこしてくるメッセージ(手回し式の蓄音機)は、都合の悪い質問がくると途端に意味不明のわめき声になる。どう考えてもヒーローものになりそうな予感はない。

　かと思えば

｢人間とは、気が狂った天使だ。ジョー・ファーンライトは思った。かつて、人間は―ひとり残らず―純粋な天使だった。そのころは、善か悪かを選ぶだけでよかった。天使でいることは簡単だった。それからなにかが起こった。なにかがおかしくなるか、壊れるか、しくじるかして、その結果、天使たちは、善か悪かではなく、ふたつの悪のうち、ましなほうを選ぶ必要性に直面した。その結果、彼らは錯乱し、いまでは人間になってしまった。｣


　なんて叙述が入るので｢お、何だかテツガクテキな事を言い出したぞ主人公!｣と期待。更には白いヘルズカラと黒いヘルズカラが現れて｢善悪の対決？｣過去と未来と現在が全部書いてある本が出てきて｢運命Vs抗う人間の宿命的な戦い？｣などと大いに煽ってくれる。

　星に行くまでの前半は小ネタのジョークを仕込みながらすこぶる快調なテンポで進む。対して後半はそれが狙いなのか、ストーリーもあまり進まずぐだぐだ。名前を呼んでもらう事に拘る執事っぽいロボットやあっと驚くグリマングのアレとか｢SFなんだよね？｣と首をかしげるほどのスラップスティックの連続に、最後までの間に果たして彼は主人公らしい所を見せることが出来るのか？そっちの方がハラハラ。


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