映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。オリンピックが終わりましたね。
エキシビション、綺麗でしたね。人面鳥？が何だか怖かったですが…。

さて、こちらはアルフレッド・ベスターの短編集です。

イヴのいないアダム (ベスター傑作選) (創元SF文庫)
Adam and No Eve and Other Stories
アルフレッド・ベスター
創元推理文庫

表題作『イヴのいないアダムAdam and No Eve』は、とんでもない場所に降り立ってしまったクレインという男性の描写で始まる。彼に話しかける男性と女性が登場するが、すぐ消える。ああ、これは幻なんだ。何だか『ソラリス』っぽいな。…と、情報を小出しにするパターンだ。そのため最初のうち読者は主人公に感情移入すべきかどうかわからない。更に読み進んでいくと、月へロケットを飛ばす計画に主人公が関わっていて乗り気であること、但し、発射の際に、一滴でもある液体が地球に落ちたらとんでもない事態になることがわかる。そして、どさくさでロケットが出発してしまい…。

　はい、どうなったかお分かりですね。しかしこういう高リスクの計画をたった一人が強行できる組織に問題があるのでは？ところで、貴重な鉱物を手にいれるとかではなく、本当に旅行だけがしたかったの？それはもう罪作り。

　『選り好みなしHobson's Choice』では、物語が始まる前から
「これはあなたや、わたしや、アディヤーのような共犯者への警告である」
と、登場人物を知る前から同類にさせられている。そこでアディヤー氏がどんな人物かと思えば、統計学者で、夜になると空想にふけるが、とりわけ奇数週の木曜日ごとには、自分が地球最後の男になり、世界中の情熱的な美女を身ごもらせるとか、透明人間になって銀行破りをする空想にふけるらしい。
大いに危ないじゃないかおい。
「ここまでの点で、あなたとわたしとアディヤーはなんら変わるところがない」
と、ダメ押しのように書かれてしまっているが、わたしはともかくあなた＝読者は違うと思うぞ。
さて、アディヤー氏は最近戦争で死者数が減っているはずなのに、人口が微増している現象を不思議に思っていることがある。さてその原因を探っているとSFお馴染みのアイテム登場になる。本作以外にも核が登場する短編が収録されているのは時代色か。とはいえ、放射線浴びてるのに意外と平気で歩き回っている描写が普通に書けるのはアメリカならでは。日本だったらこういう描写はまず嘘とわかっているので書けない。

　虎よ、虎よ!もそうだったが、ベスター作品では、登場人物が規格外の行動に出る。はちゃめちゃなキャラクターを登場させた要因は、かつてテレビドラマの脚本を書いていたベスターが、あれこれあった制約に嫌気がさして「活字でやりたい事やってやる!」と決意したかららしい。

全10編を読み終えると、ベスターの「鬱憤晴らしてせいせいした！」という表情が目に浮かぶかもしれない。そしてその表情は、彼が生み出した登場人物の誰かに似ていたりして。



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