映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。新入社員は出社第一日ですね。
電車がこみそうです。

さて、今日はミステリを紹介します。

矢の家 （創元推理文庫）
The House of The Arrow
A・E・W・メースン

ロンドンのフロビッシャー＝ハズリット法律事務所はフランスの資産家夫人の財産管理を担当していたが、彼女の死後、義弟から告発の手紙が舞い込む。若き弁護士ジム・フロビッシャーはパートナーのハズリットに頼まれて事件を担当するパリ警視庁の探偵アノーに会いに行く。ジムに「道化芝居」と描写されるようなちょっとおどけた態度を取りながらも、鋭く事件の真相に迫るアノーの実力や、いかに？

　映画化された『サハラに舞う羽根』の作家によるミステリ。名探偵と凡人の相棒コンビが事件に取り組む探偵ものの王道であるが、本作のみジムが相棒だが、通常アノーの相棒は本作にもアノーの会話にのみ出てくるジュリアス・リカードゥらしい。もちろん二人は初対面なので、どんなに評判が良くてもジムには最初に疑いがつきまとう。ましてや、こんな物言いをするようではね。

　例えば登場人物が
「私、あなたには何も隠し立てしようとは思いませんわ。とても隠し切れるものではありませんもの」
と、ちょっと‘よいしょ’しようものなら
「おっしゃるとおり、要するに私はアノーですからね。アノーは天下に一人しかおりません」
とこうですから。

またある時はジムから
「いったい何を見ているんです？」
と聞かれると
「もちろん見ていますよ。私はいつでも何かを見ています。だってアノーですからね。アノーたるもの、責任重大だ。責任のないあなたは仕合わせです。可哀想に、探偵はいつどこにいても、何かを見ていなくちゃならん。」
いや、ジムも弁護士として託された責任があると思うぞ。

　偉ぶった態度で皆さんはエルキュール＝ポアロを思い浮かべたかもしれないが、彼の方がポアロのモデルと言われている。捜査方法はホームズパターン。英語が苦手でリカードゥに注意される箇所は名文と言われているが、それだけに訳が難しいらしい。6長編のうち訳されているのは3篇なので、本書を読んでアノーの魅力が広まればその辺りの掛け合いも読む事ができるかもしれない。


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