映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。始業式の日は自殺が多いそうですね。
今年はドラマでも若者に向けたメッセージがこめられた放送がありました。
こちらもまた若者に対するエールがこめられています。

映画​聲の形を見ました。

聲の形
The shape of voice/A SILENT VOICE

石田将也はガキ大将だった小学6年生の時、先天性聴覚障害を持つ転校生の西宮硝子をイジメ抜く。ところが母親からの抗議を受け、それに加担した級友たちから手のひら返しを受けてしまう。自分がイジメの被害者になった彼は硝子への仕打ちを悔いるが、彼女は再び転校して消え去ってしまう。そして高校3年生になった5年後、硝子と再会を果たす。

NHK教育ドラマでCMが一切入らない状態で放送された。

大人になった今になって思えば小学校の教師なんて随分と若く、人生経験などまだまだ少ないことがわかる。しかしもちろん、当時の小学生には、教室で唯一の大人で、言葉はわからなくても「社会の秩序を教えてくれる正しいひと」。その人が何も言わない、しないから、何をやってもいいのだ。たかだか小学生の生徒の認識などそんなものだ。だから将也はいじめ続けた。

　勿論実際にいじめた将也は悪い。しかし、あれだけあからさまにやられていながら、見て見ぬふりをして自発的に注意しなかった教師の罪は重い。毎年生徒を送り出す教師の側からすれば、何人かのうちのたった一人くらいの認識だから、いちいち意識を向けていては身が持たないのだろう、特に今の教師は。

とはいえ本編は大人たちの狡さを暴く作品ではなく、思春期の未熟な若者たちが主体である。

　将也はいじめっ子のレッテルを貼られて以来、周囲の顔が皆バツに見えてしまう。萩尾望都の漫画「学校へ行くクスリ」でも、主人公の周囲の人間が皆動物やヤカンに見えてしまうという描写があった。双方とも周囲に原因があるのではなく、主人公の意識が原因だったことが分かって呪縛が解ける。そう、呪縛はどんなに周囲が解こうとしても解けない。自分自身が解かないと。周囲に出来るのは水辺に連れていくことだけ。水を飲むのは、世界へ向かうのは、あくまで自分。代わりはいない。

　典型的ないじめっ子だった将也がここまで変わるか？と思うくらいの変化を見せる。自殺まで考えた彼が他人の自死を止め、西宮に生きる目的を与える。それも、恋愛感情の告白一切なしで。彼は知らないにせよ、西宮は恋愛感情を抱いていたのだから効果は絶大だったはず。だから、恋愛感情で説得したら、多分狡かった。

普通ならば祥子は一方的に被害者で善人で…という描き方をしていくが、本編では本音を言う植野の言葉「あんたは私と話す気がない」によって「愛想笑いをして本音を言おうとしない」彼女の改善点も掬い取る。声は聴こうとするもので、単に聴力があるから「聞こえる」のとは違う。他人の言葉＝聲を聴こうとする能力がない大人は沢山いるし、大人になればなるほど、自分を変えていくのは難しい。だからといって子供は絶望しなくていい。あれは自分の未来ではない。反面教師にしてそこから別の道を行くくらいのパワーは、十分体の中に秘めている。


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