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みなさん、こんばんは。オリンピックの記録映画は河瀬直美監督が担当するそうですね。
ドキュメンタリー出身だから向いてるのではないでしょうか。 さて、森鴎外の娘をご存知ですか? 今日は彼女の評伝を紹介します。 贄沢貧乏のマリア 群ようこ 角川書店 美内すずえ氏漫画「ダイナマイト・みるく・パイ」で、父親が娘の 事を、こう評する。 「お上品なフランス(現物がないので記憶曖昧。御存じの方訂正乞)パイに、 ダイナマイトをぶちこんだようなものだからな。」 本書の森茉莉氏は、まさに『ダイナマイト・みるく・パイ』だ。 読んだ当初は「一目で令嬢育ちとわかるマリア」や「中老の御婦人には違いないが、中身は少女で、十三、四の心境」という表現に戸惑った。他人が言うのならわかるが、なぜこの人は、自分をこうも誉められる?自分からは、こういう事は言わないものでしょう。やっぱりこの人、普通じゃない。 謙譲を美徳とする教えを叩き込まれた身は、ため息をつく。 普通じゃない、という評価。普通に育った人が、前述のような言い方をすれば、きっと正しい。 ところが、彼女の育ち方は、〝普通〟ではなかった。 「友だちの御木本商店(今のミキモト)」で大粒真珠を買うのは序の口。戦前のパリで、現地購入した衣装(おそらく、プレタポルテ)を身に纏う。映画で描かれる所のハイソサエティそのものの、贅沢な暮らしぶり。それが日常だった。また、父、鴎外から与えられた愛情も半端ではない。父親は娘を可愛がる。大概娘は男親に似るからだ。しかし、 「父の体は大きな樹で、父の顔は葉むれ。葉の間にある花から滴る蜜を 私の唇は上を向いて呑み下す」(文章そのままではない、要約) (文章そのままではない、要約) という、いささか性的な意味合いを感じるこんな文章を娘に書かせる父親は、そういまい。 〝普通〟でない育ち方をした人に、〝普通〟の物差をあてるのは、どだい間違っている。最初から〝森茉莉氏のスタンダード〟を受け入れておけばいい。ところが、ハイソな認識を受け入れて読み始めた、 彼女の後半生は、甘い夢の世界ではなかった。 年を取れば、人は丸くなる。 一つは、「衝突があるけど、いつも自分が勝つわけじゃない。」という現実を知るため。 もう一つは、怒るエネルギーが枯渇するため。 それが、〝普通〟に年を取るという事だ。だが彼女はとことん、〝普通〟を突っぱねる。時には、こう自分に言い聞かせて。 「私はだから憎まれても平気である。ほんたうは平気ではないのだが、 書いて行くためには平気でなくてはならないのである。」 出来過ぎたコメントをするTVのアナウンサー、 出来過ぎたコメントをするTVのアナウンサー、意地悪な質問をする作家、常識以外はわかってくれない消防署の署員。過去において、自画自賛を躊躇しなかった彼女は、彼等に対し、激しい怒りの感情をあらわにする事をも、またためらわない。時代がどんなに変わろうと、終始一貫して、肩で風切る 『ダイナマイト・みるく・パイ』だった人、森茉莉。 天晴れな人。そして、ある意味幸せな人。 もう一度、ため息をつく。さっきとは別の意味をこめて。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 1, 2018 12:00:32 AM
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