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映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

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March 5, 2019
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みなさん、こんばんは。気づいたらひな祭りが終わっていました。
今日から3日間はジェーン・オースティンを紹介します。

説得
Persuation
ジェイン・オースティン
ちくま文庫
中野康司訳

准男爵の次女アン・エリオットは二十七歳。家柄にしがみついている所とプライドの高さが父親そっくりな長女エリザベス、さっさと結婚した三女メアリーに比べて、独身で影の薄い存在だが、本当は最も理性的で賢く優しい。その事は少数の人しか知らない。をを、まさに王道ヒロイン!そんな彼女の唯一の悩みは八年前海軍軍人のウェントワースとの結婚をあきらめたことだ。そんな時、財政難で家を明け渡すことになった相手の弟が、何とウェントワース大佐だった!

 まー、何なんでしょ。この降ってわいたような偶然は。そして「周囲に大佐との事を言ってないから気まずいわ」と思いつつも、なぜか彼と頻繁に会うシチュエーションも、まさにドラマ向け。

 ヒロインを横に置いておくと、良識のあるキャラクターは、母の友人のラッセル夫人くらい。
「誰にたいしてもとても親切で、たいへん思いやりのある善良そのものの人であり、愛情豊かですこぶる品行方正で、何よりも礼儀作法を重んじ、その上品な立ち居振る舞いはまさしく育ちの良さの見本のようだった。そしてたいへん教養もあり、その言動はいつも理性的で首尾一貫していた」
ほら、百点満点でしょ?ところが!そんな彼女の唯一の欠点が「立派な家柄にはめっぽう弱かった」ことだ。そして彼女のたった一つの欠点が、8年前アンの結婚を止める説得材料になった。うーん、よくできてるなぁ、このドラマ(しみじみ)。

超自己チューの周囲に振り回されて、大人しいヒロインが一方的に苦労させられる話なのかな…と思っていたら、アンにもプライドはあるようです。アンは妹メアリーの嫁ぎ先のマスグローヴ家の二人の娘ヘンリエッタやルイーザを羨ましいと思っていますが

「だが人間というのは、誰でも何かしら優越感を持っていて、そう簡単に人と入れ替わりたいとは思わないものだ。アンの場合も、自分の洗練された教養豊かな知性を、ヘンリエッタやルイーザの幸せと取り替えたいとは思わなかった。」

ふーん。
ふぅーーーーーーん。

なかなか言いますねぇ。ヘンリエッタやルイーザは若くてきゃぴきゃぴしてるけど、知性が足りないなと思ってるわけですね、表向き調子を合わせながら。なかなかクールな賢い観察者ですな。
他にも、自分に気があるのかな~と思っていた相手が、ちょっと離れていた隙に他の人と婚約までこぎつけたのを知ると

「要するにベニック大佐という人は、ある程度感じのいい若い女性に自分の話を聞いてもらって、同情の気持ちを示されたら、どの女性に対しても恋心を抱いたのだろう」

を、を、それって負け惜しみ?嫉妬入ってる?みたいな感想を抱きます。

 作者のジェーン・オースティンが人間観察に長けてるんでしょう。これまでグレアム・グリーンもサマセット・モームも「えっらく女性に対して辛らつだなー」と思っていたが、こと同性に対するオースティンの辛辣さときたら二人を軽く超えてくる。北斗の拳のケンシロウの秘孔を突いてくる如く、女性のイタイ所を余すところなくさらけ出す描写ががんがん来てます。

 まあ、パーフェクトな登場人物はいないわけです。主役格も脇役もどこかに欠点を持っている。それが自分には見えていないから「私はあの人達とは違う」「私はああはならない」と他山の石モードで見ているが、実はどこかで自分も誰かの他山の石にされている。ああ、いつの世も変わらぬ者、その名は人間。


2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。
『説き伏せられて』なんてハーレクインロマンスみたいなタイトルのついている版もあります。


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最終更新日  March 5, 2019 12:00:33 AM
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