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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
みなさん、こんばんは。日韓の交流まで取りやめになるケースが出ましたね。
今日からは三代にわたるデュマ家サーガ三部作です。 まず、アレクサンドル・デュマの父親から始まります。 黒い悪魔 佐藤賢一 文藝春秋 「泣きたい時は、コートで泣け」と言われたのは、岡ひろみだった、藤堂ではなく。 これは漫画「エースをねらえ!」の話だが、実際男性諸氏は、親-特に男親から 「めったな事で泣くもんじゃない。男らしくない。」 と、散々言われて育ったらしい。 「それって、辛くなかった?」 そう聞くと、 「まあ、長年言われちゃうとね。」と苦笑いする人、 「全然。」と言い切る人、さまざまだ。 では辛い時、彼等はどうするか。我慢をする。それも、とびきりの やせ我慢を。 この「やせ我慢男」を書かせたら、とてつもなくうまいのが 佐藤賢一氏。 「二人のガスコン」の主役二人も、「王妃の離婚」のフランソワも、 「ああ、もう、ここで折れてしまえば、楽になるのに!」 という場面で、とびきりのやせ我慢を貫き通す。 本篇の主人公、トマもまた、やせ我慢男の一人だ。 最初「佐藤賢一がデュマの連載を始める」と聞いた時、 「ああ、とうとう真打ちの登場か。」と思った。 『二人のガスコン』で著者が大好きな『三銃士』を取り上げ、 更に『ダルタニャンの生涯』でその主人公の実像に迫り、 とうとう生みの親を書くのか、と。 ところが、始まった連載を読むと、どうも勝手が違う。 主人公は、大デュマ-アレクサンドル=デュマのおとっつぁんだった。 「もしかして、宮本昌孝氏の『ふたり道三』宮城谷昌光氏の『晏子』 のような、親子二代に渡る物語になるのかな?」と期待しながら 読み進んだ。だが、どうやらそうではないらしいと 気づいた時には連載が半分以上進んでいて、 佐藤作品お馴染みの、「宿命の女性との結ばれぬ恋愛」 「父親(または年輩者)との衝突」 「現場をわかってくれない中央指導部」の要素が出てきているこの 作品に、どっぷりと漬かっていた。そして後半には、 「なーんか、どっかで読んだことあるような」話が出てきた。 ははん、なるほど、そうですか。 あの作品のモデルは、おとっつぁんだったのですね、 デュマ殿。 まあ、オリジナル作者が存在したにも関わらず、『三銃士』も デュマが書いた作品の方が断然面白い、といいますから、 モデルがいたからと言って、作品自体の面白さが半減するなんて 事はない。本当のトマの生涯を読んだ後に、この本を読んでも 「やっぱり面白い!」 と感じるように。 佐藤氏の他作品のやせ我慢男と同じく、トマは時の権力者に対して意地を張るため、アウトローの道を 辿らざるを得ない。そして末路は、 「幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。」 というエンディングとは程遠い。 けれど、それがわかっていながらも、彼は、やせ我慢を手放さない。 それが彼の美学だから。それが、彼の「生きる」事そのものだから。 やせ我慢の美学を貫き通せない現在だからこそ、 苦境において、とことん自分を手放さない主人公の生きざまが、とても 眩しく、羨ましく映る。 このやせ我慢の遺伝子が、どう伝わっているかを知りたい方は現在別冊文芸春秋で連載中の「褐色の文豪」で確かめられたし。こちらは、大デュマが主人公となる。 【中古】 黒い悪魔 / 佐藤 賢一 / 文藝春秋 [単行本]【宅配便出荷】もったいない本舗 おまとめ店 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
August 3, 2019 12:00:20 AM
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