映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。文大統領トランプ大統領にめちゃくちゃ言われてますね。
なんだか大統領が可哀想になってきましたよ。
今日はシャーロット・ブロンテ作品紹介の最終日です。

ヴィレット 下 (ブロンテ全集 6)
The Villet
シャーロット・ブロンテ

​名付け親の息子が寄宿学校に通っていたドクター・ジョンだった。実は全編がルーシーの回想なので、とっくに語り手はこの事実を知っていた。にもかかわらず秘めてちゃっかり彼への恋心を独白に偲ばせていたわけだ。ところがこの恋、上巻ラストの劇場で見かけた美しい令嬢によって阻まれる。彼女はかつて名付け親の家に住んでいたポリーことポーリーナ・メアリ・ホウム・ド・バソンピエールで、ジネヴラの従妹、そして大事な事は資産家の娘であることだ。ポリーもまたジョンを愛するようになり、密かにジョンに思いを寄せていたルーシーは失恋。

「私は、私のライン河、私のナイル河を愛していた。私は私のガンジス河をほとんど崇拝していた、と言ってもよい。そして私はあの満々たる流れが冷ややかに別の方向へとそれ、はかない蜃気楼のように消え失せるのを嘆いた。」


　世界中の大河に例えるほどなのだから、彼女の中でジョンの存在は相当大きかったと見える。しかし本編ではあっさり次のお相手が登場する。それも、上巻では「まさかあの人が」と思っていた相手だ。
相手も相手で、下巻になるとやけに積極的になり

「あんたは、監視し監督してやらねばならん。そいで小生が気を付けて、この二つの義務を果たすべく最善を尽くすことは、あんたのためになるだろ。小生は、あんたやら、ほかの連中やらを、かない綿密に、かなりしばしばあんたや彼らが考えとるより間近で、頻繁に見張っとるんだ。」

などとまたもやストーカーめいたことを口にするかと思えば(ブロンテ姉妹はほとんどストーカーの執着男子が好きなのか)
「あんたと小生とは心が通い合っとることに気づいとった。あんたは辛抱強く、小生は癇癪持ちだ。あんたはもの静かで青白いが、小生は色が黒くて気が荒い。あんたは厳格なプロテスタントで、小生は一種の俗人イエズス会員だ。だが、われわれは似た者同士だ―相性が良い。」

ぐいぐいと踏み込んでくる。

　「をを、これはハッピーエンドか？」と誰もがアクセルを踏む中で、ただ一人ブレーキをかけたのは作者である。『ジェイン・エア』では前半ジェインの障害となっていた存在が次々と消え、シャーロット作品に必須条件の「女性が経済的基盤を持つ」もクリアして、彼女の恋を成就させていくのに、『ヴィレット』は真逆である。一応オープンエンドにはなっているが、ここからの逆転は望めまい。予定調和とも言えるが、『ジェイン・エア』に熱狂したファンは、果たして本作をどう受け止めたのか。


2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


ヴィレット 下 白水uブックス / シャーロット・ブロンテ 【新書】​​HMV＆BOOKS online 1号店​