映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。対韓国への減便が続いていますね。
さて、今日は実在の凄腕スパイをモデルにした小説を紹介します。

戦場のアリス (ハーパーＢＯＯＫＳ)
The Alice Network
ケイト・クイン

原語版も翻訳版もシルエットの女性の向こうに見えるのはビッグ・ベン、とくれば舞台はイギリス。イギリスでアリスと言えば、後先考えずウサギを追って穴に飛び込んでしまったあの少女が思い浮かぶ。

　本書のアリス達も自ら危険な穴に飛び込む勇気を持っていた。しかし動機は単なる好奇心でなく、熱い愛国心だった。ベースとなっているのは、第一次世界大戦ドイツ軍占領下のフランスを舞台に実在した女性スパイ”アリスネットワーク”だ。リーダーのルイーズ・ド・ベティニは、敵国の大砲の位置を思いも寄らない方法で迅速に知らしめたという伝説を持つ。しかしこれまで映像や小説で扱われることがなく、知る人ぞ知る存在だった。イギリスのMI5といえば泣く子も黙る圧倒的な存在感を持つ、目立ちすぎるスパイが有名だが、本来の諜報活動は彼のように目立っていては務まらない。彼女の方が、よりスパイらしかったと言えよう。

　著者が描きたかったのはルイーズ・ド・ベティニその人であろうが、彼女を主役に据えても、史実を無視するわけにいかず、かえって窮屈だ。そこで本書では、本人ではなく、1915年彼女の組織で働いていた女性イヴ・ガーディナ―と、1947年、第二次大戦中に行方不明になった従妹ローズを探してやってきた訳ありの女性シャーリーを主役に据えた。いずれも架空の存在としたのは、ルイーズも含めてキャラクターを自由に作れるからだ。また、新たに登場人物を加えた事で、過去を探る旅を絡めて問題を抱えているシャーリーやイヴの成長も描ける。作者の後書きで確認できるが、ルイーズ以外にも歴史上の人物が登場しており、彼等と架空の人物との繋がりも不自然でない。銃後を守るだけではなく、時には男達よりも厳しい局面に立たされながらも、怯まず戦場に立ち続けたアリス達。ロマンスや冒険に胸を躍らせながら、読者の心の片隅に、彼女達の功績が残るといい。

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