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カテゴリ:海外のミステリー&ファンタジー小説
みなさん、こんばんは。昨日は映画でアーサー王を紹介しました。
今度はファンタジーのアーサー王がどう描かれているか紹介します。 アーサー王ここに眠る Here lies Arthur フィリップ・リーヴ 東京創元社 腕っぷしも強く義侠心に篤い英雄は、ドラゴンか悪政で民衆を虐げる暴君を倒す。もちろん美しく優しいヒロインが英雄のそばには常にいて、二人は変わらぬ愛情で結ばれる。英雄の周りには才能ある人物が溢れ、誰もが自由に発言できる円卓で平等な政が行われる。 これが英雄物語の基本パターンだ。私達は実際にそんな英雄を見たわけではない。ならばどうして私たちは彼等の物語が、何かを読まなくても言えるくらい体に沁みこんでいるのか。語り伝える人々がいたからだ。例えば吟遊詩人と呼ばれる人々が道端で人々に聞かせ、そうして時代や国を越えて英雄伝説は広まった。 ところが、実際は伝説と同じではなかった。 孤児のグウィナ(グウェンドリン)を救ったのは自称吟遊詩人のミルディンだった。彼女が泳げることを知ったミルディンは、地方のならず者たちを仕切るアーサーに箔をつけるため、アイデアを思いつく。 イギリスの伝説の王アーサーは湖の中で聖剣エクスカリバーを入手する。その時湖に乙女がいた。常人にできないことを成し遂げた者を民衆は仰ぎ見る。民衆心理を巧みに使ったミルディンによって、アーサーは瞬く間に認められていく。本来自分の中にないものは、伝説が補ってくれる。あとはいかにも名君という顔をして生きれば、富と名声と地位は享受できる。実際のアーサーが思っていたのはそんな所だろう。そんな彼の浅薄さを知りながらミルディンは彼に希望を託した。 伝説ではないギネヴィアとランスロットの不倫、聖杯を手にするパーシヴァルの生い立ちが描かれ、フィクションの存在であるグウェンドリンが絡んでいく。場合によって男となったり女となったりする便利な存在で、奥方の宮廷に入り込むことも、戦場に赴く事もできる。そのような立場に彼女を置いたのはミルディンのある思いによるものだったが、本来の意図を越えて運命は動き出す。他の登場人物達の運命と同じように。伝説なんてどこ吹く風だったアーサーが最後に伝説を生かすために為した事や、“鷺のような人”とグウェンに称されていた典雅な奥方に秘められていた情熱など、アーサー王伝説でお馴染みの人々が皆人間臭くて面白い。 カーネギー賞受賞作。 『中古』アーサー王ここに眠る (創元ブックランド)KSC お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 18, 2019 12:00:17 AM
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