映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。
韓国のコロナウィルスの流行スピードも速いですね。

昨日に続いて韓国小説を紹介します。
いやあ、いるんですね。韓国にも情けない系の人。

誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)
イ・ギホ
亜紀書房

​ 作家イ・ギホ(作者と同姓同名)は、ある日自分の著作がかなり安値でオークションに出されている事を知る。おまけに紹介が「読めば読むほど情けなくなるトンデモ小説」と、とても褒めているとは言い難い。気になって仕方がないギホは、直接取引を申し出て他人の振りをして売り手に会おうとするが…。

　もしかしてこれって実話？いやいやそれではあまりに自虐的。『チェ・ミジンはどこへ』で同姓同名の作家を登場させたイ・ギホは、続く『ナ・ジョンマン氏のちょっぴり下に曲がったブーム』『クォン・スンチャンと善良な人々』にも引き続き作家を登場させる。今度は名前は出てこないが、『ナ・ジョンマン氏のちょっぴり下に曲がったブーム』はインタビューに行ったジョンマン氏の前でどうも泣いているらしいし、『クォン・スンチャンと善良な人々』では“作家先生なら大丈夫”と託された交渉でキレてしまう。こちらもやはり情けない。

　表題作も主人公に対して随分と辛らつだ。カン・ミノは(恐らく)どこにでもいる韓国男性で、特にイジワルなわけではない。かつて教会で教え導いていたユニがイスラム教に改宗したというので相談を受け、何年かぶりに会いに行く。しかしミノの一言ひとこと、“会いに来た”時のやり方が、ユニを傷つける。語り手がミノなので、勿論彼にはユニの気持ちは全く分からない。しかし読者にはユニの端々から零れる言葉で、何に傷ついたかがわかる。そしてミノが原因に一生思い当たらない類の人物であることも。

　韓流が流行したばかりの頃は「韓国男子はロマンティストでイケメンで、日本男子が忘れていたものを持っている」と絶賛されたのに、あれから二十年経って、まあ何という体たらく。いや、スパダリを韓流で供給する前に、韓国社会を直撃する通貨危機は起きていた。家父長制で威張れなくなった父親と、その父親の跡を継げなくなった息子達は、随分と情けなくなっていたのだ。男達よ、情けなさと共に生きてゆくのか。それともどこかで決別するのか。まあそれは、彼等だけの責任ではないような気もするが。

他『私を嫌悪することになるパク・チャンスへ』『ずっと前に、キム・スッキは』『ハン・ジョンヒと僕』『あとがき』(これも作品である)収録。


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