映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。宮藤官九郎さんまで新型コロナウィルスにかかりました。
心配ですね。
今日も昨日に続いてヘンリー・ジェームズ作品を紹介します。

ワシントン・スクエア
Washington Square
ヘンリー・ジェームズ
岩波文庫

　ジェイムズの『ある貴婦人の肖像』は美しい娘イザベルが主人公で、男を見る目がなく結婚に失敗する。なまじ資産があるために、男はそれ目当てで巧みに近づく。本編のヒロイン、キャサリン・ハリントンもまた成功した医師スローパー博士の一人娘として、かつ亡くなった母親の資産を相続しており、豊かな暮らしが約束されている。イザベルと異なるのは、父親がいることだ。しかし彼は娘の事を不器量でおとなしいばかりのああいう娘と呼び、本人の魅力によって求婚されることは絶対にないと決めつけている。これほど厳しい見方をするのは、娘と同じ名を持つ母親が絶世の美人だからだ。彼もまた資産家の女性と結婚しているのに、娘の結婚相手には不純さを見出そうとするのが矛盾しているが、誰も彼に指摘できる人はいない。

　スローパー博士とその妹(キャサリンの叔母)ペニマン夫人とアーモンド夫人、キャサリンと恋人になろうとする青年モリスとその姉モンゴメリー夫人を主要人物として物語が進んでいく。極めて狭い世界の物語だ。キャサリンのやり方があまりにも正攻法すぎてうまくいかなかったが、もっと広い世界を知って経験を積み自分の意見を求めれば、もしかしたら別の選択があったかもしれない。しかし彼女に助言しようというのは、愚かな叔母ペニマン夫人のみである。賢いとされているアーモンド夫人を相談相手に選んでいれば、これもまた別の選択があったかもしれない。つまりは、ワシントン・スクエア＝Square、のように、主人公が四角四面の窮屈な理屈の中で、自分の希望を叶えようとするから一層窮屈になる。まあそうはいっても、時代を考えればキャサリンは勇気ある行動を取ったと言える。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。

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『中古』ワシントン・スクエア​​KSC​