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June 14, 2020
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カテゴリ:イギリスドラマ
みなさん、こんばんは。昨日は傘をさしても濡れる雨が降りました。

HBOミニシリーズドラマチェルノブイリを見ました。

チェルノブイリ
Chernobyl

監督
ヨハン・レンク

脚本
グレイグ・メイジン

出演
ジャレッド・ハリス エミリー・ワトソン ステラン・スカルスガルド

エミー賞脚本賞&撮影賞&美術賞&監督賞&シングルカメラ編集賞&オリジナル楽曲賞&作品賞&音響効果賞&録音賞&サポート視覚効果賞

第71回エミー賞で19ノミネートし10の賞を獲得。
リミテッドシリーズ作品賞、監督賞、脚本賞その他7部門で受賞
主演男優賞(ジャレッド・ハリス)、助演女優賞(エミリー・ワトソン)、助演男優賞(ステラン・スカルスガルド)で3人ともノミネートされた。

 1986年、旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で大規模な爆発事故が発生。放射性物質がベラルーシ、ロシア、ウクライナばかりか、スカンディナビアや西ヨーロッパまで飛散した。深夜の爆発は大混乱をもたらし、その後は何日も、何週も、何ヵ月もの間、人命が失われ続ける。「チェルノブイリ―CHERNOBYL―」は、人間の勇気を描くと同時に、事故の原因や責任追及をやりすごそうとする政府の極めて非人道的な慣行と、災害の危険性を軽視したことから多くの命が犠牲になったことを明らかにする。ジャレッド・ハリス、ステラン・スカルスガルド、エミリー・ワトソンら、豪華キャストの共演も見どころの1つだ。

第1話 1時23分45秒 1:23:45
1986年4月26日未明、旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で爆発が起こる。現場監督の副技師長ディアトロフは、部下に原子炉の炉心へ行き確認するよう指示する。一方、出動命令を受けた消防士ワシリーが現場に向かう中、近隣住民は遠くで起きている火事を見物していた。そんな中、発電所幹部が核シェルターに集まり、事故は適切に処理され、甚大な被害はないという見解で一致し…。

物語は、暗闇の中、ただ音だけが聞こえる。水を汲む音。何かを動かす音。そして真っ暗闇の中から声が聞こえ、灯りがつく。

これから自殺するヴァレリー・レガソフの独白である。1988年4月26日 モスクワというテロップが出る。
「嘘の値段とは?真実を見誤ることじゃない 本当に危険なのは嘘を聞きすぎて真実を完全に見失うこと その時どうするか 真実を知ることを諦め物語で妥協するしかない 人々の関心は“誰が英雄か”ではなく”誰が悪いの”かだけ A・ディアトロフはその役に適任だった あの夜指揮を執った尊大で意地の悪い男だ 少なくとも有力者の友達はいない 彼はこれから10年間を強制労働集要所で過ごす その科刑は実に不公平だ 本当の悪党は彼ではない それに彼にふさわしい罰は拘禁系でなくむしろ死刑だ What is the cost of lies? It's not that we'll mistake them for the truth. The real danger is that if we hear enough lies, then we no longer recognize the truth at all. What can we do then? What else is left but to abandon even the hopsんじe of truth and content ourselves instead with stories? In these stories, it doesn't matter who the heroes are. All we want to know is: "Who is to blame?" And now Dyatlov will spend the next ten years in a prison labor camp. Of course, that sentence is doubly unfair. There were far greater criminals than him at work. And as for what Dyatlov did do, the man does not deserve prison. He deserves death」

レガソフ「だが刑事過失の罪で10年の実刑 “刑事過失”とは?誰もわからないし気にもしない 裁きが下ればそれでいいのだ 人々は後世なのが健全な世だと思っている There was nothing sane about Chernobyl.チェルノブイリは違った その場所で起きたことは我々の行いも含めて全てが常軌を逸してた これが私の知る全てだ 彼等は当然否定するだろう 君に託す」
録画を終えたカセットテープを大切に隠すレガソフ。猫に餌をやり、タバコを一服。ここからは音だけが聴こえる。そして吊った足だけが見える。

タイトル。

2年と1分前。窓の外で光が。そして振動が遅れてやってくる。
「リュドミラ?」
犬が騒ぎ出す。

天井から何かが落ちて来る。

アキモフ「Comrade Dyatlov! Comrade Dyatlov! Comrade Dyatlov! Comrade Dyatlov! Comrade Dyatlov!ディアトロフさん ディアトロフさん」
ディアトロフ「何が起きた?What just happened?」
アキモフ「わかりませんI don't know.」
ブラズニク「タービンホールで火がThere's a fire in the turbine hall.」
ディアトロフ「The turbine hall. The control system tank. Hydrogen. You and Toptunov, you morons blew the tank.タービンホール?非常用タンクの爆発か お前らのミスだ 」
レオニード・トプトノフ「No, that's not...」
ディアトロフ「緊急事態だ 冷静に 原子炉は?This is an emergency, everyone stay calm. Our first priority is -」
プレヴェチェンコ「It's exploded!爆発です」
ディアトロフ「 We know. Akimov, are we cooling the reactor core?」
アキモフ「制御棒が挿入途中で止まってますWe shut it down, but the control rods are still not... they're not all the way in, I disengaged the clutch...」
ディアトロフ「All right, I'll disconnect the servos from the standby console.You two, get the backup pumps running. We need water moving through the core, that is all that matters.予備制御室で作業してくる 予備ポンプを動かして炉心に給水しろ」
プレヴェチェンコ「炉心はありません 爆発したんですThere IS no core! It exploded, the core exploded!」
ディアトロフ「錯乱してる 外へHe's in shock, get him out of here.」
プレヴェチェンコ「蓋が外れ 火があがってますThe lid is off. The stack is burning. I saw it.」
ディアトロフ「RBMK炉の炉心が爆発するもんかYou're confused, RBMK reactor cores don't explode. Akimov!」
トプトノフ「 Sasha...」
アキモフ「処理は正しかった 何か異常がDon't worry, we did everything right. Something... something strange has happened.」
アキモフ「 Do you taste metal?金属の味が」
ディアトロフ「Akimov!アキーモフ!」
ディアトロフ「炉心の爆発は物理的にありえない タンクのはずだ 急げ 発電機から水素を抜き炉心に給水しろWe're wasting time. Let's go!Get the hydrogen out of the generators and pump water into the core.」
ブラズニク「 火事は?What about the fire?」
ディアトロフ「 消防隊を呼べCall the fire brigade.」

廊下に出るディアトロフ。ガラスが割れている。床に散らばった物体から煙が上がっている。

消防署に第一報が入る。
ワシリー「皆が呼ばれてる ポレスコやキエフからもだ 相当でかい」
「でも何だか色が妙よ 化学物質かも」
「まさか 問題は屋根だ 塗りこまれたタールがよく燃えるし臭い 寝直して」

午前1時25分。サイレンが鳴り続ける。
「戦争か?」
「総量計は?」
「ここだ ほら 爆発か?」
「毎時3.6レントゲン?」
「それが上限だ 金属に高性能のやつが」
「バレラ 顔が ポンプ室のホデムチュクを探しに行く お前はシャシェノクを」
「原子炉ホールは何階だ?」
「あと2階上だ 何をする気だ?」

「ホデムチュクを見た?」
「いや ヴィクトルは?」
「ポンプ室だ」
「ホデムチュクを 彼を助けて」

ディアトロフ「制御棒を降下させた」
「無駄です」
ディアトロフ「何?」
「3分の1に止まってます 手動操作に行かせました」
「ポンプ操作は?」
「内線が不通で」
「ポンプは動いてるかと聞いている」
「計器類が止まってしまい」
ディアトロフ「知ったことか炉心に水が必要なんだ 直接見て来い 早く!」
ディアトロフ「線量計は? What does the dosimeter say?」
アキモフ「36.レントゲンまでしか3.6 roentgen. But that's as high as the meter...」
ディアトロフ「3.6ならひどくはない 3.6 -- not great, not terrible.」
顔を見合わせる職員。
「処置は正しかった」

消防車がチェルノブイリに向かう。
午前1時30分。
「ポンプを」
黄色い炎があがっている。消防士が任務に就く。
ミーシャ「ワシリーこれは何だ?Vasily... Hey, Vasily, what's this?」
ヴァシリー「わからん金属の味が I don't know, Misha. Don't fuck around with it. Hook these up, come on. Do you taste metal?」
「なぜだ?Yeah, what is that?」
「わからんI don't know.」
「No!」

「どうした?」
「制御棒を下ろしたいがホールに入れない」
「制御棒も炉心もなくなってる」
「そんなはずない アキーモフの指示だ」
「いくぞ」
職員を置いていく。

「イグナテンコ 代われ」
手にやけどを負う消防士。

「本当に?」
「命令だから」
やっとのことでドアが開く。
しかし下は煙が噴き出していて何も見えない。茫然とする職員。

「急げ!離れろ!」
体に血が広がっていく。ブザーだけが響く。

「リュドミラ 一緒に来る?鉄橋で火事を見物する」
リュドミラ「危ないかもしれない」
「これだけ離れてりゃ安全さ」
リュドミラ「“問題は屋根だけ”と」
「今まで大丈夫だったでしょ こんども大丈夫」

ディアトロフ「非常用タンクの爆発だ 何せ100立方メートルもある だから爆発もでかい」
「なかった 見たんです 原子炉を」
ディアトロフ「制御棒は下ろしたか?彼を医務室に」
吐き始めるトゥプトーノフ。
「トゥプトーノフ!」
「幻覚を見たな」
「でも顔が」
ディアトロフ「漏れた汚染水からの軽い放射線焼けだ外線はかけられるか?アキーモフ 日勤の要員を呼べ 炉心への給水を続けるために人手がいる 何度も言わせるな ブリュハーノフ初潮とフォーミン技師長に連絡し状況を報告する 私の言い方次第でお前の立場は悪くなるぞ 日勤の奴らを呼ぶんだ」
アキーモフ「わかりました」

病院にて。病院からも黄色い光が見える。
「丸二日働いたことがある 10人同時に産気づいてね しばらくは平穏だ 休憩室で休みたまえ」
「火事の負傷者がこない 発電所です」
「そこまで酷くないんだろ」
「ヨウ素の薬は?」
「そんなものあるわけがない」

ブリュカノフ「誰に知らせた?フォーミンは?当然だろう私を呼ぶなら彼も呼べ」

外で黄色い光を見るフォーミンとブリュカノフ。
フォーミンがブリュカノフに「原因が何であれ我々は一切Whatever the cause, the important thing is that neither you nor I...」

午前2時30分。
ブリュカノフ「実験は失敗のようだなI take it the safety test was a failure?」
ディアトロフ「収拾しましたWe have the situation under control.」
フォーミン「とてもそうは思えないUnder control? It doesn't look like it's under control.」
ブリュカノフ「中央委員会に報告しないと あのマリインやフロリシェフにどう言えと?Shut up, Fomin. I have to tell the Central Committee about this. Do you realize that? I have to get on the phone and tell Maryin, or God forbid Frolyshev, that my power plant is on fire.」
ディアトロフ「所長に非はありませんNo one can blame you for this, Director Bryukanov.」
ブリュカノフ「当たり前だ 家で寝てたんだからなOf course no one can blame me for this. How can I be responsible? I was sleeping.」
ブリュカノフ「手短に説明しろ」
ディアトロフ「技師長が定めた手順に従いました 班長と技師の操作中に技術的問題が発生し非常用タンクに水素が蓄積 そして爆発が起き屋根が燃えました」
フォーミン「確かにタンクとしか考えられない もちろん 直接監督した副技師長が誰よりわかっているはず」
ブリュカノフ「タンクの水素が爆発 原子炉は?」
ディアトロフ「炉心への給水を続けています」
ブリュカノフ「放射線量は?」
ディアトロフ「原子炉建屋の中は部下によると毎時3.6レントゲン」
ブリュカノフ「それほど悪くない」
フォーミン「全然です 補給水から? 作業時間を6時間に制限しないと」
ブリュカノフ「線量は定期的に測らせろ 金庫にある いい線量計を使え それじゃマリインに連絡する 市の執行委員を召集するように伝えろ」

鉄橋で見物する人達
「なぜあんな色を?」
「燃料のせいさ」
「“燃料のせいさ” 素人のくせに」
「あそこにはガスも火もないって 万一の時はウォッカを呑む」
「彼は配管工よね?きれいね」

見物人の髪に、顔に、手に、小さな塵が降りかかるが彼等は気づかない。見物人には子供もいる。

「たばこは?」
差し出すアキーモフ。相手の顔をじっと見る。
「助けが必要か?」
「手遅れだ」
アキーモフの手に天井から水滴が落ちて来る。

消防士
「ここはもう十分だ 屋根に向かうぞ」
「ワシリー ここだ まっすぐ進んでいけ」
「急げ!」

午前3時30分。
サシャ「予備のは?」
アキーモフ「ポンプも電気系もなくなってた」
「炉心は?」
「見に行ってない 現実を」
「冷やさないとメルトダウンが起きる 給水しないと」
「サシャ」
「君の話が本当なら大勢の人が死ぬ その方がいいか?手前でバルブを開ける」
「手動で?あの場所で?数時間はかかるのに」
「手伝え」
「何のために?給水しても炉心はない レオニード よせ」

「計器を見てろ」
アキーモフ「動いてない」
「いいから」

日勤の社員が集められる。
「非常招集とはな」
「何があったんだ?」
「タンクが爆発したらしい 妙だよな 破壊活動じゃないのか?」

午前5時20分。
ブリュカノフ「どうぞ おかけください こんな時間にすみません ここは安全なのでご心配なく この地下壕は米国からの核攻撃にも堪えます ご存知の通り事故が起きました タンクの誤作動で4号炉建屋が壊れ火事が起きたのです この件はマリイン原子力発電部長からフロリシェフ次長やドルギフ政治局員候補を通じゴルバチョフ書記長に伝わりました 中央委員会からの指示でプリピャチ市執行委員会の尊敬すべき皆さまに私から状況をお伝えいたします 第一に事態は制御下にあります そして第二に国家の原子力開発に関することは機密です それゆえこの事故が世の中に悪影響を与えてはなりません パニックを防ぐためプリピャチ市に警官隊が派遣されます」
「その規模は?」
「2000-4000人です」
「本当のところどれだけ危険なんだ?」
フォーミン「発電所周辺だけ微量の放射線が」
「嘘だ」
「何です」
「嘔吐してる人がいた やけどをした人も 放射線量は高いはずだ 妻や子はどうなる 皆を非難させるべきだ」
「皆さん どうか落ち着いて 私の妻も町にいます 安全でなければ住まわせません」
「ブリュハーノフ 空気が光ってる」
ディアトロフ「チェレンコフ効果です 微弱の放射線でも起こる」
ザルコフ「この発電所の正式名を知っているか?皆チェルノブイリと呼ぶが本当の名称は?V・I・レーニン記念原子力発電所です」
ザルコフ「その通りウラジーミル・I・レーニン 彼は君たちを誇りに思うだろう 特に君の人々を想うその熱意を それこそが行政機構の唯一の目的のはず 時に我々はそれを忘れ恐怖に支配される だがソビエトの社会主義を信じれば必ず報われる 今政府は危険はないと言っている 信じようじゃないか 政府は我々にパニックを防げと言っている 警官隊を見ると人々は怯えるだろう だが私の経験では誰のためにもならない質問をする者は“自分の仕事に専念しろ”といってやればいい 街は封鎖しよう 住民の移動を禁止し通信は遮断する 誤った情報の拡散を防ぐ そうしないと人々は自らの幸せを害してしまう No one leaves. We cut the phone lines. Contain the spread of misinformation. That is how we keep the people from undermining the fruits of their own labor 同志たちよ 今夜のこの決断は後に報われる 今こそ我々が輝く時だ」
拍手が起こる。

シトニコフ技師部長がやって来る。
ブリュカノフ「どうだった?Well?」
シトニコフ「原子炉建屋の線量を測定させました 10000レントゲンまで測れる線量計でI sent my dosimetrists into the reactor building. The large dosimeter from the safe, the one with the 1,000-roentgen capacity...」
ディアトロフ「数値は?What was the number?」
シトニコフ「電源を入れた途端に線量計が壊れましたThere was none. The meter burned out the second it was turned on.」
ディアトロフ「またか It's typical.」
ブリュカノフ「モスクワは我々に不良品しかよこさないSee, this is what Moscow does. Sends us shit equipment, then wonders why things go wrong.」
シトニコフ「消防隊に借りました 毎時200レントゲンまで測れる線量計をWe found another dosimeter, from the military fire department. It only goes to 200 roentgen, but it's better than the small ones.」
フォーミン「それで?And?」
シトニコフ「針が降り切れましたIt maxed out. 200 roentgen.」
フォーミン「ふざけてるのか?What game are you playing?」
シトニコフ「まさか 腕のいい測定員が何度も測りましたNo, I-I... I asked him, he took multiple measurements, he's my best man.」
ブリュカノフ「その線量計も不良品だ It's another faulty meter. You're wasting our time.」
シトニコフ「 私も見ましたI checked the meter against the control.
ディアトロフ「タンクから漏れた水でそんな数値が出るか? What's wrong with you? How do you get that number from feedwater leaking from a blown tank?」
シトニコフ「出ませんYou don't.」
ディアトロフ「一体何を言ってる?Then what the fuck are you talking about?」
シトニコフ「私が 4号炉建屋の周りを歩いた所瓦礫の中に黒鉛のかけらが I... I walked around the exterior of Building 4. I think there's graphite on the ground, in the rubble.」
ディアトロフ「見間違いだYou didn't see graphite.」
シトニコフ「いいえI did.」
ディアトロフ「そうだ 見間違いだ!黒鉛のはずはないYou didn't. You DIDN'T, because it's not there!」
フォーミン「まさか君は炉心が爆発したとでも?What, are you suggesting the core... what? Exploded?」
シトニコフ「そうですYes.」
フォーミン「シトニコフ 君も私も原子力技術学者だ どうしたらRBMK炉が爆発するのか教えてくれ 炉心溶融ではなく 爆発だぞ 是非知りたいSitnikov, you're a nuclear engineer. So am I. Now, please tell me how an RBMK reactor core explodes. Not a meltdown. An explosion. I'd love to know.」
シトニコフ「無理ですI can't.」
フォーミン「君は馬鹿か? Are you stupid?」
シトニコフ「いいえNo. 」
フォーミン「それならなぜ?Then why can't you? 」
シトニコフ「炉は爆発するはずがない だがしたI... I don't see how it could explode. But it did. 」
ディアトロフ「もういい 私が行きます 排気筒の所から見下ろせる 私のこの目で確かめる すみませんEnough. I'll go up to the vent block roof. From there, you can look right down into Reactor Building 4. I'll see it with my own...... my own eyes.I apologize.」
ディアトロフも倒れる。
ブリュカノフ「警備員!彼を医務室か病院に運べGuards! Guards! Get him to the medic, or the, or the hospital, whatever he needs!」
フォーミン「汚染水の近くにいたせいです 君が行けIt's the feedwater. Been around it all night.You go, then.」
シトニコフ「何と?What?」
フォーミン「排気筒の所から確認しろGo to the vent block roof, and report back what you see.」
シトニコフ「嫌です やりません No. No, I won't do that.」
ブリュカノフ「やるんだ Of course you will.」
フォーミン「大丈夫さ 今にわかる さあYou'll be fine. You'll see. Come on.」
扉が閉まる。

「よし 始めよう レオニード やるんだ 全開まで回してくれ」
レオニード「すみません」
「謝らなくていい 何も間違えていないんだから Don't worry, we did everything right. Something... something strange must have happened.」
レオニード「でも僕らのせいだ」

排気筒に上がるシトニコフ。茫然とする。黒煙が上がる。抱えあげられるディアトロフは消防士ら倒れる人達を横目で見る。ディアトロフも黒煙を見る。

部屋で報告するシトニコフ。会話は聞こえない。

慌ただしい病院。

電話が鳴る。レガソフ登場。
ボリス・シチェルビナ「レガソフ?クルチャトフ原子力研究所第一副所長の?」
レガソフ「そうだが」
「私は閣僚会議副議長シチェルビナ エネルギー部門の責任者だ チェルノブイリ原発で事故が起きたThis is Boris Shcherbina, Deputy Chairman of the Council of Ministers and head of the Bureau for Fuel and Energy. There's been an accident at the Chernobyl Nuclear Power Plant.」
「規模は?How bad is it?」
「タンクの爆発で火事が起きたがほぼ鎮火したNo. No need to panic. There was a fire. It's mostly put out. The system control tank exploded.」
「タンクですか 炉心は?Control system tank. And the core?」
「給水を続けさせているWe've ordered them to continuously pump water.」
「なるほど 汚染は?Yes, I see. Any contamination?」
「所長の報告によると毎時3.6レントゲンIt's mild. The plant manager, Bryukhanov, is reporting 3.6 roentgen per hour.」
「 それならすぐに避難をThat's actually significant. You should evacuate the sur...」
「君はRBMK炉の専門家だな?You're an expert on RBMK reactors, correct?」
「 そうですがYes, I've studied...」
「 事故処理のための政府委員会が設置された 君も一員だ 今日の午後2時に集まるGeneral Secretary Gorbachev has appointed a committee to manage the accident. You're on it. We'll convene at two this afternoon.」
「随分遅いですね その線量ならもっとThat late? Forgive me, but don't you think given the amount of radiation that it would be...」
「レガソフ 君はRBMK炉に関する質問が出たらそれに応えればいい それ以外の事には口を出すなLegasov, you're on this committee to answer direct questions about the function of an RBMK reactor if they should happen to arise. Nothing else. Certainly not policy. Do you understand?」」
「もちろんです 決して」
電話が切れる。エンドクレジット。

鎮火した発電所からは黒煙が上がり続ける。黒煙は町の方に風に乗って飛んでいく。その先には住宅地や学校があった。子供達が歩いている道に鳥が落ちてくる。やがて鳥は動かなくなる。

窓の外で小さく見える炎。発電所の奥深くへ行けばいくほど血を流し吐く作業員。炎と共に見えない放射線が広がっていく。現代の私達は何が起こっているか知っているため無知な彼等が恐ろしくて仕方がない。未来人が現在を振り返って新型コロナの流行始めを見た時の感想も、きっと同じになる。

まずい時ほど使われる常套句「状況は制御下(Under Control)」遠くの火事を見ている人達の髪(しつこく写される)にふりかかる小さな粒。見えない何かに冒されて地面に落ちる小鳥と横を通る子供達。自分達も知らないうちに保護よりも隔離されるべき存在になる住民。

第2話 現場検証 Please Remain Calm
翌朝、原子理学者のホミュックが勤める研究所で高濃度の放射性物質が検知され、近くの病院は搬送された作業員や消防士、その家族でごった返していた。クレムリンではゴルバチョフ書記長ら政府幹部が集まり、事故は適切に処理されているとの認識を確認するが、いたたまれなくなったレガソフ博士は原子炉が損壊している恐れがあり、高濃度の放射能が漏れているはずだと発言。書記長はレガソフとシチェルビナ副議長に現場検証を命じる。

ミンスク 白ロシア原子力研究所 4日26日 爆発の26時間後
机に突っ伏しているホミュック。
ディミトリ「働きすぎだ You work too hard. 」
起きるホミュック「他の者は?Where is everyone? 」
ディミトリ「今日は来ないってThey refused to come in. 」
ホミュック「 なぜ?Why?」
ディミトリ「土曜日だからIt's Saturday.」
「なぜ来たの?」
「僕も働きすぎだ 暑いね」
窓を開ける。すると警報が鳴る。
「8ミリレントゲンだ 漏れた?」
「いいえ 今鳴ったでしょ 外からよ」
「米国か?」
「ヨウ素131 ウラン235の核分裂生成物よIodine 131. It's not military. It's Uranium decay, U-235.」
「イグナリナ原発が240キロ先にある」
「原子力研究所のウラナ・ホミュックです どなたか…落ち着いて イグナリナじゃない 次に近いのは?」
「チェルノブイリが400キロ先だ」
「炉が壊れてない限り在り得ない 聴いてみるわ ヨウ素」
「放射性廃棄物?」
「それなら他の要素体も出る」
「新種の核爆弾の実験?」
「それなら耳に入るはず」
「宇宙計画の関連は?」
「誰も出ないわ」
電話を置くホミュック。

その頃現場では救急車がひっきりなしに来ていた。
「皆に点滴を」
「足りない」
「火傷患者を診てる」
「それは何です?」
「牛乳だ 水よりは効く」
「全て脱がせて 地下に運ぶ」
リュドミラ「夫は消防士です」
棄てられていく衣服が山となる。

「レガソフ博士 別件の協議がまだ長引きそうですお茶でも?報告書でもお読みになります?」
報告書の頁を繰りながら目の色が変わるレガソフ。

ゴルバチョフ書記長「まずシチェルビナ議長から事故の報告を聞き必要があれば次の対策を講じよう」
シチェルビナ「ではご報告します チェルノブイリの状況は幸い安定してます 街は警官隊が警備しておりピカロフ対象と化学部隊が事故現場に派遣されました 総量は所長の報告によると毎時3.6レントゲン程度 健康診断の胸部X線の1回分程度だそうです」
「外国は察知を?」
「全く KGBのチャルコーフ第一副議長が“機密は守られた”と」
「よろしい 事故処理は順調なようだ 他に何もなければ終わる」
レガソフ「いいえ」
ゴルバチョフ書記長「何だね?」
レガソフ「終われません」
シチェルビナ「こちらはレガソフ博士です 博士 懸案事項は後で私が聞きます」
レガソフ「申し訳ないがそうはいかない 3頁目の負傷者の項です “消防士が光沢のある黒い鉱物を触り重度の熱傷を負った” 光沢のある黒い鉱物 つまり黒鉛が地面に」
シチェルビナ「タンクが爆発したので瓦礫だらけで」
レガソフ「黒鉛が使われているのは原子炉の中だけです それが外にあるなら爆発したのはタンクではなく原子炉だ」
ゴルバチョフ書記長「シチェルビナ副議長?」
シチェルビナ「書記長 レガソフ博士は間違ってます 所長によると炉は無事で総量もAnd as for the radiation...」
レガソフ「3.6レントゲンは胸部X線の1回分ではなく400回分です そして3.6というのは蟹的な線量計の上限値です そこまでしか測れてない 実際の線量はもっと高い 消防士が触った黒鉛は胸部X線400万回分ですYes, 3.6 roentgen, which, by the way, is not the equivalent of one chest X-ray, but rather 400 chest X-rays. That number has been bothering me for a different reason, though. It's also the maximum reading on low-limit dosimeters. They gave us the number they had. I think the true number is much, much higher. If I'm right, this fireman was holding the equivalent of 4 million chest X-rays in his hand.」
シチェルビナ「博士 誇張はやめたまえ」
レガソフ「事実です」
ゴルバチョフ書記長「“事実”など聞こえなかった ただ見知らぬ男が憶測をまくしたて我が党の幹部の報告を否定しただけ」
レガソフ「申し訳ありません そんなつもりでは 私の懸念をお伝えしたのです 今度は冷静に敬意をこめて」
ゴルバチョフ書記長「ボリス 許可する」
レガソフ「RBMK型原子炉はウラン235を燃料として使用します ウラン235の幻視はそれぞれが弾丸です 光速に近い速度で飛び全てを貫きます 木も金属も肉体もです 1グラムのウラン235には弾丸が何兆個も含まれます 1グラムにです チェルノブイリには300万グラムあり 今燃えています 風に乗って放射性粒子が大陸中に広がり雨と一緒に降ってきます 何万 何億 何兆という弾丸が空気や飲み水や食べ物に入り込みます 弾丸の多くは100年間飛び続けます 中には50000年間飛び続けることもAn RBMK reactor uses uranium 235 as fuel. Every atom of U-235 is like a bullet, traveling at nearly the speed of light, penetrating everything in its path: woods, metal, concrete, flesh. Every gram of U-235 holds over a billion trillion of these bullets. That's in one gram. Now, Chernobyl holds over three million grams, and right now, it is on fire. Winds will carry radioactive particles across the entire continent, rain will bring them down on us. That's three million billion trillion bullets in the... in the air we breathe, the water we drink, the food we eat. Most of these bullets will not stop firing for 100 years. Some of them, not for 50,000 years. 」
ゴルバチョフ書記長「先ほどの鉱物の描写からそこまでの懸念が生じると?Yes, and, uh, this concern stems entirely from the description of a rock? 」
レガソフ「Yes. そうです」
ゴルバチョフ書記長「副議長 現地へ行き原子炉の状態を確認して報告したまえComrade Shcherbina, I want you do to go Chernobyl. You take a look at the reactor, you personally, and you report directly back to me... 」
シチェルビナ「賢明なご判断ですWise decision, comrade general secretary. 」
ゴルバチョフ書記長「博士もご同行を ...and take professor Legasov with you. 」
シチェルビナ「 失礼ながら私は…Eh, forgive me, comrade general secretary, but I... 」
ゴルバチョフ書記長「原子炉に詳しいか?Do you know how a nuclear reactor works? 」
シチェルビナ「No.いいえ」
ゴルバチョフ書記長「それでは何をみたか分かるまい 以上だNo. Well then, how will you know what you are looking at? Meeting adjourned.」
渋い顔のシチェルビナとレガソフが残る。

ヘリコプターに乗ってからシチェルビナ「原子炉の仕組みは?How does a nuclear reactor work? 」
レガソフ「何と?What? 」
「 単純な質問だIt's a simple question. 」
「 答えは複雑ですIt's hardly a simple answer. 」
「私の頭では理解できんと言うんだな ならこうだ 仕組みを説明しないと君を放り落とすOf course, you presume I'm too stupid to understand. So I'll restate: Tell me how a nuclear reactor works, or I'll have one of these soldiers throw you out of the helicopter. 」
「原子炉は蒸気で電気を作ります 蒸気でタービンを回すのです 蒸気を得るために火力発電では石炭を燃やします 原子力発電では核分裂を利用します 燃料はウラン235という不安定な物質で中性子が多すぎる 中性子とはA nuclear reactor makes energy with steam. The steam turns a turbine which generates electricity. Where a typical power plant makes steam by burning coal, a nuclear plant... In a nuclear plant, we use something called fission. We take an unstable element like uranium 235, which has too many neutrons. A neutron is, uh... 」
「“弾丸” The bullet. 」
「そう 弾丸です その弾丸はウランから飛び出します もし多くのウラン原子を近づけたらある原子の弾丸が別の原子にぶつかる その衝撃で原子は分裂し膨大なエネルギーを出しますYes, the bullet. So, bullets are flying off of the uranium. Now... if we put enough uranium atoms close together, the bullets from one atom will eventually strike another atom. The force 」
「黒鉛は?And the graphite? 」
「そうでした 中性子は非常に高速で移動しておりそのままでは原子にぶつかりません RBMK炉では原子を黒鉛で包むことで中性子を減速させるわけです Ah, yes. The neutrons are actually traveling so fast - we call this "flux"- it's relatively unlikely that the uranium atoms will ever hit one another. In RBMK reactors, we surround the fuel rods with graphite to moderate, slow down, the neutron flux. 」
「よし これで仕組みはわかった 君は用済みだ Good. I know how a nuclear reactor works. Now I don't need you. 」
シチェルビナを見るレガソフ。

病院で夫を下がるリュドミラ。
「人を探してる」
看護師「忙しいの」
「ミハイル」
ミハイル「その子を連れて行って 連れて行ってくれよ どうか頼む」
「失礼 夫を探してます 消防士のイグナテンコです 第6消防隊のイグナテンコ 居場所を教えて下さい」
「イグナテンコ モスクワに移送される 第6病院だ」
「なぜ?会えます?」
「モスクワに行け」
「町を出られない 移送はいつですか?」
「今だ」

パイロット「原発に接近します
レガソフ「なんてことだWhat have they done? 」
シチェルビナ「中は見えるか? Can you see inside?
「見る必要はない 屋根に黒鉛が載ってる 建屋が壊れ炉心がむき出しにI don't have to. Look. That's graphite on the roof. The whole building's been blown open. The core's exposed! 」
「私には見えんI can't see how you can tell that from here. 」
「ああもう あの光を射て 放射線が空気を電離してるOh, for God's sakes, look at that glow. That's radiation ionizing the air! 」
「見ないとわからん 真上に行けWell, if we can't see, we don't know. Get us directly over the building! 」
「ボリスBoris... 」
「名前で呼ぶなDon't use my name! 」
レガソフが叫ぶ「行けば7日以内に死ぬぞ ...if we fly directly over an open reactor, we'll be dead within a week! Dead! 」
パイロット「ご指示は?Sir? 」
シチェルビナ「真上に行かないと銃殺刑だGet us over that building, or I'll have you shot! 」
レガソフ「 行けば明朝までに君が銃殺を請うようになるIf you fly directly over that core, I promise you, by tomorrow morning, you'll be begging for that bullet. 」
上空を回避するパイロット。

ミンスク 白ロシア共産党本部
ホミュック
ガラーニンの秘書「別の日にされては?」
「ガラーニン副書記 原子力研究所のウラナ・ホミュックです」
「どうもこの方は」
「チェルノブイリの件で」
「とても楽しかった ぜひまた」
客を帰すガラーニン。
ガラーニン「これだから科学者は嫌いだ 肝心な時は研究所にこもって姿を見せずそれ以外の時は随所で恐怖をまき散らすI must tell you, this is why no one likes scientists. When we have a disease to cure, where are they? In a lab, noses in their books, and so Grandma dies. But when there isn't a problem, they're everywhere, spreading fear. 」
ウラナ・ホミュック「原発の事ですI know about Chernobyl. 」
「Oh? 」
「炉心がむき出しにI know that the core is either partially or completely exposed. 」
「何のことだかWhatever that means. 」
「すぐヨウ素の錠剤を配り避難させないと何十万もの人が癌になり大勢の死者が出ますAnd that if you don't immediately issue iodine tablets and then evacuate this city, hundreds of thousands of people are going to get cancer, and God knows how many more will die. 」
「そうかね 事故による問題はないと聞いてるYes, very good. There has been an accident at Chernobyl, but I've been assured there is no problem. 」
「あるんです I'm telling you that there is. 」
「自分の見解を信じるI prefer my opinion to yours. 」
「私は原子物理学者です あなたは靴工場の作業員だった I'm a nuclear physicist. Before you were Deputy Secretary, you worked in a shoe factory.
「そう靴工場の社員だった 今は責任ある立場だ Yes, I worked in a shoe factory. And now I'm in charge. 」
「To the workers of the world. 万国の労働者のね」
外に出て秘書に「安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素剤の蓄積を防ぐ 毎日一錠ずつ飲んで そして東へ ミンスクを離れて」
薬を飲む秘書。

フォーミン「ピカロフめ 大げさだ 体裁が悪いIt's overkill. Pikarov's showing off to make us look bad. 」
ブリュカノフ「シチェルビナは頭の固いばかな官僚だ  単純明快に事実を説明すればいいIt doesn't matter how it looks. Shcherbina's a pure bureaucrat, as stupid as he is pigheaded. We'll tell him the truth in the simplest terms possible. We'll be fine. 」
ブリュカノフ「ピカロフ大将!Pikarov! 」
ブリュカノフ「副議長 フォーミン技師長とピカロフ大将と私が心から歓迎をComrade Shcherbina, Chief Engineer Fomin. Colonel General Pikarov and I are honored at your arrival. 」
フォーミン「 光栄ですDeeply, deeply, honored. 」
ブリュカノフ「こんな形で残念ですが御覧の通り事故処理は順調です 事故原因に関する調査も始めました これが事故を起こしたと思われる者のリストですNaturally, we regret the circumstances of your visit, but as you can see, we are making excellent progress in containing the damage. We have begun our own inquiry into the cause of the accident, and I have a list of individuals who we believe are accountable. 」
ブリュカノフ「レガソフ博士 物騒な発言をしてるとかProfessor Legasov, I understand you have been saying saying dangerous things.」
フォーミン「炉心が爆発したと吹聴してるそうですね どうしたらRBMK炉が爆発するんです?Very dangerous things. Apparently, our reactor core exploded. Please, tell me how an RBMK reactor explodes. 」
レガソフ「今は説明できないI'm not prepared to explain it at this time.」
フォーミン「やはり答えられない As I presumed, he has no answer. 」
ブリュカノフ「恥ずべきことですよ こんな時に誤情報を広めて It's disgraceful, really. To spread disinformation at a time like this. 」
シチェルビナ「なぜ屋根に黒鉛が載ってる?黒鉛は中性子の減速材で炉心にしか使われてないはずWhy did I see graphite on the roof? Graphite is only found in the core where it is used as a neutron flux moderator. Correct? 」
ブリュカノフ「フォーミン なぜ屋根に黒鉛が?Fomin, why did the Deputy Chairman see graphite on the roof?」
フォーミン「在り得ません 失礼ですが見間違いではないかと コンクリート片では?Well, that... that can't be. Comrade Shcherbina, my apologies, but graphite... that's not possible. Perhaps you saw burnt concrete.」
シチェルビナ「失敬な 原子炉には素人でもコンクリートには詳しいNow there you made a mistake, because I may not know much about nuclear reactors, but I know a lot about concrete.」
フォーミン「しかし絶対に Comrade, I assure you...」
シチェルビナ「レガソフが間違ってると言うんだな どう確かめる?I understand. You think Legasov is wrong. How shall we prove it?」
ピカロフ「高性能の線量計が来ました トラックを鉛で覆い前面に付けて測りましょうOur high-range dosimeter just arrived. We could cover one of our trucks with lead shielding, mount the dosimeter on the front.」
レガソフ「運転手には最大限の防護を施して下さい ただ鉛でも恐らく不十分ですHave one of your men get as close to the fire as he can. Give him every bit of protection you have. But understand that even with lead shielding, it may not be enough.」
ピカロフ「 では私が行こうThen I'll do it myself.」
シチェルビナ「よかろう」

「お戻りです」
ピカロフ「3.6じゃない 15000です It's not three roentgen. It's 15,000.」
ブリュカノフ「副議長Comrade Shcherbina...」
シチェルビナ「つまり何だ?What does that number mean?
レガソフ「原子炉が損壊してます あの火は広島の原爆の約2倍の放射線を出してる 事故後1時間ごとにです 20時間経ったので原爆40個分です 明日は48個分 それがずっと続きます この大陸が滅びるまで毒をまき散らすIt means the core is open. It means the fire we're watching with our own eyes is giving nearly twice the radiation released by the bomb in Hiroshima. And that's every single hour. Hour after hour, 20 hours since the explosion, so 40 bombs worth by now. Forty-eight more tomorrow. And it will not stop. Not in a week, not in a month. It will burn and spread its poison until the entire continent is dead.」
シチェルビナ「この二人を市の党本部へお連れしろPlease escort Comrades Bryukhanov and Fomin to the local party headquarters.ご苦労さん もういいThank you for your service. You're excused.」
フォーミン「 ディアトロフです 奴がやったDyatlov was in charge. It was Dyatlov!
シチェルビナ「火を消すにはどうする?」
ピカロフ「水をかけましょう」
レガソフ「だめです これは火事じゃない 今の炉心の温度は2000度以上です 水は瞬時に蒸発する」
シチェルビナ「どう消火する?Tell me how to put it out. 」
レガソフ「対処しようにもこんな事故は地球上に前例がないYou are dealing with something that has never occurred on this planet before. 」
「ホウ素だ ホウ素と砂です 別の問題が発生するが他に方法がない 真上からは投下できないので多めの量が必要になります」
「いくらだ」
「さあ」
「だいたいでいい」
「5000トン」
「大量の放射性物質を含む煙がまき散らされてます プリピャチ市民の避難を」
「私が決める」
「ぜひ」
「上は“するな”と」
「決定権は誰に?」
「責任者は私だ 自分の専門外の事には口を出さないでくれ」
「どこへ?」
「5000トンの砂とホウ素を手配する」

放射線を洗い流す水が流れていく。
ホテルにやってくるレガソフ。住民は誰も知らない。

主婦「ゲン担ぎ?」
主婦「モスクワから?Moscow? 」
レガソフ頷く。
主婦「あの火事のために?Are you here because of the fire?」
レガソフ頷く。
レガソフ「町に危険はない?Anything we should be worried about?」
逡巡のあとレガソフ「ないよNo.」

鹿が倒れている。風に揺れる木。ヘリが飛んでくる。
4月27日朝。爆発の30時間後。

「距離の再確認を」
「真上は飛行禁止 接近は10メートルまで」

「いけない 近すぎる 風に載せるんだ 真上はダメだと 一号機が接近しすぎている」
「不明瞭で聞こえない」
一号機が墜落する。
シチェルビナ「他に方法は?」

マリーナ・グルシンスカヤ「クルチャトフ原子力研究所第4研究室Kurchatov Institute Laboratory Four. 」
ホミュック「マリーナ ミンスクのウラナよ Marina Gruzinskaya, it's Ulana Khomyuk from Minsk. 」
マリーナ「電話をありがとう 久しぶりねOh, yes, how nice of you to phone. It's been too long. 」
ホミュック「郊外にいる友達のことを聞きたいのIt has. I was actually calling about our friend. You know, the one in the country. 」
マリーナ「 彼ねOh, yes, of course. 」
ホミュック「元気かしら あそこは暑いでしょ I wanted to see how he's doing. It's so hot there right now. 」
マリーナ「 とても暑いわ でも甥たちが来る頃には涼しくなるはずYes, it's extremely hot, but his nephews are flying down, and they always bring cool weather. 」
ホミュック「甥たちって?Oh, which nephews? 」
マリーナ「 14才のシムカと5才のボリスよSimka, who's 14, and little Boris, who's five. 」
ホミュック「素敵ね でも子供と遊ぶと余計暑くなる 私も訪ねたいわWell, that's wonderful. Though children can make you even hotter when they're crawling all over you. Maybe I should visit them. 」
マリーナ「だめ 招かれざる客よ 悪いけど仕事に戻る 忙しいの じゃあねNo, they don't want visitors. I'm sorry, um, I have to get back to work. It's very busy right now. Goodbye.」
ホミュック「 砂とホウ素で消すみたいThey're dropping sand and boron on the fire. 」
ディミトリ「僕でもそうするIt's what I would do.」
ホミュック「そうよね Yes, I'm sure it is.」
ディミトリ「どこへ?」
ホミュック「チェルノブイリ」

シチェルビナ「順調だったぞ 20回投下した 何だ?」
「ここには5万人の住民が」
「避難するほどではないとイリイン博士が言ってる」
「物理学者じゃない」
「だが医者だ」
「ここは危ない」
「我々もか」
「そうです 5年後に死ぬ」
驚いた表情のシチェルビナ。
「言うつもりじゃ…すみません」
座り込むシチェルビナ。
電話が鳴る。
「 シチェルビナだShcherbina.どうもThank you. スウェーデンが放射線を検知し 我が国が発生源と発表した 米国が衛星写真を撮り壊れた建屋や煙や火が映った 世界に知られた 風はドイツに吹いてる 子供を外に出さんそうだ フランクフルトではなA nuclear plant in Sweden has detected radiation and identified it as a byproduct of our fuel. The Americans took satellite photos. The reactor building, the smoke, the fire. The whole world knows. The wind has been blowing toward Germany. They're not letting children play outside... in Frankfurt. 」
外にいる子供達を見つめるシチェルビナ。その遥か上には黒煙が。

ニュース「チェルノブイリ原発で原子炉が損傷し大勢の死傷者が出ている模様です ソ連が比較的早期に事故を認めたのはスカンジナビアまで到達したためです」

遂に住民の避難が始まる。いくつものバスが通過していく。屋上で眺めているシチェルビナとレガソフ。

国境で止められるホミュック。「Uターンしろ 制限区域だ 立ち入り許可は?」
「急を要する用事があるの 逮捕するなら一番偉い人に会わせて」

レガソフ「線量検査をしなければ 地区ごとに線量計で測るんです 大丈夫ですか?」
シチェルビナ「もちろん」
「南の検問所で逮捕された女の話を」
ホミュック「お耳に入れたくて 原子炉は壊れ黒鉛は燃え燃料は溶けてる そこに砂とホウ素を投下したのは失敗でした 白ロシア原子力研究所のウラナ・ホミュックです あなたはヴァレリー・レガソフ?投下によって火は消える でも炉心の温度が上がる」
「分かってる 燃料が解けても最低1か月は猶予が」
「1か月どころか2日です 燃料が最下部に至るのは確かに一か月後でしょう でもその前に通うには生体遮断を溶かす そしてその下にある貯水槽に入ります」
「職員によるとプールはほぼ空だ」
「今は空じゃない この3か所から水は全てプールに流れ込む 建屋内のパイプは破れてるし消防車もたくさんいる」
「消火活動は続いている 沢山の水が流れ込む プールは満水だ」

渋い表情のシチェルビナ。
ゴルバチョフ書記長「10分で終える その後は電話だ 同盟国に謝罪し敵国に謝罪する 世界に認知された我が国の権威がこの件でどれだけ傷ついたと?その重大さがわかるか?ボリス」
シチェルビナ「レガソフ博士が報告します」
レガソフ「砂とホウ素を投下したのは有効でした 放射性核種の放出が減少しています ただ鎮火にはあと2週間はかかります 新たな問題が発生しました 核燃料の温度は火が消えても下がりません むしろ砂で覆われて温度は上昇します  ウランは砂を溶かし溶岩状になって下の遮蔽体を溶かし始めますThere is some good news. The air drops are working to douse the fire. There has been a reduction in radionuclide emissions, but the fire will nto be extinguished for at least another two weeks. There is also an additional problem. Nuclear fuel doesn't turn cold simply because it is not on fire. In fact, the temperature will likely rise as a result of the blanket of sand we've dropped. The uranium will melt the sand creating a kind of lava which will begin to melt down through the shield below.」
「ゴルバチョフ書記長「 溶岩を発生させた?You have made lava? 」
レガソフ「それは想定内です 溶岩が地面に達し地下水を汚染する前に建屋最下部を補強すればいい だがその見込みが甘かった 私は原子炉の下の貯水槽が空だと考えていました こちらはホミュック博士です 彼女のおかげで貯水槽は満水と判明しましたI anticipated this. I believe there was time to reinforce this lower concrete pad before the lava reached the earth and contaminated the ground water. But as it turned out, I was worried about the wrong thing. Uh, um... It was my understanding that these large water tanks under the tank were essentially empty. This is Ulana Khomyuk of the Byelorussian Institute. Thanks to her insight, we are now aware that the tanks are, in fact, full.」
ゴルバチョフ「満水だと何が問題なのかね? Of water. Why is that a problem, professor? 」
ホミュック「溶岩が貯水槽に入ると約7000立方メートルの水が瞬時に蒸発します その結果水蒸気爆発が起きますWhen the lava enters these tanks, it will instantly superheat and vaporize approximately 7,000 cubic meters of water, causing a significant thermal explosion. 」
ゴルバチョフ「その規模は?How significant? 」
ホミュック「概算では2~4メガトンです 半径30キロ以内の物は完全に破壊されます 残っている3つの原子炉もです それらの炉心の放射性物質が全て猛烈な衝撃はによってまき散らされます 約200キロ先まで飛散するでしょう キエフ全体とミンスクの一部では致死量に値します 強い放射線が各地に影響を与えます ウクライナ ラトヴィア リトアニア 白ロシア ポーランド チェコスロバキア ハンガリー ルーマニア 東ドイツWe estimate between two and four megatons. Everything within a 30 kilometer radius will be completely destroyed, including the three remaining reactors at Chernobyl. The entirety of the radioactive material in all fo the cores will be ejected at force and dispersed by a massive shock wave, which will extend approximately 200 kilometers and likely be fatal to the entire population of Kiev, as well as a portion of Minsk. The release of radiation will be severe, and will impact all of Soviet Ukraine, Latvia, Lithuania, Byelorussia, as well as Poland, Czechoslovakia, Hungary, Romania, most of East Germany.」
ゴルバチョフ「"影響"とは?What do you mean "impact?"」
レガソフ「大部分で食料と水がほぼ永久に汚染されます 癌や先天異常が多発し予測不能なほど死者が出ます ウクライナや白ロシアでは最低でも100年先まで人が住めなくなります For much of the area, a nearly permanent disruption of the food and water supply, a steep increase in the rates of cancer and birth defects. I don't know how many deaths there will be, but many. For Byelorussia and the Ukraine, "impact" means completely uninhabitable for a minimum of 100 years.」
ゴルバチョフ「白ロシアとウクライナには5000万人以上の住民がいるThere are more than 50 million people living in Byelorussia and Ukraine.」
レガソフ「6000万ですSixty, yes.」
ゴルバチョフ「残り時間は?And how long before this happens?」
レガソフ「約48~72時間ですApproximately 48 to 72 hours.」
困った表情をする会議の面々。
レガソフ「しかし打開策が 貯水槽から水を抜くのです 貯水槽の排水仕切弁は手動でしか開けられません そこで設備を熟知した原発職人3人に手前から地下に入って導管の間を通ってもらいます ここの仕切弁を開ければ貯水槽の水を抜けます 許可を頂けますか?But... we may have a solution. We can pump the water from the tanks. Unfortunately, the tanks are sealed by a sluice gate, and the gate can only be opened manually from within the duct system itself. So we need to find three plant workers who know the facility well enough to enter the basement here, find their way through all these ductways, get to the sluice gate valve here, and give us the access we need to pump out the tanks. Of course we will need your permission.」
ゴルバチョフ書記長 「何の許可だね? My permission for what?」
レガソフ「 導管内の水の汚染レベルからすると…Uh, the water in the ducts... the level of radioactive contamination...」
ホミュック「3名は1週間で死にます They'll likely be dead in a week.」
レガソフ「3名の命を奪う許可をWe're asking for your permission to kill three men.」」
皆黙ってしまう。
「同志レガソフ 勝利に犠牲はつきものだ」
そして席を立つ書記長。

4時28日 爆発の58時間後。住宅には誰もいない。各部屋は慌てて出ていったことがわかる。
レガソフ「ここの仕切弁を開けます 開けにくい弁なので3人必要です 設備に詳しい人がね 志願者には褒賞が与えられます 1号炉と2号炉の職員には昇進もあります」
工場労働者「何故1号炉と2号炉を止めない?事故があった晩の警備員は瀕死だ 消防士の話も聞いた それなのに燃えてる炉の下を泳げと?どれだけの線量だと?Why are reactors 1 and 2 still operating at all? My friend was a security guard that night, and, uh, she's now dying. And we've all heard about the firemen. And now you want us to swim underneath a burning reactor? Do you even know how contaminated it is? 」
レガソフ「正確には不明ですI... I don't have an exact number. 」
工場労働者「死ぬとわかってるくせにそれすら隠すのか 何のために俺らがそんな事を?You don't need an exact number to know if it'll kill us. But you can't even tell us that. Why should we do this, for what, 400 rubles? 」
シチェルビナ「やらねばならんからだ 他の者にはできん やらないと大勢が死ぬからだ それで理由は十分だろう 世のために犠牲となった祖先の血を我らは脈々と受け継いでいる どの世代にも苦難はある 私は事故を招いた者を憎み代償の痛みを呪う だが受け入れる 諸君も受けり水に入ってくれ やらねばならんのだYou'll do it because it must be done. You'll do it because nobody else can. And if you don't, millions will die. If you tell me that's not enough, I won't believe you. This is what has always set our people apart. A thousand years of sacrifice in our veins. And every generation must know its own suffering. I spit on the people who did this, and I curse the price I have to pay. But I'm making my peace with it, now you make yours. And go into that water. Because it must be done. 」
アナネンコ「Ananenko.」
ベズパロフ「Bezpalov. 」
バラロフ「Baranov. 」
志願者が3人立ち上がる。
車の中で3人を見つめるレガソフ。

奥へ入っていけばいくほど線量計の音が大きくなる。恐怖に駆られる3人。エンドクレジット。

冒頭白ロシアでホミュック博士が窓についた塵と警報で察知する放射能。ラストで貯水槽の奥に入れば入るほどじりじりと煩く鳴る線量計が察知する放射能。音と空気、見えない脅威=放射能がドラマの主役だった。

第1回の会議ではレガソフに「お前余計な事言うんじゃない」と明らかに邪魔者扱いしていたシチェルビナが目の前で落ちるヘリや本当の放射能の線量など惨憺たる現場を見ての第2回会議ではこの渋面。事態の深刻さを知りレガソフへの態度も変わっていく

本編のゴルバチョフ書記長はペレストロイカ&グラスノスチを引っ提げてソ連を変えたヒーローっぽくない。「外国にばれちゃってどうしてくれるんだ」と部下達を詰ったり保身主義に走る上に立つ者としてはいかがなものか的な姿が描かれる

ホミュック博士の懸念を一蹴するガラーニン。靴工場の労働者が党の要職について体も資産もでっぷり肥っただめな権力者そのものの姿。当時のソ連では珍しくもないキャラクターだったのだろう。

宿泊先ホテルで意図がありグラスを指定したレガソフにゲン担ぎかと気安く声をかける地元の主婦。「町に危険はない?Anything we should be worried about?」という主婦の問いに一瞬躊躇い「ないよNo.」と答えてからのシチェルビナへの住民避難の訴え

遂に避難が始まったプリピャチ市民。洗濯物も取り込んでおらずテーブルも片付けられていない。慌ただしい出発だったことがわかる。福島もそうだったのだろうか、とふと考える。

第3話 KGB Open Wide, O Earth
事故から4日後、被曝した消防士の妻リュドミラは夫が搬送された病院に駆けつけ、絶対に彼に触れないという条件で面会を許される。現場では火災は消し止められるもメルトダウン(炉心溶融)が始まっており、汚染された水が大陸中に流出する恐れがあると気付いたレガソフは、避難区域を拡大するようゴルバチョフ書記長に訴える。ホミュックは事故当時の状況を作業員に直接聞くため、彼らが搬送された病院に向かう。

真っ暗闇の貯水槽。まだ線量計は鳴りやまない。職員の息も荒くなる。

シチェルビナ「あの3人もう死んでるかもIs it possible that the water has already killed them?」
レガソフ「在り得ます」
「もしそうならどうする?」
カメラは扉にズーム。

3人は息を荒くしながらまだ奮闘していた。
内側から叩く音。飛び出すレガソフ。
皆3人を拍手で迎える。

モスクワ第6病院
リュドミラ「夫に会わせて イグナテンコよ 原発で消火活動を」
「キエフ島からはるばる来た」
札を出すリュドミラ。
「待って すみません」
「何してるの?」
「夫に会いにきた 消防士のイグナテンコよ 許可はもらった」
金を出そうとするが留める看護師
「30分だけよ それ以上はだめ 妊娠は?」
同僚もひどい火傷だ。
「やっぱりな 君からは隠れられない」抱擁するが痛がる夫。
光が差しリュドミラに感染したのがわかる。

レガソフ「誰の提言でこうなったんです?」
シチェルビナ「私だと?」
「誰かが避難区域を原発から30キロ圏内と定めた セシウム137が200キロ先のゴメリ州で検出されてるのにHow, how, how did this happen? Who gave them the idea? Someone decided that the evacuation zone should be 30 km, when we know, here.there's Cs-137, in the Gomel district. That's 200 km away! 」
「決定だ」
「根拠は?」
「知らん」
「私が世間知らずで馬鹿なだけかもしれないがこれが世の中ですか?官僚や党員の無知で気まぐれな判断で大勢の人が犠牲になるなんて」
「私だって党員だ 口に気を付けろ レガソフ」
「じきに消火が完了します」
「いいことだな」
「だが炉の温度は上昇 そして…」
紙を手わたされるレガソフ。
「燃料棒の被膜管から出たものです」
「つまり?」
「メルトダウンが始まった」

まだ病院にいるリュドミラ。眠ってしまった。
「放せ!放してくれ!」叫び声で立ち上がるリュドミラ。
「やめて 痛がってる 夫に何が?」
「ここにいたらだめ じっとして」

5月2日
「“助けを求めるモスクワ”」新聞の見出しをじっと見るゴルバチョフ書記長。sの時電話がかかって来る。
「どうだ?」
シチェルビナ「鎮火は間近です 貯水槽の水も抜き水蒸気爆発は回避しました」
「それで?」
「炉心の溶融が予想より早いようです 土台のコンクリートはもって6~8週間 その後は50%の確率で燃料が解け出て地下水を汚染します」
「地下水はどこへ流れる?」
「プリピャチ川 ドニエプル川の支流です 約5000万人の飲み水が汚染され農作や畜産にも使えなくなります 打開策として熱交換機を地下に設置し燃料を冷却します そのためには連邦の総ての液体窒素が必要です」
「そうか わかった 何でも必要なだけ使え 他には?」
「いえ」
レガソフ「避難区域について意見が」
「レガソフ博士か?避難区域がどうした」
「ささいなことです ルイシコフ首相が決定を…」
「決定したなら蒸し返すな 博士 君の仕事はただ事故の収束だ 全てが終わるのはいつだね?」
「プルトニウム239の半減期は2万4000年なので生きてるうちには終わりません」
電話が切れる。

シチェルビナ「散歩に出よう」
レガソフ「遅いし 疲れました」
「出るんだ」

散歩する二人。
レガソフ「“謝れ”とでもいうんですか 見殺しなんて…」
シチェルビナ「彼等はどうなる?」
「水に入った3人ですか」
「あと消防士や制御室にいた職員も 放射線を浴びた後はどうなる?」
「あれほどの線量を浴びれば皮膚に水泡ができ黒ずんでいく その前に潜伏期が 症状が落ち着き回復の兆しが見えるがそれは見せかけです 1~2日すると急変する 組織損傷が現れ始めます 骨髄がだめになり免疫系がやられる 臓器や軟組織が腐り始めます 血管がぼろぼろになって出血しモルヒネも効かなくなり想像を絶する激痛に襲われる そして3日から3週間で死ぬ それが彼等の末路です」
「我々は?」
「一定量は浴びてますが彼等ほどじゃない 細胞は死にません でもDB|NAは傷つきますじきに重いがんか再生不良性貧血になります」
「それじゃ我々はまだましな方だな ヴァレリー」
「彼等には見覚えが」
「だから散歩に出たんだ 仕事場は盗聴されてる 部屋もだ 浴室さえもな」
「ずっと見張られてた?」
「もちろんだ 彼等が姿を見せてるのはそれを警告するためだ」

ホミュック「これ見た?燃料の溶融が早い」
レガソフ「わかってる 策もある」
「熱交換器かしら?」
「そうだ どうやら君も私と同じ疑問を抱いていたようだ」
「“なぜ炉は爆発した?”何通りも考えたわ RBMK炉で起き得る 答えはいつも同じ」
「すなわち?」
「”ありえない”」
「だが爆発した ここで計算しても謎は解けない あの夜制御室にいた原発職員たちは 皆第六病院に入院してる 事故の経緯を調べて欲しい 一刻一刻どんな判断をしたか彼等が生きてるうちに聞くんだ 原因を突き止めないとまた事故が起こる ホミュック 気を付けて」

1986年5月3日トゥーラ
グルコフ「Here's one... What's as big as a house, burns 20 liters of fuel every hour, puts out a shitload of smoke and noise, and cuts an apple into 3 pieces? 」
一呼吸おいて
グルコフ「A Soviet machine made to cut apples into 4 pieces! 」
そこへ車がやって来る。
石炭相シカドフ「責任者は?」
グルコフ「俺が棟梁だ」
「今は40人 全員で100人だ」
「全員道具をまとめて車に乗れ」
「それでどこへ?」
「それは機密だ」
「だったら撃ちな 全員分の弾はない 残った仲間がお前らをぶちのめす」
兵士「口を慎め」
「うるせえ ここは俺らの炭鉱だ 理由もなく去れるか」
「チェルノブイリだ 知ってるか?」
「死体を掘り出せと?」
「核燃料が地面に入ればキエフから黒海までの水が汚染される 永遠にな それを阻止して欲しいThe reactor fuel is going to sink into the ground and poison the water from Kiev to the Black Sea, all of it. Forever, they say. They want you to stop that from happening. 」
「どうやって?How are we supposed to do that? 」
「私は知らされてない 今その情報は必要か?They didn't tell me, because I don't need to know. Do you need to know, or have you heard enough? 」
シカドフの服を叩いて車に乗る鉱夫たち。
鉱夫「石炭相らしくなったNow you look like the minister of coal. 」

リュドミラ「ワシリー」
「よせ 触るなと言われたろ 危ない」
「看護師は触ってる だから私も平気よ」
「他の者は?」
「別室に運ばれた 場所はわからない」
「カーテンを開けて カーテンだ そこから何が見える?全部教えてくれ」
「赤の広場が見える あれはクレムリン スパスカヤ塔にレーニン廟」
「言ったろ いつかモスクワを見せてやるって」
「ええ そうね ありがとう」
リュドミラは半袖だ。

病院に潜入したホミュック。
ディアトロフ「食えたもんじゃない 他のものをくれ」
ホミュック「ディアトロフさん 私は原子物理学者です」
「そうかい 原子物理学者さん キャビアのサンドイッチはあるか?ないならさっさと失せろ」

シチェルビナ「何だ」
レガソフ「嘘をつくのは得意じゃない」
「炭鉱夫と話したことは?Have you ever spent time with miners?」
「ないNo. 」
「率直なのが一番だ 暗闇で働く者は全てを見透かすMy advice, tell the truth. These men work in the dark; they see everything. 」
グルコフがやって来て防護マスクを置く。
「効果は?」
レガソフ「ある程度は」
レガソフ「どうぞ」タバコを出す。
「何をしろと?」
「液体窒素を使う熱交換器を設置する 土台のコンクリートの下にね 建屋の中からは設置できないので地下からやるしかない」
「土台の上には?」
「炉心があり徐々に解け落ちてる」
「落ちてる?」
「そうだ」
「俺らは下敷きに?」
「6週間は猶予が」
「掘る規模は?」
「ここから150メートルのトンネルを掘り30メートル四方の熱交換器用の空間を作る 地盤のn破壊を最小限にするため重機は使えない 手で掘るのみだ」
「人手が要る 最低でも400人 昼夜ぶっ通しだ 深さは6メートル? We're gonna need more men. Four hundred at least. We'll have to work around the clock. How deep do you want this tunnel - six meters? 」
レガソフ「12だTwelve. 」
グルコフ「12?なぜだTwelve? Why? 」
レガソフ「君らの防護のため 深い地下なら放射線から守られるFor your protection. At that depth, you'll be shielded from much of the radiation. 」
グルコフ「トンネルの入り口は地下じゃないThe entrance to the tunnel won't be twelve meters below ground. 」
レガソフ「そうだNo. 」
グルコフ「ここも地下じゃないAnd we're not twelve meters below ground now. 」
レガソフ「そうNo. その通りだWe're not. 」
シチェルビナ「多少の道具は用意した 今日中にもっと届く 明朝開始だWe have some equipment here outside. More will arrive by midnight. You can start in the morning. 」
グルコフ「いや 今からだ 仲間を長居させたくないWe start now. I don't want my men here one more second than they need to be. 」
グルコフフェイスマスクを指す。
グルコフ「効果があるならあんたも着けてるIf these worked... you'd be wearing 'em. 」
グルコフ去る。
レガソフ「皆あんな風か?Are they all like that? 」
シチェルビナ「炭鉱の男はなThey're all like that. 」

2986年5月6日炭鉱の男達の作業が地下で行われる。

「何だ」
グルコフ「気温は?」
「50度だ」

「送風機がいる」
「何のために」
「あんたらのクソ穴を掘るためだろ 50度だ マスクをしてると息もできん まるでオーヴンだ 送風機を」
「ちりが舞って肺に入る」
「今さらだ 20年間吸ってる」
「このちりは吸ってはいかん 悪いが送風機はなしだ」

モスクワの病院
「私はウラナ・ホミュック 原子物理学者よ 事故の夜に何があったか全部聞きたいの いいかしら?」
「ああ 話したい」
「あなたの肩書は?」
「僕の名前はレオニード・トプトゥーノフ 原子炉制御上級技師だ」
「上級技師?年齢は?」
「25才」

「リュドミラ」
「ええ ここにいるわ」

「ずっといたの?」
「去れと言われてない」
「30分だけと言ったでしょ」
「夫が苦しんでる時どこにいたの?傷がガウンに張り付き5回も便を漏らしたのに」
「北棟と西棟で同様の患者を何十人も診てた 危ない」
「夫よ」
「今は違う もう以前の彼じゃない 危険なの」
「やけどしただけよ」
「帰りなさい」
「お願い もう夫は長くないわ 一人で死なせたくない」
「幕の中には入らないで 出ないと追い出す」

しばらく幕の外にいたリュドミラ。様子を窺い中に入る。
「リュドミラ」
「ここよ」
「今は昼か?」
「いいえ 夜よ ワシリー 赤ちゃんができたわ」
ワシリーの手を握るリュドミラ。

シチェルビナ「火が消えた 鎮火したんだぞ トンネル工事も順調だ 4週間で堀り終わると言ってる 4週間だぞ 信じられるか?仕事は山積みだが終息の始まりだ」
「失礼します 副議長 炭鉱夫たちが」
炭鉱夫は裸で掘っていた。

「何だよ 送風機を寄越さないから昔ながらの恰好で掘ってる 帽子は被ってる 文句あるか?」
「全裸では防衛が」
「差があるとでも?」
「終わったら皆の面倒を見てくれるか?When this is over... will they be looked after? 」
シチェルビナ「わからん I don't know. 」
レガソフ驚いてシチェルビナを見る。
グルコフ「“わからん”かYou don't know. 」
グルコフ歩き去る。

ホミュック「出力が200メガワットから400メガワットに?」
トゥプトーノフ「そうだ あっという間に」
「なぜ緊急停止をしなかったの?AZボタンを押していれば」
「押したよ」
「それはありえないわ」
「誓ってもいい 押すのを見た その直後に爆発した」

アキーモフ「ボタンは確かに押した 爆発の前に なぜ爆発した?AZ5を押して停止させたのに」
「どうも アキーモフさん」
「処置は正しかった 間違ってない」

リュドミラとワシーリーのいる病室を通りかかってぎょっとするホミュック。
「立って!出なさい」
「やめて 放して」
「出るのよ」
「やめて!」
「幕の中に入り彼に触れてた 妊婦なのに」
「違うわ」
「何てこと」
「防護もなく面会させてこの深刻さがわかる?」
「どうか…」
「いいえ 報告する この事は万人に知れ渡るわ」
「何が知れ渡るって?」
「私は政府委員会から権限を与えられてる 名前はウラナ」
「知ってる 何が知れ渡るって?」

モスクワ1986年5月7日
シチェルビナ「メモは持ったか?」
レガソフ「ええ」
「ホミュックが逮捕された」
「なぜ?」
「わからん」
「まさか」
「その通りだ 対処してる」
「ボリス」
「努力はしてる 他にどうしろと?ネクタイを直せ」
シチェルビナ「勇敢なヘリコプター隊により火は消えました 炭鉱夫は水の汚染を防ぐため果敢に掘削しています 再爆発の危険もありません 難関に立ち向かったソビエトの人々とこの場の皆さんに称賛を 機密保護に関しても最新の注意を払いました 事故発生直後に流出した情報以外は一切漏れていません 同志チャルコーフ 我々はKGBの規範に添いましたか?どうも 今後の作業については博士が報告します」
「では副議長がよい報告をお届けしました 差し迫った危機は去り長い戦争が始まります There is an enormous amount of radioactive debris and contamination spread out across a zone of approximately 2600 square kilometers. This entire region must be completely evacuated. We must go to every town, every village, to ensure this. And all animals still surviving within the zone, whether domesticated or wild, must be presumed contaminated and will have to be destroyed to prevent the spread of radiation and disease. In the immediate area surrounding Chernobyl, uh, every rock, every tree, the, the very ground itself, has absorbed a dangerous amount of radio nuclides, which will be carried by the wind and the rain if left exposed, so we will have to raze entire forests, we will have to rip up the top layer of earth and bury it under itself, approximately 100 square kilometers.多量の放射性物質で約2600平方キロメートルが汚染されました このエリアの住民は全員避難が必要です 隅々まで徹底的に避難させるべきです またこの地域にいる動物に関しては家畜も野生動物も汚染された可能性があり汚染や病気の拡大を防ぐため処分せざるを得ません 原発周囲のエリアではあらゆる石や木々地面そのものが放射性核種を吸収しています 風と雨による拡散を防ぐため木々は全部切り倒し地表面の土ははぎ取って埋めます 範囲は約100平方キロメートルです そして4号炉を覆うように密閉する構造物を作らねばなりません もちろん建設には大勢の死者が出ます」
「必要な時間と人員は?」
「全体で3年かかる見込みです 必要人員は75万人 医療関係者や建築技術者を含めてです」
ゴルバチョフ書記長「死者の予想数は?」
「数千 または数万人かと」
「では直ちに開始を」

レガソフ「チャルコーフさん」
シチェルビナ「よせ!」
「何かね?」
「仕事仲間が逮捕されました 失礼ですが理由をお伺いしたい」
「失礼だが何のことだか」
「KGBが逮捕したんです あなたはKGBの第一副議長だ」
「そう だから逮捕にはいちいち関与しない」
「でも我々を尾行させてる」
シチェルビナ「副議長はご多忙だ」
「いや構わんよ KGBの噂を聞いたのだろうが我々は人が言うような組織ではない 確かに君にも他の者にも尾行がついてる 彼等が見えるか?私にもついてる KGBは“説明責任の輪“にすぎないThe KGB is a circle of accountability. Nothing more.」
レガソフ「我々の仕事を見ても信用できないと?You know the work we're doing here. Don't you trust us? 」
KGB議長 「してるとも だが昔から言うだろ “信用しても確認せよ“と 米国人はこの格言がレーガン作だと思ってる 話せて良かったOf course I do. But you know the old Russian proverb: Trust but verify.The Americans think that Ronald Reagan thought that up. Can you imagine?」
「返して下さい」
「君が彼女の責任を負うか?いいだろう」
「名前は…」
「知っている それでは」

シチェルビナ「That went surprisingly well. You came off like a naive idiot. Naive idiots are not a threat. いや 今の君は良かったぞ 実直な馬鹿に見えた 実直な馬鹿は脅威じゃない」

「大丈夫か?」
「無傷よ 病院で妊婦が…いえ 言っても無駄ね 彼等も私もばかだった ディアトロフはだめ アキーモフたちとは話せた ヴァレリー アキーモフは顔がなくなってたDyatlov won't talk to me. Akimov yes, Toptunov yes. Valery: Akimov... his face was gone. 」
レガソフ「You want to stop? やめたい?」
「それは許されるの?Is that a choice I even have? 」」
「燃料はコンクリートから溶けだすか?」
「さあ 40%くらいの確率かも」
「私は50%と見てた いずれにせよ全ては“かも“だ 燃料が地下水に溶け出すかも 炭鉱夫たちは大勢の命を救えるかも または無駄死にかも 私はもう嫌だ やめたい だが無理だ 私にも君にも選択の余地はない 権力者の愚かしさや嘘や圧力に辟易するのに逃げられない この難問の答えを見つけるまでね それが我々という存在だI don't want to do this anymore. I want to stop. But I can't. I don't think you have a choice any more than I do. I think despite the... stupidity, the lies, and this, you are compelled. The problem has been assigned and you'll stop at nothing until you find an answer. Because that is who you are. 」
ホミュック「すなわち変人ねA lunatic, then. 」
「科学者さA scientist.」
「彼等は実験をしてたそうよ」
「ああ」
「あともう一つ アキーモフもトプトゥーノフも炉を停止させるためAZ5を押したと」
「押すのが遅すぎた」
「違うの アキーモフがAZ5を押した後で炉が爆発したそうよ 片方だけが言うなら勘違いや妄想と思うけど二人ともが確かにそう言った」
「ヴァレリー」
「そんな事が?」
「在り得ないわよね 過ちを隠すための嘘とも思える 私は信じた」
「では追求すべきだ あらゆる可能性を追求しよう たとえ在り得なくても誰に責任があっても「病院に戻ってもう一度彼等に聞くわ 話ができればI'll go back to the hospital and re-interview Akimov and Toptunov. If they're still awake」
レガソフ「残念だがThey're not. 」

何かの目的で集められた人々。片づけられるベッド。靴を持つリュドミラ。
葬儀。セメントで周囲を埋められていく棺。エンドクレジット。

ゴルバチョフ書記長に「すべてが終わるのはいつ?」と聞かれて、ただでさえ避難区域指定に不満を持っていたため「生きてるうちには終わりません」と木で鼻をくくったような回答しかできないレガソフ。いやぁ、二人とももっと大人になろうよ。

熱交換器を置くトンネル堀りのため最初は鉱夫達に居丈高に出た石炭相が真相をある程度言わざるを得なくなりラストはチェルノブイリに向かう全鉱夫にぺたぺたと意図的にすすをなすりつけられるちょっとコミカルなシーン。

地下は50度のため全裸で作業する鉱夫達。「終わったら皆の面倒を見てくれるか?」と頭領に聞かれ「わからん」ときっぱり答えるシチェルビナ。前に自身の死期を聞かされていたことと「暗闇で働く者=鉱夫は(嘘をついても)全てを見透かす」ため。

夫と抱擁するシーンで淡い光が妻を包み感染した事が示される。この後禁じられていた幕の中に入り手を握りしかも妊娠しているという最悪の感染をするが他の病気であったなら死にゆく伴侶に対してしたいと思っていること総てであり、病気により禁じられる。

棺が厳重に閉められその上からご丁寧にセメントを固めていく感染者集団葬儀シーン。妻が持っている靴を最後は履くことすら叶わないほど変わり果てた夫。死に目にあえず触れることも禁じられるという点で今回のコロナ禍と重なる。

背後の絵画はイリヤ・レーピン「イワン雷帝とその息子」父が息子を殺す陰惨な画面が描かれており父=国、息子=国民と考えると今まさに感染して血を流し死に絶えようとしているかのように見える。

第4話 掃討作戦 The Happiness of All Mankind
当局は軍を増員して危険区域に残された家畜やペットなどの害獣駆除や、汚染された樹木や地表の処理にあたる。レガソフらは、高濃度の放射能汚染のために、5ヵ月が経っても手が付けられなかった原子炉の屋根の上の黒鉛除去作業に、ロボットの使用を試みる。現場の惨状をよそに当局は、事故による被害の大きさは世界規模ではないとの見解を固持する。ホミュックは、現場監督だったディアトロフに事故当時の状況を聞くが…。

このドラマはいつも音から始まる。老婆が牛の乳を搾っている。

兵士「行くぞ 聞こえたか?あんたは避難するんだ 一緒に来いIt's time to go. Did you hear me? This is an evacuation. Do you understand? You have to come with me. 」
老婆バブーシュカ「なぜ?Why? 」
「上からの指示だ。この村の全員が対象だ 放射線量が多くて危険なんだBecause they told me, so now I'm telling you. Everyone in this village, everyone. It's not safe here. There's radiation in the air. What's wrong with you? 」
「私を何歳だと? Do you know how old I am? 」
「知らない 年寄だI don't know. Old. 」
「82才さ ずっと生きてきた この村にあるこの家でね いまさら危険も何もないI'm 82. I've lived here my whole life. Right here, that house, this place. What do I care about safe? 」
「俺も仕事だ 問題を起こすなI have a job. Don't cause trouble. 」
「問題か 銃を持った兵士は初めてじゃない 12才の時の革命では皇帝の兵士が来た 次はポリシェビキ 隊列を組んだ若者達が来た 去れと言われたが拒否した その後スターリンによる大飢饉が起きた 両親と姉妹2人が死んだ 移住を命じられたが拒否した そして大祖国戦争 ドイツ兵もロシア兵も来た さらに飢饉が起きてさらに人が死んだ 兄弟は帰らなかった それだけのものを見ても私はここに残ったんだ 見えもしない放射線のために今さら去れと?嫌だね
Trouble? You're not the first soldier to stand here with a gun. When I was 12, the revolution came - czar's men, then bolsheviks, boys like you marching in lines - they told us to leave. No. Then there was Stalin and his famine, the Holodomor - my parents died, two of my sisters died - they told the rest of us to leave. No. Then the Great War - German boys, Russian boys, more soldiers, more famine, more bodies - my brothers never came home, but I stayed, and I'm still here. After all that I have seen... so I should leave now, because of something I cannot see at all? No. 」
ミルクを棄てる兵士。
外にはバスが待っている。
「行くぞ」
再びバケツを用意して乳しぼりをする老婆。
「立ってくれ 最後の警告だ」
動じない老婆。牛が撃たれる。
「行くぞ」

老婆の後ろ姿からカメラが遠ざかってタイトル。

ゴーストタウンと化したマンション。
ソ連ウクライナ共和国キエフ 1986年8月 爆発から4か月後。
お腹が大きいリュドミラがマンションにやって来る。
草原の線量を図る人々。上空をヘリが飛ぶ。

プリピャチ チェルノブイリ原発立ち入り禁止地区。
電話が鳴る。
「レガソフだ 行きます」

壊れたリアクターの写真を見て
レガソフ「原子の力は強大だThe atom is a humbling thing. 」
タラカノフ「我々には屈辱だ なぜさっさと原子炉を密閉しない?It's not humbling, it's humiliating. Why is the core still exposed to the air? Why have we not already covered it up? 」
「工事をしたくても近づけないんです 建屋の屋根に黒鉛が載っています それを落として炉内に戻さない限り近づく者が皆死にます 屋根を3区域に分けました この小さい所が”カチャ” 毎時1000レントゲン 2時間で致死量に達します ”ニナ”は2000レントゲン 1時間で致死量We want to, but we can't get close enough. The debris on the roof is graphite from the core itself. Until we can push it off the roof back into the reactor, it'll kill anyone who gets near it. You can see, the roof is in three levels. We've named them. This small one here is Katya. 1,000 roentgen per hour. Presume two hours of exposure is fatal. The one on the side, Nina. 2,000 roentgen, one hour fatal. 」
「遠隔操作のブルドーザーを使うか?We used remote-controlled bulldozers in Afghanistan. 」
シチェルビナ「重すぎて屋根が抜けるToo heavy. They'd fall right through. 」
「ではどうする? So then... 」
「ルノホート計画の月面車です 軽量だし鉛で覆えば放射線に耐えるMoon rovers. Lunakhod's STR-1s. They're light, and if we line them with lead, they can withstand the radiation. 」
「友人月面着陸は無理でも無人屋根掃除ならWe couldn't put a man on the moon. At least we can keep a man off a roof. 」
「“無人”が何より重要です 絶対に人は使わない ロボットのみですThat is the most important thing, General. Under no circumstances can men go up there. Robots only. 」
タラカノフ「ここの大きな区域は?What about this large section here? 」
シチェルビナ「“マーシャ”Masha. 」
レガソフ「12000レントゲン 頭から足先まで防護しても2分で余命が半分になり3分で余命が数か月に ここでは月面車も使えません 強力なガンマ線によってマイクロチップの回路がずたずたになる 電気のスイッチより複雑な物は壊れます12,000 roentgen. If you were to stand there in full protective gear, head-to-toe, for two minutes, your life expectancy would be cut in half. By three minutes, you're dead within months. Even our lunar rovers won't work on Masha. That amount of gamma radiation penetrates everything. The particles literally shred the circuits in microchips apart. If it's more complicated than a light switch, Masha will destroy it. 」
シチェルビナ「 マーシャは地球上で最も危険な場所だIt would be fair to say that that piece of roof is the most dangerous place on earth. 」
タラカノフ「 それではどうする?So... what do we do?」
シチェルビナ「知恵を拝借したいThat's what we wanted to ask you. 」

男達がバスに乗り地方からやってきた。裸で写真を撮る男二人。少年と言える若者もやって来る。
パべル「181番テント?」
「どうせ只だ」酒を差し出すバチョー。
「まだ昼間なので」
「バチョーだ」
「パべルです」
「以前の所属は?」
「キエフの駐車場で働いてて」
「違う アフガニスタンの話だ」
「いや 行ってません 軍人じゃない」
「人手不足か」
「シャワーはあそこだ こいつらは地面を掘る あっちの奴らは村の住民を避難させる ジャネク 卵の駕籠を いいからよこせ こいつは俺の仲間だ ちょっかい出すな 鉛の板だ たまの上につけろ 割れ目ができるまで待つか?今すぐつけろ 服の上からだ 馬鹿だな 狩りの経験は?」
「ない」
「じゃここに来て幸運だ お前と俺とテントにいたガロとで動物駆除をする」
「動物駆除?」
「汚染された動物を始末するんだ ほとんどが元ペットだ 人を見て駆け寄ってくる そこを撃つ 死体を車で運びコンクリートで埋める そして酒を飲む ウォッカは飲み放題 報奨金は1000ルーブルだ 銃はこっち」

図書館で調べ物をするホミュック。
「閲覧許可が必要な資料を読みたい 中央委員会の関係者よ」
「お願い Comrade」資料のリストを手渡す。
「これならいい」
「どうも同志Thank You,Comrade」

上空から撒かれる薬。道に撒かれる薬。潰される畑。DVDカバーにも登場する防護服を付けた男。

「設置完了」
「映像を 信号は?」
「受信しました」
シチェルビナ「これが月に行ったのかTo think that's what we put on the moon. 」
レガソフ「Not that one. 現物じゃない」
シチェルビナ「I know not that one. わかってる」
タラカノフ「これは予備の物だ ニナとカチャ用に二つ作ろうThis robot was in storage. They can build two more; that should cover Nina and Katya. 」
シチェルビナ「 Masha? マーシャは?」
タラカノフ「The Central Committee have informed me that they may have found something that could work up there. On the outside. 中央委員会によると使えるものが海外にあるらしい」
シチェルビナ「 American?米国製か? 」
タラカノフ「 Course not. German police robot. The West Germans, so as you can imagine, that wasn't an easy conversation to have.まさか ドイツのロボットだ だが西ドイツの物だから交渉に苦労したはず」
シチェルビナ「ヴァレリー それは笑顔か?」

呆けたようなディアトロフ。
ホミュック「回復を?ディアトロフさん」
ディアトロフ「帰ってくれ」
「教えて下さい アキーモフがAZ5を押した時あなたは命令を…」
「命令?トプトゥーノフが報告しアキーモフが押した あの無能どもの唯一の英断だ」
「炉の停止を試みた後に爆発しましたか?」
「炉は本当に爆発したのか?」
写真をディアトロフの前に置くホミュック
「国が所蔵していた論文です 1976年に書かれてます 極限条件下のRBMK炉について 著者名は省かれ2頁分が省かれてます 彼等はミスをした 目次が残っていたんです 除かれた内容は正のボイド反応度係数とAZ5のこと 何かご存知で?」
「なぜ私に聞くんだ?」
「現場を知る人だから」
「全て私の落ち度だと言いたいんだな?」
ホミュック「私は非難でなく真相究明がしたい 協力すればあなたは処断を免れ得る いかがですか?I'm not here to blame you. I'm here to find out what happened. And whether you realize it or not, I'm your best choice to avoid a bullet. Can you help me or not? 」
ディアトロフ「ボイド反応度係数とAZには何の関係もない 以上だ 帰れI have no idea what would have gone here. Void coefficients have nothing to do with A Zed five. There, now you can go. 」
「関心を持ってYou're not even curious? 」
「何のために?問答で真実をつかめるとでも?真実などない 上の連中は嘘しか言わんし私は処断されるWhat for? You think the right question will get you the truth? There is no truth. Ask the bosses whatever you want, you'll get the lie. And I will get the bullet. 」
部屋を出るホミュック。

バチョーたちが車に乗ってやってくる。銃を持つパヴェル。銃弾を入れるのが明らかに不慣れそうだ。
バチョー「ルールは二つだけだ 一つ目 俺に銃口を向けるな 簡単だろ?あのクソ野郎には向けても構わん 2つ目 撃った動物が死なない時は死ぬまで撃ち続けろ 苦しませるな でないとお前を殺す 本気だぞ 俺は大勢を殺した I have only two rules. One: Don't point this gun at me. That's easy, right? You can point it at this piece of shit, I don't give a fuck -- never me. Two: If you hit an animal and it doesn't die, keep shooting until it does. Don't let them suffer. Or I'll kill you, understand? I mean it. I've killed a lot of people. 」
頷くパヴェル。

バチョー「撃ち始めると動物は屋内に逃げる だから一軒ずつ回る いいな?よし」
口笛を吹くと犬が聞きつけてやってくる。出て来る犬を次々と撃つバチョー。
バチョー「仕事しろ 一軒ずつだ」

犬を狙うが撃てない。
パヴェル「行けって!」
撃つ。ゆっくり近づくパヴェル。まだ犬は生きていてパヴェルを見つめている。遠くからバチョーが撃つ。
険しい表情のバチョーが近づく。「苦しめるな」
「すみません」
「それを車に運べ」

食べられないパヴェル。
バチョー「食べないのか?飲め もう一口」
「あのな 皆そうなるもんだ 初めて人を殺すとな お前の場合は犬だったが恥じることはない ガロ お前の初めては?俺はアフガニスタンだった 家の中を移動してて突然男が現れたから腹を撃った これが本当の戦争話だ 映画と違ってクソみたいな話だ 男が出てきてバン!ドバーだ 俺はびびって一日撃てなくなった “これで終わりだ”と思った ”一度人を殺せばもう前の自分には戻れない”とな でも翌朝の俺も俺のままだった そして気づいた しらなかっただけであれも自分だとLook. This happens to everyone the first time. Normally when you kill a man. But for you a dog. So what? There's no shame in it. You remember your first time, Garo? My first time, Afghanistan. We were moving through a house and... suddenly a man was there and I shot him in the stomach. Yeah, that's a real war story. There are never any good stories like in movies - they're shit. A man was there, boom... stomach. I was so scared I didn't pull the trigger again for the rest of the day. I thought, well, that's it, Bacho. You put a bullet in someone. You're not you anymore. You'll never be you again. But then you wake up the next morning and you're still you. And you realize: that was you all along. You just didn't know.」
ガロ「”全人類の幸福”」
バチョー「何だ?」
ガロ「”全人類の幸福のために”」
ガロはスローガンを読んだのだ。
バチョー「俺は毎日幸福だぜ よし 仕事再開だ 来い」

1986年9月。ドイツからロボットが届く。
「慎重にな」
屋上ではしゅうしゅうと黒鉛が煙を出す。

シチェルビナ「さすがだな」
しかし画面が映らない。
「本体の問題です 壊れました」
唖然とするタラカノフ。部屋を出ていくシチェルビナ。

シチェルビナ「連中に聞こえるように言ってるんだ あの馬鹿どものせいで全部台無しだOF COURSE I know they're listening! I want them to hear, I want them to hear it all! Do you know what we're doing here? Tell those idiots what they have done! 」
叩く。
シチェルビナ「知ったことか! I DON'T GIVE A FUCK! 」
叩く。外で聞いているレガソフ。
シチェルビナ「ルイコフに言え リガチョフにも ゴルバチョフのクソ野郎にもだTell them, go tell them! Ryzhkov! Go tell Ligachyov! Tell fucking Gorbachev! Tell them! 」
とうとう電話を壊してしまうシチェルビナ。引きずりながら部屋から出てくる。
シチェルビナ「連邦としては地球規模の核災害は起きてないという立場だ だからドイツに“放射線量は最高で2000レントゲン”と 建前の数値を伝えた うまくいくわけないThe official position of the State is that a global nuclear catastrophe is not possible in the Soviet Union. They told the Germans that the highest detected level of radiation was 2,000 roentgen. They gave them the propaganda number. That robot was never going to work. 」
近くにいた兵士に。
「We need a new phone. 新しい電話を」

シチェルビナ「黒鉛を放置したら?」
レガソフ「だめです 除去しないと覆いを作れません 12000レントゲンが出続ける 広島の原爆の約2倍もの線量が1時間ごとに」
「分かってる 鉛を使うのは?溶かして屋根の上からかけるんだ」
タラカノフ「鉛はほぼ使い果たしてる」
「他の建屋に機器を覆ってる鉛がある 兵士がはぎ取って使ってる」
「本気か?そして煮えたぎる鉛をヘリで運ぶのか?どれほどの重さだと?銃で黒鉛を撃つのはどうだ?大口径の弾の爆発力で黒鉛を下に落とす」
「むき出しの炉心に向かって撃つのか?いいとも また屋根に火をつけよう 消すのは簡単だからな 無意味な議論だ 別のロボットが要る 放射線に耐えるやつが」
「ないと言われた」
「米国は?」
「そんな技術を我々に渡すと思うか?それに中央委員会が頭を下げるわけがない ロボットはない」
レガソフ「生体ロボットを」
シチェルビナ「何だって?」
「生体ロボットを使いましょう 人ですMan」

バチョーの言葉通り動物撃ちに慣れていくパヴェル。
バチョー「多いな」
ガロ「餌はどこから?」
「まず鳥を食いその後は共食いさ」

あどけない動物のショット。家の2階に子供のいる母犬がいた。
バチョー「行け」
その場を去るパヴェル。建物を出る時銃声が響く。

動物たちの死体が埋められる。

1986年10月。
タラカノフ「連邦の同志たちは事故の収束を望んでいる 重大な任務を諸君に託す 現場は過酷な環境だ 作業時間は90秒に限られる 私の指示をよく聞きその通りに実行しろ それが自分と仲間の安全に繋がる まず3号炉建屋に上り階段を上がれ 屋根にはすぐに出るな 屋根に出る手前で一旦立ち止まり作業のために息を整えろ 屋根に出たら黒鉛を除去する 中には40~50キロの重い塊もある ここから投げ落とせ こうやって屋根に走り出て左に進んで作業区域に入る つまずいたり屋根の穴から落ちないように 迅速かつ注意深く作業しろ 任務の内容を理解したか?諸君の人生で最も重要な90秒だ 手順をしっかり記憶し遂行しろ」

「シャベルを戻し下で除染を受けろ 屋根では塊を投げ落とせ 下を見るな いいな?」
じりじりと鳴る線量計の音。

石につまずいた男の靴が破れる。

手袋を落とした少女に差し出すリュドミラ「落としたわよ」苦しみ出す。

プリピャチ 1986年12月。
シチェルビナ「悪いな ここなら盗聴を回避できる」
レガソフ「ディアトロフと所長と技師長が裁判にかけられる 我々3人も専門家として証言に立つことになる その前にレガソフがウィーンに行かされる ウィーンには」
ホミュック「国際原子力機関の本部がある ウィーンで何を?」
レガソフ「事故の報告だ」
ホミュック「じゃ理解してないと 事故の経緯を1分ごとにまとめた 秒ごとの所もある 現場の判断と操作が全てわかるわ」
シチェルビナ「それで職員に非は?」
ホミュック「あるわ きわめて無能かつ無謀で安全規則に違反してた でも爆発の原因は別かも」
シチェルビナ「どういうことだ」
ホミュック「データを分析したわ トプトゥーノフの言う通りよ 停止を試みた後に炉は爆発したの この論文に答えがあると思う でも2頁分除かれてる 読んだことが?」
レガソフ「予想もつかなかった あの事が爆発を起こし得るなんて」
ホミュック「あのことって?」
レガソフ「1975年にレニングラード原発で圧力管が破損した 職員がAZ5を押したが出力は下がらず一時的に上がったんだ」
ホミュック「なぜなの?」
レガソフ「この論文を書いたヴォルコフも同じ疑問を抱いた RBMK炉は低出力では不安定になり反応度の振れ幅が大きい 通常なら制御棒がそれを抑える」
「チェルノブイリでは実験中出力が落ちすぎて上げるために制御棒を抜いた」
レガソフ「ヴォルコフの意見はこうだ ホウ素でできた制御棒を完全に引き抜くと戻した時まず炉心に入るのはホウ素じゃない 黒鉛なんだ 制御棒の先端の黒鉛が入り水が排除される だから反応度は上がらず劇的に上昇する」
シチェルビナ「なぜ職員はAZ5を押した?」
ホミュック「知らなかったから」
レガソフ「ヴォルコフは10年前に政府に警告した だがソビエトの原子力技術は“至高”でなければならない」
シチェルビナ「だからKGBはその欠陥を秘密にした」
レガソフ「爆発がこの欠陥のせいとは思わなかった ありえないからだ 職員が原子炉を極限状態に置かない限りはねWhen I saw the reactor blown open, I still didn't think it could be this flaw in the A Zed five. Because the flaw will not lead to an explosion unless the operators have pushed the reactor to the edge of disaster. 」
シチェルビナ「職員の非だSo it is their fault. 」
「 ええYes. 」
ホミュック「でもそれだけじゃない But not only their fault」
レガソフ「そうだNo.」
ホミュック「それをウィーンで報告するIs that what you're gonna say in Vienna? 」
シチェルビナ「その考えは甘すぎるYou can't possibly be that naive. 」
ホミュック「今16基のRBMK炉が連邦内で稼働してる 欠陥を治さなきゃ そのためには公表して政府を動かすしかない」
シチェルビナ「最も体面を重んじる国に恥をかかせたらどうなると?KGBと取引しよう“欠陥の公表はしないから炉を直させろ“と」
ホミュック「KGBと取引?私より甘いわね」
シチェルビナ「君の家族や友人が狙われるぞ」
ホミュック「世界に知らせるチャンスよ もし私だったら…」
「でも君じゃない 崇高な信念を持ちながら諦めた者たちは多い 自分と最愛の者達の命の前では道徳的な信念など何の意味もない 殺されないためなら人はなんでもする」
「イグナテンコを知ってる?」
「いいや」
「彼は消防士だった 事故の2週間後に死亡した 彼の妻を訪ねたの 彼女が生んだ女の子は4時間で死んだわ 母親の代わりに放射線を吸収したの 赤ん坊がね この国では子供が母親を救って死ぬ 何が取引よ 命など惜しくない 真実を語らなきゃ」

タラカノフ「おめでとう 諸君は3828名の最後を締めくくった よくやってくれた 諸君の健康と長寿を祈る 報奨金は1人800ルーブルだ 連邦に忠誠を」

炉の上に赤い国旗が立てられる。

隔離されているリュドミラ。エンドクレジット。

ジャケットタイトルに登場した名も無き汚染除去人のショット。まるでホラーかSF映画にしか思えない。

炉屋上に残った黒鉛をどうしよう三者会談。この時は「放射線量が半端ないので絶対に無人対応で」と意見が一致したものの、連邦が線量で見栄を張ったせいで取り寄せたドイツ製の月面車はあっという間に壊れるというギャグ漫画のような一コマが登場。

報奨金につられて一度も戦争を体験したことのない地方出身の若者がバスでやってくる。仕事の危険性について詳しくは知らされていない。汚染動物(元は住民のペット)を殺す仕事をこなす度に無垢な若者の表情に疲れが見え何の感情も抱かなくなってゆく。

原題はThe Happiness of All Mankind=全人類の幸福のために。連邦のスローガン。汚染動物を殺して回る人、上空から森に薬を散布する人、畑を潰す人、道に水を撒く人。炉屋上の黒鉛を投げ落とす人。全ての人がこのスローガン通り命と引き換えに働く。

10年前の学者の警告を無視して欠陥のある原子炉を使い続け原発事故を招いたソ連。1月の医師の警告を無視して新型コロナのパンデミックを招いた中国。保身と嘘でプライドと権威を守ろうとする大国の醜態は、残念ながら歴史上何度も繰り返される。

総勢3828名による黒鉛投下ミッション終了を記念して立てられる赤い旗。機械さえ瞬時に壊れる高い放射線量下で90秒作業をした者への対価は破格の報奨金と「諸君の健康と長寿を祈る」という皮肉な言葉。

第5話 真実 Vichnaya Pamyat[
1987年7月、シチェルビナ、ホミュック、レガソフは、法廷で事故の当日に発電所内で起きた一部始終を調査した結果を、法廷で証言する。レガソフの証言中、シチェルビナは激しく咳き込み、自身の体調の急激な悪化を実感する。今回の証言が前回の証言内容と異なることを指摘されたレガソフは、前回は当局やKGBを恐れて嘘の証言をしたが、隠ぺいの代償の大きさを分かってほしいと真実を訴えると、身柄を拘束されてしまう。

事件の起きる前のプリピャチ。1986年4月25日爆発の12時間前。
公園で子供は遊びプールで泳ぐ人も。子供連れを眺めるリュドミラ。窓の向こうを通り過ぎるディアトロフ。

フォーミン「おそらく所長は昇進する  もしこの失敗続きの安全性実験がI無事に完了したらな もしかしたらモスクワの方で要職に就くかも  hear they might promote Bryukhanov. This little problem we have with the safety test, if it's completed successfully, yes, I think promotion is very likely. Who knows, maybe Moscow. Naturally they'll put me in charge once he's gone. そうなれば私が所長だ 技師長の公認を選ばないと シトニコフがいいかな」ディアトロフ「ぜひ私を技師長に」
「考えておく」
所長が入って来る。
フォーミン「順調です ディアトロフ副技師長が4号炉を1600メガワットまで落としました さらに出力を下げる許可を」
ブリュカノフ「延期だ」
「何か…」
ブリュカノフ「“問題があったか”と聞くなよ 顔を見ればわかるだろ 3年前から終わらせたい実験なのに キエフの電力局が“あと10時間は出力を下げるな“と」
ディアトロフ「命令される筋合いは」
ブリュカノフ「電力局からの命令じゃない 月末だから生産ノルマの達成のためにどこの工場も残業してる お偉方から圧力がかかってるんだ 実験は中止するか?」
フォーミン「その必要はない 10時間後に行いましょう」
ブリュカノフ「50%の出力で運転して問題は?」
フォーミン「何も…」
ブリュカノフ「お前に聞いてない」
ディアトロフ「大丈夫です 1600で運転を続け10時間後に実験を始めましょう 実験は私が監督し必ず完了させます」
ブリュカノフ「全部終わったら電話をくれ」

ブリュカノフの席に立ってみるフォーミン。
タイトル。

モスクワ1987年3月。新聞を買っていたレガソフはKGB議長に呼び止められる。車の中に入るレガソフ。
「How do you feel?身体はどうだ?昨日医者に見せただろ?」
「ご存知では?You don't Know?」
「ウィーンの新聞だ ドイツ語は?“ソ連の科学者やっと真実を語る”とある 君はウィーンで素晴らしい印象を与えたようだ 上出来だったぞ」
「嘘をつくのが?」
「演出がだよ レガソフ君 事故はもともと職員のミスによるもので西側諸国もそう納得した 君のおかげだ その働きに報いよう」
「“ソビエト連邦英雄 クルチャトフ研究所の所長に昇進“ 恐れおおい」
「そのように感じる必要はない だが褒賞の前にまずは裁判だ」
「何を証言すべきかは分かっています あなたは約束した 炉の欠陥は直すと だがいまだに直す気配すらない」
「裁判が先だFirst,Trail.それさえ終われば誰が悪者で誰が英雄か真実が明らかに 原子炉の件はそれからだ」
車を出るレガソフ。

レガソフは家で髪の毛が抜けることに気づく。

レガソフ「列車で戻った?」
ホミュック「ええ そうよ ウィーンの報告のことを咎めに来たんじゃない 私だって世の中の仕組みはわかる」
「じゃ何しに来たんだ?」
「私は石頭だから説得しに来たの」
「チャルコーフは“裁判の後で炉を直す”と」
「信じてるの?連邦が進んで直すわけない 欠陥があると認めれば嘘がばれるもの 裁判で真実を語って “陪審“を説得するの」
「見せしめの裁判だ 判決は決まってる」
「そういうことじゃない 中央委員会は専門家を招いて裁判を傍聴させる クルチャトフ研究所や電力電化省の科学者たちよ 彼らはあなたの証言を聞き正しく理解する“陪審“なの 爆発の原因をあなたが説明する時彼等は事故の真相を知る」
「そして?」
「改良を求めるわ RBMK炉だけでなく業界全体のね 私達は火つけ役よ」
「論文を書いたヴォルコフはどうなったと?いとも簡単に研究所を解雇されたよ 知りすぎた罪でね 政府が裁判を見せるために選んだ科学者が私の証言を聞いて行動を起こすと?政府に反抗した私に触発されて?」
「そうよ」
「なぜ?」
「ヴァレリー・レガソフは特別だから 私が真実を訴えても世の中は動かない」
レガソフ「私は銃殺されるよThey will shoot me, Khomyuk. 」
ホミュック「真相を探るために私は大勢の人に話を聞いた 一言一句もらさず書き留めたわ これだけね 右は存命よ 左は皆亡くなった 救助や消火活動や看護をした人達よ 彼等は迷わず取るべき行動を取ったYou told me to find out what happened. I spoke to dozens of people. Every word they said, I wrote down. Forty of these books: these are the ones who are still alive, these are the ones who are dead. They died rescuing each other: putting out fires, tending to the wounded. They didn't hesitate, they didn't waver, they simply did what had to be done. 」
「私もだ 私は壊れた原子炉を自ら確認に行った もう命を捧げてる 十分では? So have I. So have I. I went willingly to an open reactor. So I've already given my life. Isn't that enough? 」
「いいえ 残念だけどNo, I'm sorry, but it is not. 」

シチェルビナと車に乗るレガソフ。
検察官ステパシン「共産党中央委員会と最高会議幹部会の決定により人民のための裁判を執り行う 連邦の目標は唯一かつ不変である レーニン主義の方針を着実に守ることは党員として生きる上で重要である それでは開廷する 裁判長はカドニコフ判事」

シチェルビナ「事故の発端は安全性のための実験でした なぜ実験の必要があったのか?立ち上げ直後でもなかったのに 4号炉が起動したのは1983年の12月20日です その11日後の大みそかに所長のブリュハーノフはこの書類に署名しました 4号炉の建設が完了したことを証明する書類です 原子炉を年内に完成させた功績でブリュハーノフは“社会主義労働英雄”に フォーミンは労働献身記章を ディアトロフは赤旗勲章を受けました しかし実は不備があった この書類は嘘だったのです 本来は署名の前に安全性実験を全て完了せねばなりません だが一つ残っていた 原子炉は炉心で熱を発生させます これらのポンプは絶えず炉心に冷却水を送っている 熱は水を蒸気に変え蒸気がタービンを回して電力を生み出す だがもし原発が電源を失ったら?原発を動かす電力が断たれたら?停電や機器の故障や他国からの攻撃などで電源を失えばポンプは炉心に水を送れません 炉心の温度は上がって燃料は溶融し核災害が起きます 予備として非常用のディーゼル発電機が3台  だがこれだけでは不充分です ブリュハーノフは知っていました 非常用発電機が起動しポンプに電力を送るまで約1分かかるのです それでは手遅れになる そこで今回の実験です 仮説としては原発が停電した時タービンは少しの間慣性で回り続けるその回転で発生した電力をポンプに送ったら?タービンの静止までに発生する電力で非常用発電機が動くまでもたせられないか?」せき込むシチェルビナ。
シチェルビナ「仮説の検証は停電時を模した環境で行います 炉の出力を700メガワットに下げてタービンを切る 慣性回転による発電量を測り ポンプへの給電に十分か調べます Science is Strong.科学は強い しかし実験はそれを行う者の能力次第 最初の実験は失敗しました 2度目も失敗しました 3度めも失敗しました そして4度めが1986年4月26日でした」
下げられる模型。
ホミュック「本来実験は事故が起きる10時間前4月25日に行われる予定でした 午後2時までに炉の出力はふだんの半分に下げられ1600メガワットで安定してました 700メガワットまで下げたら実験開始です しかしここで電話が鳴りました キエフの電力局がもう電力を減らすなと言ってきたのです “実験を10時間延期しろ”と ここから惨劇の連鎖は始まりました この時実験は中止すべきだったのにこの3人はそうしなかった 実験の延期は2つの問題を生みました “科学的な問題“と“人的な問題“です 後者から説明します 午前0時職員の交代の時間です」

トプトゥーノフが呼ばれる「レオニード アキーモフが呼んでる 実験が何とか言ってた」
アキーモフ「日勤組が実験すると言ってたろ?タービンの実験だよ 夜勤組がやることに」
トプトゥーノフ「でも僕らは何も知らない」
「700に落として保てば後はタービン係がやる ディアトロフが監督する」
「初めての事を彼の前で?」
「心配するな 一緒にやる」
「線で消された項目は?」
「指示書にある項目の多くが線で消されているんだが 確かか?そうか どうも “消された手順に従え”と」
「ならなぜ消した?」
ディアトロフ「全員手順は覚えたか?バカは私の指示に従ってればいい」
「炉の運転中にタービンを切るなんて…」
「700なんて初めてだ」
「一緒にやるから」
「700に落とします」

ホミュック「たとえばユーリ・ガガーリンが宇宙飛行の任務の事を発射台で初めて知らされたら?初めて見る指示書を渡され指示のいくつかが線で消してあったら?4号炉の制御室はそういう状態でした 彼等は予告もなしに未経験の事をやらされた レオニード・トプトゥーノフは原子炉を制御し安定させる役目でした まだ25才で技師の仕事を始めて4か月でした これが“人的な問題“です その頃炉心の原子と原子の間では危険な“毒“が生成されていました 時刻は0時28分です」

「あちらに原子力関係の専門家がいらしてますが科学者でなくても事故は理解できます 基本的に炉の中で起きることは次のどちらかです 発電につながる“反応度“が挙がるかまたは下がるか それだけです その均衡を保つのが技師の仕事です まずウラン燃料 ウランが核分裂することで反応度は上がります でも均衡を取らないといけないのでホウ素の制御棒 これが反応度を下げます いわば車のブレーキ ただ3つ目の要素もある 熱でボイドができます チェルノブイリのRBHKには正のボイド反応度係数というものがある 炉内の蒸気の泡が増えれば増えるほど反応度が上がる するとさらに熱が出て手に負えない悪循環に陥るのです しかしそれに反して幸いにもこれがある 負の温度係数というものです 燃料の温度が上昇すると反応度が下がるのです 制御棒と水は下げる 蒸気は反応度を上げ温度上昇は下げます これが煙や炎を出さずに大量の電力を生むからくりです 実に見事なものです ウランが核分裂する時キセノンという物質が生じます キセノンは反応度を下げる 先ほど博士が言った“毒“です 実験の延期により4号炉は50%の出力で10時間運転された 炉心を毒していました 均衡は崩れ始めた 午前0時28分 炉の電力は落ち始める寸前です なぜそうなるのかわからなくても無理はない 皆さんは原発職員ではないのです しかしながら実は実際の原発職員もわかっていなかった」

アキーモフ「ゆっくりだぞ 下げて よし その調子だ」
ディアトロフ「まだなのか」
アキーモフ「手順に従ってます」
 「のろまめ」
「気にするな 順調だ」
「キルシェンバウム 済んだら呼べ」
「何も操作してない 触ってもいない」
700より数値が下がり続ける。

廊下でタバコをすうディアトロフ。アキーモフが部屋を飛び出す。

「手順通りですが多分毒が」
ディアトロフ「正しくやって毒作用が出るもんか 早く上げろ!」
アキーモフ「LACを切れば上がる可能性が」
ディアトロフ「やれ」
トプトゥーノフ「はい LACをオフに」
数値の低下は下がらない。
ディアトロフ「あれを見ろ なぜだ お前らのせいで停止寸前だ また“手順通り”というんだろ?」
アキーモフ「こんな結果になりすみません」
「完全停止を 毒が消えるまで24時間待たないと」
「50%だった 規則に50%はない」
「それは支離滅裂です 安全ではありません」
「私の意見に反対ならもうここで働かなくていい クルスクでもイグナリナでもレニングラードでもどこの原発でも二度と働けなくしてやる 出力を上げろ」
「命令の記録を」書類をはたき落とすディアトロフ。
「一緒に」

裁判でディアトロフ「私はいなかった」
レガソフ「何だって」
「私は制御室にいなかった」
「ではどこに?」
ステパシン「同志レガソフ 質問は検察官である私がします あなたはどこにいた?」
「トイレです」
ステパシン「トイレだと?制御室にいた職員達の証言は一致している “彼の命令は間違ってた でも首になりたくなかった”」
立ち上がるシチェルビナ。

外にいるシチェルビナの所に近づいていくレガソフ。
シチェルビナ「この街の歴史を知ってるか?Do you know anything about this town, Chernobyl?」
レガソフ「よくは知りませんNot really, no. 」
シチェルビナ「ユダヤ人とポーランド人がいた 前者は虐殺され後者は追い出され残ったものはナチスが皆殺しに だが戦争の後新たな人々が移り住んだ 血塗られた大地と知っていたが構わなかった “自分たちはユダヤ人やポーランド人とは違う 自分たちは大丈夫“ そしてこれだThey were mostly Jews and Poles. The Jews were killed in pogroms and Stalin forced the Poles out. Then the Nazis came, killed whoever was left. After the war, people came to live here anyway. They knew the ground under their feet was soaked in blood but they didn't care. Dead Jews, dead Poles, but not them. No one ever thinks it's going to happen to them. And here we are. 」
レガソフに血の付いたハンカチを見せるシチェルビナ。

レガソフ「あとどのくらい?」
シチェルビナ「1年だそうだ 通称で“長い病“というらしいが大して長くない 君の言葉は覚えてた でも時が経つにつれ“私は大丈夫“と思った 無益な時を過ごした」
「無益?Nothing?」
「君に初めて電話した時私は悠長に構えてた 私は政府を信じてない だが事故処理の責任者に任命された時“深刻じゃない“と言われて信じた なぜか分かるか?Do you remember that morning when I first called you? How unconcerned I was? I don't believe much that comes out of the Kremlin, but they told me they were putting me in charge of the cleanup. When they said it wasn't serious, I believed them. Do you know why? 」
レガソフ「あなたを任命したからBecause they put you in charge. 」
「そうだ 私は捨て石にされる程度の男だったのだ 重要人物になろうとしたがただの脇役に過ぎなかったI'm an inconsequential man, Valery. That's all I've ever been. I hoped that one day I would matter but I didn't. I just stood next to people who did. 」
「私の代わりは他の科学者にも務まります あなたは違う あなたは全てを揃えてくれた 人員に資材に月面車までね 他の人には不可能だ あなたの言葉を政府は聴いた 大臣やら副大臣やらの大勢な従順な愚者たちの仲から偶然にも唯一の適任者が選ばれた ボリスあなたこそが一番の重要人物だったThere are other scientists like me. Any one of them could have done what I did. But you... everything we asked for, everything we needed; men, material, lunar rovers. Who else could have done these things? They heard me, but they listened to you. Of all the ministers and all the deputies. Entire congregation of obedient fools, they mistakenly sent the one good man. For God's sakes Boris, you were the one who mattered the most. 」
青虫がシチェルビナの手に乗っかる。
「美しいな」

「時刻は0時38分 炉は停止寸前 職員は惨劇に向って突き進んでいます 後戻りはできません 犀は投げられたのです 30メガワットではキセノンは蓄積される一方です 炉は毒されています さらに悪いことに炉の温度が低下し充分な蒸気が作れません ここから安全に出力を下げるには24時間かけてゆっくりやるしかない しかし“すぐやれ”と言われアキーモフたちにできることは一つです 彼等は制御棒を何十本も抜き始めた 3分の2まで抜いても出力が上がらないので完全に引き抜きました 制御棒は全部で211本ありましたがアキーモフたちは205本を引き抜いた 制御棒は”車のブレーキ”と言いましたね 211本の制御棒のうち今や炉内に残るのは6本のみ もはや反応度を下げる負の温度係数はない 200メガワットまでしか出力は上がりません 制御棒は抜かれ緊急システムも解除され反応度を抑えているのは水とキセノンのみ 実験開始の数分前です」

音が聞こえる。数値は204のまま。
アキーモフ「もう上がりません 200メガワットが限界です 指示書には700と 今のタービンの回転では弱すぎます」
ディアトロフ「十分だと言ってる 早くやれ」
ブザーが鳴る。
アキーモフ「中止すべきだ」
「15分でやれ」

レガソフ「むしろ15日必要でした 彼等にはなすすべがない 実験は台無しで結果は無意味 だが彼はただ実験完了を報告したかったのです 午前1時22分 機械技師のユフチェンコは事務室にいました ペレぼずちぇんこは炉の1000トンの蓋のはるか上にいました 彼等は誰も実験の事を聞いていません 午前1時22分 有効な制御棒の数が不足しているため運転を停止すべきと書かれていました」

ディアトロフ「実験だから仕方がない もうすぐだ あと数分で完了する」
「正しくやった」アキーモフがトプトゥーノフに。

「炉はいわばパチンコのゴムを最大限に引いた ゴムは鼻垂れた 炉内に水が回らなくなりました 冷却水と制御棒がなくなれば一瞬のうちに反応度は上昇します 炉心内に残っていた水がたちまち蒸気になります でも新しい水は来ない 蒸気は反応度を上げる 蒸気ができてさらに反応度が上がる 出力が上がります もう止まりません 午前1時23分」

トプトゥーノフ「サージだ!サシャ」
ディアトロフ「何をした!」

眼をこするレガソフ。
「どの原子炉の制御室にも1つのボタンがあります 炉を緊急停止させるボタンです 連邦のげ発では“AZ5”と呼ばれます AZ5を押すと全ての制御棒が炉に入り核反応が止まるのです しかし…」
ディアトロフ「さっさと言え 嘘をな 彼は“後戻りできない“と言ってただろ 何か知ってる あの女もだ しってるぞレガソフ お前は嘘つきだ」
ステパシン「被告人は拘置所に戻します」
レガソフ「話すことがある」
ステパシン「必要ない 証言は終わった 裁判官」
カドニコフ「これにて閉廷します」
シチェルビナ「話をさせてやれ」立ち上がる。
「話をさせてやれ」座る。

レガソフ「ディアトロフは規則を破り炉を極限状態に陥らせました AZ5を押しさえすれば全て止まると彼は信じていた しかしこの状態の炉にそれは効かない 致命的な欠陥があったのです 午前1時23分アキーモフがAZ5を押します 引き抜かれた制御棒が炉に戻されます ホウ素の制御棒は反応度を下げますが先端には反応度を上げる黒鉛が使われている
Dyatlov broke every rule we have. He pushed a reactor to the brink of destruction. He did these things believing there was a failsafe: AZ-5, a simple button to shut it all down. But in the circumstances he created, there wasn't. The shutdown system had a fatal flaw. At 1:23:40, Akimov engages AZ-5. The fully-withdrawn control rods begin moving back into the reactor. These rods are made of boron - which reduces reactivity - but not their tips. The tips are made of graphite, which accelerates reactivity. 」
カドニコフ「Why?なぜです? 」
「なぜか?他国のような格納容器が連邦にはないのと同じ理由です 燃料に濃縮ウランでなく天然ウランを使うことや軽水冷却式の黒鉛減速炉を世界で唯一作っていることもやはり同じ理由ですWhy? For the same reason our reactors do not have containment buildings around them, like those in the West. For the same reason we don't use properly enriched fuel in our cores. For the same reason we are the only nation that builds water-cooled, graphite-moderated reactors with a positive void coefficient. 」
レガソフ一呼吸おいて
「It's cheaper. 安価だから」
「制御棒の先端の黒鉛が炉心に入ると炉心の反応度が急激に跳ね上がります 残っていた水野全てが一瞬で蒸気になり膨張によって圧力管が壊れます すると制御棒はそこで引っかかる 黒鉛は炉心に留まり延々と核反応を促進します 4号炉は今や核爆弾になったのです 午前1時23分 ペレポズチェンコはあり得ない光景を目にします 圧力管の350キロの蓋が次々に跳ね上がっています 彼は制御室に走ります しかしもう誰にも止められません 蒸気で圧力管がさらに破損 出力は一体どこまで上がったのか 3号炉は3200メガワットで運転する それが33000メガワット以上に 高まる圧力にもはや炉は絶えられない そしてついに爆発した 炉の蓋が吹っ飛び酸素が流れ込みます 酸素と水素と熱された黒鉛が化合し惨劇の連鎖は整いました」
吹っ飛ぶ黒鉛。激しく天に向かって燃え上がる炎。口は動くが聴こえない

「AZ5が起爆ボタンになることは誰も知りませんでした なぜなら隠されていたから」
「ウィーンで話した内容と食い違っていますよ」
「あれは嘘でした 私は世界に嘘をついた 大勢がこの秘密を隠していました KGBや中央委員会の命令に従ったのです 同じ欠陥を抱えた原子炉が連邦に16基ありそのうち3基はチェルノブイリで稼働中です」
カドニコフ「レガソフ博士 事故の原因が連邦にあると主張するつもりならそれは“危ない橋”ですよProfessor Legasov, if you mean to suggest the Soviet State is somehow responsible for what happened, then I must warn you, you are treading on dangerous ground. 」
レガソフ「危ない橋を渡っているのは連邦です 秘密と嘘ばかり それが我々の姿です 真実が牙をむけば数々の嘘で隠し忘れようとする でも真実は消えない 嘘をつくたびに真実へのつけがたまる つけは必ず払わされる RBMK炉の爆発を招いた本当の原因は“嘘“だI've already trod on dangerous ground. We're on dangerous ground right now, because of our secrets and our lies. They are practically what define us. When the truth offends, we lie and lie until we can no longer remember it is even there, but it is still there. Every lie we tell incurs a debt to the truth. Sooner or later, that debt is paid. That is how an RBMK reactor core explodes. Lies. 」

連れてゆかれドアを閉められるレガソフ。頭を抱える。外にはぱちもんのミッキーマウス。ドアが開く。

KGB議長「ヴァレリー・レガソフ 父親はアレクセイ…レガソフ 統制委員会議長 その仕事内容を?昔は共産党青年組織に属していた?クルチャトフ研究所の共産党書記を津おtめユダヤ人科学者の昇進を制限した」
「そうです」
「政府の機嫌を取るためにね 君も我々と同類だ 君の運命は私の手中だ だがまずこれだけは伝えておく 君は勇敢でも英雄でもない 死にゆく男が自制心を失っただけ」
レガソフ「自分が何者で何をしたかはわかっている あれが嘘なら銃殺刑だが私が言ったのは真実だIn a just world, I'd be shot for my lies, but not for this, not for the truth. 」
KGB議長「全く科学者は馬鹿げた理屈に拘る その頭に銃弾を食らう時理由は必要か?Scientists... and your idiot obsessions with reasons. When the bullet hits your skull, what will it matter why? 」
KGB議長「君を撃ったりはしない 世界的に有名になった君を殺せば恥になる 殺す必要もない 君の証言は連邦に認められず報道も一切されない なかったことになる 君は残り少ない寿命を全うする だが科学者としてではない 職と肩書はそのまま残るが仕事も権力もなく友人もいない 君と話す者も君の話を聞く者もいない 君より能力の劣る者が君の代わりに評価される 君の功績は奪われる それを見届けて死ぬがいいNo one's getting shot, Legasov. The whole world saw you in Vienna; it would be embarrassing to kill you now. And for what? Your testimony today will not be accepted by the state. It will not be disseminated in the press. It never happened. No. You will live, however long you have. But not as a scientist, not anymore. You'll keep your... title, your office. No duties, no authority. No friends. No one will talk to you. No one will listen to you. Other men, lesser men... will receive credit for the things you have done. Your legacy is now their legacy. You'll live long enough to see that. 」
KGB議長「シチェルビナは君に協力を?」
レガソフ「いいえ 彼は何も知らなかった」
KGB議長「ホミュックは協力を?What role did Khomyuk play in this? 」
レガソフ「いいえ 彼女も知らなかったNone, she didn't know either. 」
KGB議長「真実に執着する君が今嘘をついたのだとしたら興味深いなAfter all you've said and done today, it would be curious if you chose this moment to lie. 」
レガソフ「あなたほどの人なら嘘はすぐわかるはず I would think a man of your experience would know a lie when he hears one. 」
KGB議長「君はあの二人と二度と接触できない 事故に関する表現も一切できない 全く重要でない存在として生き続け死後には生きた痕跡も残らないYou will not communicate with anyone about Chernobyl ever again. You will remain so immaterial to the world around you that when you finally do die, it will be exceedingly hard to know that you ever lived at all. 」
レガソフ「拒否したら?What if I refuse? 」
KGB議長「起き得ぬことを悩む必要が?Why worry about something that isn't going to happen? 」
レガソフ「"起き得ぬことを悩む必要はない"完璧だな 連邦の貨幣に印字すべきだ"Why worry about something that isn't going to happen?" Oh, that's perfect. They should put that on our money. 」
出ていく議長。

外に出てきたレガソフを2人が見ている。ゆっくりと二人の前を通り過ぎるレガソフ。ちらっと見る。

レガソフ「科学者とは実直な存在だ 我々は真実を求めるが世の中の大半は真実の発見を望んでいない だが真実は常にある たとえ人々が見ようとしなくても 真実は人の欲求や政府や観念や宗教に左右されたりしない ただ発見の時を待っている チェルノブイリは教えてくれた かつて真実の代償を恐れた私は問う 嘘の代償は?To be a scientist is to be naive. We are so focused on our search for the truth we fail to consider how few actually want us to find it. But it is always there whether we see it or not, whether we choose to or not. The truth doesn't care about our needs or wants, it doesn't care about our governments, our ideologies, our religions. It will lie in wait for all time. And this, at last, is the gift of Chernobyl. Where I once would fear the cost of truth, now I only ask: What is the cost of lies? 」
ここからリアル映像。
「ヴァレリー・レガソフは事故の2年後の1988年4月26日に自ら命を絶った 彼の回想録はソ連の科学界で広く共有された 彼が自殺したことで回想録は黙殺できないものとなったのだった 結果的にソビエト政府はRBMK炉の設計上の欠陥を認めることとなった チェルノブイリのような事故の再発を防ぐため原子炉には改良が施されたValery Legasov took his own life at the age of 51 on April 26, 1988, exactly two years after the explosion at Chernobyl. The audio tapes of Legasov's memoirs were circulated among the Soviet scientific community. - His suicide made it impossible for them to be ignored. In the aftermath of his death, Soviet officials acknowledged the design flaws of the RBMK nuclear reactor. - The reactors were retrofitted to prevent an accident like Chernobyl from happening again. 」
「 事故処理を行ったレガソフは多くの科学者仲間に支えられていた そのうちの数名は政府の説明に異を唱えて収監された そういう科学者たちを象徴する存在としてウラナ・ホミュックは創作された」
「ボリス・シチェルビナは1990年8月22日に亡くなった チェルノブイリに派遣されてから4年4か月後だった 事故の責任者であるV・ブリュハーノフとA・ディアトロフ N・フォーミンは10年の強制労働に処された フォーミンは出所した後ロシアにあるカリーニン原発で働いた ディアトロフは放射能関連の病気で1995年に64才で亡くなった V・ホデムチェクの遺体は改修されず今でも4号炉の下に横たわっている 消防士たちが着ていた衣服は今もプリピャチ病院の地下にあり危険な量の放射線を放っている リュドミラ・イグナテンコは夫と娘を亡くした後数回発作で倒れ二度と子供は産めないと言われた それは間違っていた 現在彼女はキエフで息子と暮らしている 鉄橋に集まった見物人は全員が亡くなったという 現在この鉄橋は四ノ橋と言われている 400人の炭鉱夫がいいか月の間昼夜を問わず作業した 貯水槽の水を縫う板3人の先生負は死亡したと報じられた 実際は入院後全員いきのびた そのうち二人は生存している 事故処理のために60万人が重用された 大半が死亡した ウクライナとベラルーシにまたがる放射線汚染エリアは2600平方キロメートルに及ぶ 約30万人の住民が避難させられた 現在でも戻ることは許されていない  M・ゴルバチョフ“チェルノブイリの事故こそがソ連崩壊の真の原因かもしれない” 最も高かったのが子供達だった 犠牲者数は永遠にわからない 公式な事故の志望者数は1987年から変わらず31人のままである」
献辞「事故で苦しんだ全ての人と犠牲になった全ての人に捧ぐIn memory of all who suffered and sacrificed.」

ストーリーを通じ放射能について何の予備知識も持たず何も知らされない庶民代表で登場する消防士の妻リュドミラ。変わり果てた夫に思わず駆け寄ったがために汚染され妊娠していた子供も失う。外の子供に目をやる事故前の姿。この時妊娠を知っていた?

充分な準備もせずとにかく終わらせてしまいたかった安全性実験。技師長になりたかった副技師長、所長になりたかった副所長の欲、工場を動かしておきたいお偉方の欲。拙速な実験がプールで泳ぎ公園で子供達が遊ぶ日常を一瞬かつ永遠に奪う。

国家が自身の失策をきちんと裁けるかという点では今回のコロナ禍にも通じるチェルノブイリ原発事故。最大の犯罪は何だったのかを告げるレガソフにあの手この手で圧をかけるKGB議長。ここで第1話でレガソフが自殺した理由がわかる。

初登場時は鼻持ちならないザ・カンリョーだったシチェルビナ。共に事故処理に携わるうちにレガソフと信頼関係を築き彼が裁判で真実を告げる助け舟を出す。直前まで躊躇っていたレガソフの背中を押したのは死に向かう彼の来し方を振り返った言葉だった。

レガソフ博士「真実が牙をむけば数々の嘘で隠し忘れようとする でも真実は消えない 嘘をつくたびに真実へのつけがたまる つけは必ず払わされる」日本の原発事故や今のコロナ禍にも当てはまる。つけを払うのは嘘つきではなく嘘をつかれた人達である。

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最終更新日  June 14, 2020 12:42:14 AM
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