映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。社民党が事実上の分裂になってしまうんですね。

今日も韓国文学を紹介します。

パチンコ(上)
PACHINKO
ミン・ジン・リー
文芸春秋

　今ではない、もう少しまえ。グローバル化なんて言葉が流行るまえ。

韓国人が日本で働くといえば、焼き肉屋、パチンコ屋、キムチ屋(あの頃は朝鮮漬と言っていた)、そして夜のお仕事が多かった。てっきりその態で、パチンコ屋を営みながら日本で立身出世していく韓国人の物語なのかと思っていたら、なんと上巻にはパチンコのパの字も出なかった！

　物語は戦前の釜山に始まる。貧しい両親から生まれた美しい娘ソンジャが恋をするが、相手ハンスには日本に妻も子供もいた。妊娠した事を打ち明けたソンジャは、初めてその事実を知るが、ハンスは悪びれることなく彼女を韓国妻として面倒を見ようとする。今だったら“けしからん！”のだが、当時は多少金周りのいい男性が二人目の妻を持つのはごく当たり前の事だったのだろう。

　困ったソンジャは恋愛感情ではなくキリスト教精神から手を差し伸べた牧師イサクと共に、日本の大阪に渡る決意をする。イサクといえば旧約聖書では神に「生け贄として私に献じるように」と言われるアブラハムの息子だ。つまり最初から彼には犠牲というキーワードがつきまとう。韓国語の名前は詳しくないが、もしかしたらそれぞれの名前には彼等の運命に相応しい語句が振り当てられているのかもしれない。ちなみにソンジャとハンスの息子はノアと、ソンジャとイサクの息子はモーゼスと名付けられる。ノアは大洪水の後一族と共に生き残った人物であり、モーゼもまたエジプトから民を率いた英雄だ。これが単なる親の欲目から出た名前にとどまるのか。それともその名の通りの人生を歩むのか。

　どんな時でも世渡り上手の者、不器用にしか生きられない者、逆境で才能を輝かせる者、夢と希望で輝いている者、登場人物それぞれのキャラクターが立っていて、一度読み出したら最後までさほど立ち止まることなく読み通せた。連続ドラマ向きだと思うので、そのうち韓国ドラマになって輸入されるかもしれない。

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