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カテゴリ:その他のジャンルの海外小説
みなさん、こんばんは。箱根駅伝のDefendingChampionである青学、往路は12位でしたね。巻き返しなるか。
今日もイーヴリン・ウォー作品を紹介します。 黒いいたずら Black Mischief イーヴリン・ウォー 白水社 アラビア人が支配する地域にアフリカ人の奴隷アムラスがやってきた事が、そもそもアザニア国の始まりだった。一代の英雄アムラスは、国王の軍隊の総司令官から自分の軍隊の大将、アムラス大帝に成り上がる。彼の死後、皇后となった娘も亡くなり、後継者はオックスフォード大学を出たばかりの皇后の息子で24歳のセスしかいなかった。当たり前のことであるが、ぽっと出の皇帝には人望がない。あっという間に内乱が起こる。 特に王位を得る苦労もせず天下りで地位を得たセスは、現地との融合を考えることもせず、机上の空論を振り回す。 「われわれのほうにはあの戦車がある。これはセスと精度の戦争じゃなくて、進歩と野蛮の戦争なんだ。そして進歩は勝たなければならない。私はアルダーショットでやる英国の陸軍の観兵式も、パリの博覧会も、オックスフォードのユニオン・クラブも見たんだ。ショーや、マイクル・アーレンや、プリーストレーなんかの今日の本も読んだ。市場にある連中はそういうことを何も知らないじゃないか。私には進化の後ろだてがある。私とともに婦人選挙権と、種痘と、生体解剖が進んでいく。私は新しい時代で、未来というものなんだ。」 「われわれは進歩で、新しい時代なんだから、何もわれわれを止めることはできない。」 足許で財産をかっさらって部下が逃げようとしている事にも気づかず、送り出した“近代的な”軍隊が勝利することを疑わないセス。現状認識ができないカラッポ皇帝が呆気なく倒れる様が頭に浮かぶが、意外な事に内乱はセスの勝利に終わる。但し勝利の決め手となったのは、セスが信奉する“進歩”“文明”でない点はウォーの皮肉だ。 そんな皇帝の元にやってくるのが、放蕩息子バシル・シール。父親は政治家で妹も既婚者なのに、彼だけは人妻とアバンチュールを楽しんでいる。セスとオックスフォードで会った事と借金取りに追われていた事が、彼にアゼニア行きを決意させる。何の特技もないバシルが、なぜか内乱制圧後のアゼニアで高等弁務官になり、内乱時に逃げ出そうとして実は九死に一生を得ていたアルメニア人が経済担当官になるあたりも、いかにこの国が近代化とはかけ離れているかという証明である。アフリカ独自のやり方に目を向け、臨機応変な対応をしていればいいものを。先進国のやり方=正統派と見る皇帝のもとでは、皮肉なことに先進国のお家芸ともいうべき汚職がはびこり、いきあたりばったりの計画に振り回された国は、やがて経済破綻を迎える。その矛先は矛先はこの国を食い物にしようとしていた先進国の人々にも及ぶ。あまりにもブラックな顛末は、アフリカ諸国を飼いならせなかった文明国に対する痛烈な皮肉だ。 原題Mischiefは“いたずら”であるがその前に「悪意はないが人に迷惑をかける」という断り書きがつく。セスの存在そのものを象徴したタイトルと言える。 『スクープ』同様アフリカの架空国家を舞台にした小説。 2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
January 3, 2021 12:00:19 AM
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