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みなさん、こんばんは。
田中将大選手が楽天に戻ってきましたね。
今日も韓国特集です。
今日は韓国のSF短編集です。

わたしたちが光の速さで進めないなら
If We Can’t Go At The Speed of Light
キム チョヨプ
早川書房

​スペースデブリの廃棄回収業者が、もう閉鎖されて何年も立つステーションから一向に立ち退こうとしない女性科学者アンナのもとを訪れる。アンナはかつてコールドスリープ技術を研究しており、夫と子供を先に惑星スレンフォニアに送ってから自分も続くつもりでいたが、ある事情により惑星へのルートは閉ざされてしまった。近未来の話ながら、効率第一主義の体制側と、声の小さい庶民が常にその犠牲になる現代社会の姿も垣間見える。しかし最後に心に残るのは
「わたしには自分の向かうべき場所がよくわかっているよ」

というヒロインの決然たる態度だった。
「わたしたちが光の速さで進めないなら」

単身で地球へ旅をする事に決めた女性科学者デイジーから親友への書簡になっている
「巡礼者たちはなぜ帰らない」
デイジーの星では、成年式の儀式として地球に巡礼することになっていた。ところが彼女は何人かの巡礼者が戻ってこない事に気づく。なぜなのか。そしてその事を誰も不思議に思わないのか。
皆理想の社会＝ユートピアを求めて宇宙に旅に出る。しかし誰かにとってのユートピアは、もう一方の側から見たらディストピアではないのか？という鋭い問いを投げかけている。

モスクワのリュドミラは幼い頃から美しい絵を描き、世界的な画家になる。彼女は描いているのは自分の故郷だというのだが、誰もそんな風景を地球上で見たことがない。一方ソウルで新生児の思考を研究していた科学者たちは、ある共通点に気づく。なぜかメアリー・ポピンズの「ふたごが赤ん坊の頃はムクドリと話ができるのに、ある年齢になるとできなくなってしまう」エピソードを想起させる「共生仮説」

他「スペクトラム」感情の物性」「館内紛失」「わたしのスペースヒーローについて」収録。

　主人公は「感情の物性」以外全て女性だ。そして概ね科学者であり、一人で宇宙に飛び出してゆき、物事に真摯に対峙する。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの『たったひとつの冴えたやりかた』のヒロインを想起させる。


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