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みなさん、こんばんは。時代劇などで「5万回斬られた男」の異名をもつ俳優の福本清三さんが1日に京都市の自宅で肺がんで亡くなっていましたね。
今日もクロフツ作品を紹介します。

スターヴェルの悲劇
Inspector French and The Starvel Tragedy
F・W・クロフツ
創元推理文庫

名探偵のイメージとしては、世俗の評判などどこ吹く風。自分の正しさが証明できればそれでよし。謙虚なのかあまりにも自信家なのか凡人にはわからない立ち位置が特徴だ。しかし本編の探偵役フレンチ警部は、少なくとも本作ではかなり出世志向を前面に出している。

　そもそも事件はロンドンではなくヨークシャーの荒野－ムアで起こった。陰気なスターヴェル屋敷が一夜にして焼け落ち、当主と召使夫婦の三人が焼死。耐火金庫に入れていたはずの紙幣は跡形もなく灰となっていた。ちょうど事件を終えたばかりのフレンチ警部に依頼が来るが、頼まれた当初、彼は決して乗り気ではなかった。
「彼はスコットランド・ヤードを離れ、よく訓練された部下たちや、自分がその歯車の一つになっている巨大な機構の支援なしで仕事をするのは気がすすまなかった。地方の警官たちも“りっぱ”だが、本当に役に立つ知識や、経験や、技術を持たなかった。そして地方へ行った”ヤード・マン”はたいがい嫉妬や、程度の差はあれ陰湿な妨害を覚悟しなければならないし、事件の心配の上に自称協力者ともうまくやっていく努力も必要だ。」

「正式な捜査ではなく釣り師か画家というふれこみで街に泊まって欲しい」という依頼も変だ。なぜ警部が変装をしなければならない?

最初からつまずいたので、現地に来ても一向に士気が上がらない。
「実際のところ、彼はこんな根拠の薄弱な事件にはめったにぶつかったことがなかった。何時間もたたないうちにセント・パンクラス行きの汽車でひきあげる自分の姿をフレンチは想像した」
ほらね。

　しかし事件に取り組むうちに、功名心がむくむくと頭をもたげる。
「もし告白が本当だとしれば、彼自身にとてばかりでなく、巨大な組織であるスコットランド・ヤードにとっても、これは一種のスクープのようなものになるだろう。第一級のセンセーションをひき起こすにちがいない。上司たちが悦び、ある程度の名声と、うまくいけば昇進をかち得ることになるだろう。」
かと思えば有力な手掛かりを得た時には
「心の中ではうれしくてニヤニヤしていた。彼は自分の推理の正しさが証明されたと信じ、その確証さえ得られれば一件落着だと思った。(中略)フレンチはこれまでの長い、りっぱな捜査歴にまた一つ事件解決の名誉をつけ加えてロンドンへひきあげることができるだろう。」
さぁ、だんだん前のめりになってきたフレンチ警部がたどり着く事件の真相は？詳しくは本編で。

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