映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。接待を受けていた山田真貴子内閣広報官が1日、辞職しましたね。
今日も怪談集を紹介します。

東欧怪談集
沼野充義編
河出書房新社

　東欧はなんといってもドラキュラ伝説が有名だ。しかしそればかりではない。

　決闘で今際の際に相手から「自分の剣はテート・フゥルクに持ち帰って欲しい。そして百回のミサをあげて欲しい。」と頼まれたのでその場所へ向かった騎士団長は、一夜にして恐ろしい経験をする。『サラゴサ手稿Cinquante-troisieme Journee “Manuscrit trouve a Saragosse ”』(ヤン・ポトツキ／著 工藤幸雄／訳）約束を律儀に守っても報われないのが冷え冷えとした東欧らしい。

　かつてファウストが悪魔といたと言われる伝説の館に、貧乏な大学生がやってきた。評判などものともせずに滞在し続けた学生は、目覚めると目の前に金貨があったのでそれを使って生活し始める。ところが人間何でもいい気になりすぎるもので、もっと金が必要になった学生は、ある恐ろしい企てに手を染める。『ファウストの館Faustuv dum』(アロイス・イラーセク／著石川達夫／訳）いやぁ、悪魔に勝とうとしちゃいけませんぜ、旦那。

　自分は6200頭の牛を売りに来たヤング・ゴーレは酒場で皆に話をしながら、約束の時間が近づいても来ない相手にイライラ。外に出ると、突然けたたましいサイレンの音が響き渡り、慌てて防空壕の中に入ると3人の男女がいた。なぜか男女はゴーレがいないかのように喋っていて、不審に思ったゴーレが外に出て皆の話を聞くと…ゴーレが連れてきた牛が6200頭なのにこのタイトルがその二倍の数になっている理由は?『一万二千頭の牛Douasprezece mil de vite』(ミルチャア・エリアーデ／著直野敦／訳）

　『吸血鬼Vampyr』(ヤン・ネルダ／著石川達夫／訳）と聞いてすわドラキュラ伝説！と思うが、中身は全く関係ないし吸血鬼も出てこない。むしろ別のタイトルの方が合っているのでは。「死を描くXX」とか。

　『吸血鬼Vampir』(ベトレ・M・アンドレエフスキ／著中島由美／訳）こちらは本当に吸血鬼が登場。何と死んだはずの夫が戻って来る。えっそんなに妻に愛情が？というより「他に行く所がないから」さまよい出てきて悪さをするので、妻の評判が悪くなってしまうという、およそのホラー吸血鬼もののイメージとは異なる展開に。

他『不思議通りUlica Dziwna』(フランチシェク・ミランドラ／著長谷見一雄／訳）『シャモタ氏の恋人Kochanka Szamoty」(ステファン・グラビンスキ／著沼野充義／訳）『笑うでぶTen gruby,co sie smiat』(スワヴォーミル・ムロージェック／著 沼野充義／訳）『こぶ　Garby』(レシェク・コワコフスキ／著沼野充義／訳芝田文乃／訳）『蠅Mucha』(ヨネカワ・カズミ／著 坂倉千鶴／訳）『足あとSlepeje』(カレル・チャベック／著栗栖継／訳）『不吉なマドンナZlovestna madona』(イジー・カラーセク・ゼ・ルヴォヴィツ／著石川達夫／訳）『生まれそこなった命Nenarozeny』(エダ・クリセオヴァー／著石川達夫／訳）『出会いStretnutie』(フランチシェク・シヴァントネル／著長与進／訳）『静寂Ticho』(ヤーン・レンチョ／著長与進／訳）『この世の終わりKoniec sveta』ヨゼフ・プシカーシ／著木村英明／訳）『ドーディDodi』(カリンティ・フリジェシュ／著岩崎悦子／訳）『蛙A beka』(チャート・ゲーザ／著 岩崎悦子／訳）『骨と骨髄Csont es velo』髄原成郎／訳）「ハザール事典Lukarevic Efrosinija』(ミロラド・パヴィチ／著工藤幸雄／訳）『見知らぬ人の鏡Ogledalo nepoznatog 』(ダニロ・キシュ／著 栗原成郎／訳）『夢Visul』(ジプ・I・ミハエスク／著住谷春也／訳）『東スラヴ人の歌Pesnya vostochnykh slavyan』(リュドミラ・ペトルシェフスカヤ／著沼野恭子／訳）収録。

　話の最後に著者の略歴が書かれているが、あまり幸せな最期を迎えた人はいない。

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東欧怪談集 （河出文庫） [ 沼野 充義 ]​​楽天ブックス​