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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
みなさん、こんばんは。料理研究家の神田川俊郎さんがコロナで亡くなったそうです。
今日から池波正太郎作品を紹介します。 抜討ち半九郎 池波正太郎 講談社文庫 江戸時代、徳川五代将軍綱吉には、牧野成貞という寵臣がいました。 ところが、生類憐れみの令を出しながら、人間という生類は憐れみたくなかったのか、綱吉は、成貞の妻と娘を閨の相手に指名します。ええい、何という破廉恥な。ひっぱたいてやりたい。いえいえ。それは、そんな仕打ちをされた当事者こそが、やるべき事。ねえ、そう思いませんか、成貞どの? その問いには、当事者・成貞に代わって、池波正太郎と松本清張がそれぞれ小説で答えてくれました。作品のタイトルは、池波氏「妻を売る寵臣」松本氏「献妻」(『大奥婦女記』所収)。同じ事柄を彼等はそれぞれ「売る」「献じる」と表現し、そこに彼等の見方の違いが表れます。 「売る」の反対は、「買う」です。「売る」側は、何かを差し出す事で何か見返りがある事を認識して、行動します。成貞の望んだ見返りは、もう一人の寵臣・柳沢吉保に負けない権勢でした。「さあどうぞ。」と二つ返事で売ったわけではありませんが、「私と一緒に逃げて。」という妻の願いにも、諾とは言いません。池波版成貞は、随分と気弱で、のらりくらり。妻に愛想をつかされるのも、「これではね。」と納得します。 「献じる」とは、「身分の高い者に差し上げる/たてまつる行為」をいいます。「献じた」側は、貰って頂いた事を、とても名誉に思わなければならないのです。しかし、意味がそうだからと言って、誰がその通り喜べましょうか。いたくもない「ありがとうございます」を言えましょうか。松本版成貞は、諸々の感情を、涙と共に全て押し流してしまったのではないか。そんな彼の寂しい背中が見えるようです。 娘まで召し出され、その娘に自害されては、池波版成貞でも、その気弱な笑いを消してしまいます。ここでようやく、二者の成貞の表情は近づきますが、最後の印象でまた変わります。池波版成貞は、70過ぎて嫡子が出来てしまった自分を「恥ずかしい、恥ずかしい。」と言いながら、泣くのです。後悔をつらつらと述べながら。「そんな事、今言うんだったら、何であの時、断らなかった!」と責めたい気持ちはあるのですが、彼の涙を見ると、もらい泣きする 人が大半を占めるでしょう。涙も感情も枯れ果て、近づき難い雰囲気を漂わせる松本版成貞とは対照的な人物が、ここにいます。 全く同じ人物なのに、描き方によって全く違う印象を与える人が、もう一人。 吉良家の家臣・清水一角です。本書収録の「清水一角」では、彼は、浅野家の臣・奥村孫太夫と同じ道場に通っていた設定になっています。知らせを聞くと、彼等は、ぱっと右と左に分かれます。お互いが嫌いあっているわけでも、ましてや憎んでいるわけでもないのに、別れなければならない、それも今後ずっと。そして再び交わるのは、お互いの人生が生と死に分かれる時のみ。けなげな一角を思う時、「運命とはなんと皮肉か」と思わずには、いられません。 同じ時の一角を、山田風太郎氏が取り上げています。『妖説忠臣蔵』収録の「赤穂飛脚」がその作品です。今度はそちらに目を転じます。 酒好きの侍として登場する清水一角は、江戸のごたごたからは無縁の、飄々とした雰囲気を漂わせています。さらには、変事を知らせる赤穂への飛脚達を、「袖すりあうも他生の縁」と助けてすらいるのです。後に敵味方になる運命の彼等を。 あるはずがない。でも、あってもいい。いや、あった方がいい。 こちらの気持ちが変わってゆくと同時に、山風氏の虚像・一角が、池波氏の虚像・一角への苦悩を、風に飛ばしてくれました。 歴史の授業では一つだった人物の貌が、小説の数だけあります。 あなたはいくつ、見つけられましたか? 抜討ち半九郎 講談社文庫 / 池波正太郎 イケナミショウタロウ 【文庫】HMV&BOOKS online 1号店 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
April 26, 2021 12:00:21 AM
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