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May 13, 2021
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みなさん、こんばんは。渋谷の映画館アップリンク渋谷が閉館とか。コロナの影響でしょうか。
今日はウィーンが舞台の小説を紹介します。


ラデツキー行進曲(上下)
Radetzkymarsch
ヨーゼフ・ロート
岩波文庫

スネアドラムから始まるラデツキー行進曲は、誰もが知るシュトラウスの名曲だ。素直な旋律で新年に演奏されることが多い。本編においても、トロッタ家の二代目フランツが地方長官となった晴れがましい日に演奏され、その息子カールに鮮烈な印象を与える。

 本編は祖父が偶然皇帝の命を救ったことで、一代にして男爵位を得たトロッタ家三代の男達の生涯を縦糸に、彼等が生きた国=オーストリア・ハンガリー二重帝国の運命を横糸に描く。前者は軍人として生きた祖父の輝かしい戦績から孫に至るまでに徐々に萎み、後者もまた歴史で知る限り老皇帝のもと滅びてゆく。共通しているのは、両者の理想=外面と現実=内面の乖離だ。

 フランツ・ヨーゼフ皇帝は本人よりも悲劇的な皇后エリザベートの方がともすると有名だ。旅から旅へ忙しく動いた彼女は現実逃避を目指していたかに思われるが、皇帝もまた現実が見えていなかった。現実が見えていたら、飛ぶ鳥落とすプロイセンと戦などしてはならなかったのだ。見た目のよい軍服や演習を好んだものの、実戦では見事に負け続けた彼は、いわゆる文明の利器からも目を背け、近代国家へと変貌を遂げる他の欧州から取り残されてゆく。そして、その事に全く無自覚である。

  ソルフェリーノの戦いで皇帝を救ったジポーリエは、“ソルフェリーノの英雄”と呼ばれ勲章を授けられる。そこまでは良かったが、ある日彼が教科書を見ると、彼の行為が著しく脚色されていた。こちらは現実との乖離を自覚しており、それが故に息子フランツに軍人になることを堅く禁じる。ところが理由を知らない息子は英雄としての父=虚像に憧れを抱き、息子カールの軍人としての成功を望む。周囲も祖父の栄光を覚えており、彼は自分自身よりまず“英雄の孫”として遇され続ける。ところが評判に見合った実力がないため次第に軍隊に息苦しさを感じる。

 トロッタ家と皇帝一族、二人のヨーゼフの緩慢な死が近景に、彼等の生きる斜陽の帝国が遠景になった一大絵巻だ。滅びゆく帝国への哀惜の念が随所に溢れている。それが真に迫っているのは、ロートが本書を書いた当時、ナチスの勢力が拡大していたことも大いに影響している。戦前のウィーンにはユダヤ人も多く、多民族が生きやすい国であったという。一度滅びた国がもう一度滅ぼされ、しかも今度はゲルマン民族しか認めないナチスが上に立つ。行動する作家ロートは帝国の末裔オットー大公に会いに行ったが、酩酊していたため禁酒を勧められたという冗談のようなエピソードが残っている。著述は欲求不満をうまく昇華してくれなかったらしい。


2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


ラデツキー行進曲(上) (岩波文庫) [ ヨーゼフ・ロート ]​​
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最終更新日  May 13, 2021 12:00:19 AM
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