映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。オリンピック選手に優先してワクチンが配布されるという報せが届きましたが違和感を覚える選手もいますよね。

今日もヘンリー・ジェイムズ作品を紹介します。

友だちの友だち (バベルの図書館)
The friend of friends
ヘンリー・ジェイムズ
国書刊行会

「ノースモア卿夫妻の転落The Abasement of the Northmores」
　文壇の大家であるノースモア卿が亡くなる。彼の学友のウォーレン・ホープとその夫人は壮大な葬儀に参列する。夫人はかつてノースモア卿の恋人だった。間もなくホープも亡くなるが、大勢参列した卿の葬儀に比べれば、寂しい野辺送りだった。常に夫はノースモア卿に利用されてきたと信じているホープ夫人は、ノースモア卿夫人から夫の書簡集を出したいと言われて夫の書簡を探し、改めて「夫の方がノースモア卿より才能があった」と確信する。夫の書簡を渡した後、自らもホープの書簡集を出版しようとするが、誰も夫の書簡を保管していなかった。やがてノースモア卿の書簡集が出版されるが…。

　天才の側にいる凡人といえばシャーロック・ホームズ＆ワトソンのようなコンビが浮かぶ。両者には信頼関係と友情があったが、ホープ夫人の見るホープとノースモア卿の関係は常にいびつだった。ノースモア卿が不要になった恋人をホープに押し付けたと思い込んでいる夫人は、二重三重に復讐心を募らせていく。しかし意外な所からノースモア卿の評判に傷がつく。ホープが生前ノースモア卿をどう思っていたか、ホープ夫人が感じている夫の才能と世間一般の才能との間に乖離がないのか等、第三者の視点が入らないため、一種の妄想によって密かな復讐が進行する。もし彼女が信じている土台が嘘だったら？あれはホープの復讐だったのか？思い込みと現実の境目、一人の人間の外見と内面の曖昧な中を進む怖さ。

「オウエン・ウィングレイヴの悲劇Owen Wingrave」
名門の軍人一族に生まれたオウエン・ウィンググレイヴは周囲からの期待をよそに軍人になることを嫌っていた。陸軍士官学校の教師であるスペンサー・コイルは後見人でもある彼の叔母に相談するが、伯母はすぐさまオウエンを屋敷に連れ帰ってしまう。帰宅したオウエンは婚約者、祖父、伯母から総攻撃を受けるが彼の決意は変わらない。コイルはオウエンの友人レッチモアを連れて行くが、そこで屋敷に纏わる亡霊の話を聞く。最も軍人に相応しいと周囲が思っている人間が、資質を持っていても意思が全くなかったがために孤立していく。優れた軍人であるが故に戦争の愚かさにも気がついていたという見方も出来るはずなのに、誰一人として彼の支援に立たず、コイルも基本的には傍観者である。曰くのある部屋で死んだから亡霊絡みと考えたくなるが、敢えて幽霊の姿を描かなかった所を見ると、彼を殺した原因は人の悪意か。


他ドッペルゲンガーが登場する「私的生活The Private Life」 主人公がまだるっこしい「 友だちの友だちThe friend of friends」収録。現実の幽霊の姿が全く描かれないホラー短編集。

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