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カテゴリ:海外のミステリー&ファンタジー小説
みなさんこんばんは。ジャングル大帝のレオ役などを担当した声優の太田淑子さんが亡くなりましたね。今日は何と狼男の話を紹介します。
人狼ヴァグナー Wagner,the wehr‐wolf ジョージ・W・M・レノルズ 夏来健次 (訳) 国書刊行会 1516年、ドイツ〈黒き森〉。嵐が吹き、辺り一面を異様な轟音が覆いつくす漆黒の夜、老いた羊飼いヴァグナーは見知らぬ人物の訪問を受け、奇怪なる契約を交わす。それは、若さと美貌、富と不死の命を手に入れる代価として狼に変身する運命を背負うというものであった。それからおよそ5年後、フィレンツェでも指折りに大きな城館の一室で、リヴェロラ伯爵アンドレアは死の牀にあった。父に寄り添う二人の姉弟ニシダ姫とフランシスコに伯爵は、自らとリヴェロラ家にかかわる秘密を明らかにしてくれるものが収められているという秘密の衣裳室の鑰を渡し、フランシスコが婚姻を果たすその日に扉をあけるよう遺言を残して息絶える。父の死を看取り二人はそれぞれの寝所に戻るが、ほどなくして耳と口を使うことができないニシダ姫が、フランシスコの部屋に忍びこんで鑰を盗み、秘密の衣裳室へ歩を進めていく。数日後、伯爵の葬儀が執り行なわれ、そこに若さを取り戻したヴァグナーの姿があった。 年老いた男に悪魔(と思われる男)が取引を持ち掛ける話といえば、ゲーテの『ファウスト』が想起される。しかし更に遡り、良い条件ばかりを並び立てるが、実は相手の最も大切なものを奪おうとする話のオリジナルは、イエス・キリストの“荒野の誘惑”という逸話がある。イエスはさすがに悪魔の誘惑に乗らなかったが、凡人たる人間は、やはり目の前のわかりやすい好条件に乗ってしまう。ヴァグナーが羊飼いという職業なのも意味深だ(私は善き羊飼いである-ヨハネによる福音書より)。 さて本作、とにかく展開が早い。若返ったヴァグナーは失踪した孫娘アグネスとあっさり出会う。「さすがに真実を言わずに、しばらくはそっと見守るとか?」と思ったら、あっさり正体を告白。そこでアグネスが卒倒して「嘘よ!嘘!嘘!信じない!」と取り乱し、「テレビドラマ2話分くらいは引っ張るのかな?」と思いきや、あっさり信じる(えええ!?)そしてヴァグナーの「他人の前では兄と呼べ」も承諾。「えっ、逡巡とか迷いとか、なし?全然?」と驚くが、何と本編は大団円という最終章まで七十八章ある。フィレンツェ行ったりコンスタンチノープル行ったりひたすら忙しいので、お悩みタイム=溜めはカットされた。通俗小説を多く書いてきた作者は、まったりした展開が読者に飽きられてしまうことをよく知っていたに違いない。 それにしても、よく美辞麗句が次から次へと出てくるものだ。素晴らしきかな古の人々。人狼という語句からはホラーを想像するだろうが、どちらかというと冒険譚、奇譚の域に近い。勢いがつくと一気読みできる。 人狼ヴァグナー [ ジョージ・W・M・レノルズ ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
November 24, 2021 12:00:19 AM
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