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カテゴリ:海外のミステリー&ファンタジー小説
みなさん、こんばんは。およそ140年ぶりに“大人”の定義が変わります。成人年齢を引き下げる改正民法の施行により、ことし4月からは18歳で「成人」となります。
今日もアーシュラ・K.ル=グウィンの西のはての年代記シリーズを紹介します。 パワー 上下 西のはての年代記Ⅲ (河出文庫) The Chronicles of the Western Shore“Power” アーシュラ・K.ル=グウィン 河出書房新社 『ギフト』では北の果ての荒地、『ヴォイス』で“西のはて”の都市国家アンサルが舞台になった西のはて年代記シリーズ、最終作は両者のちょうど真ん中にある都市国家群の一つ、エトラが舞台になる。『ギフト』では為政者の血筋、『ヴォイス』では征服者に支配され、兵士との間に生まれた子供が主人公だったが、本作は生まれながらに奴隷の身分であるガヴィアが主人公だ。家族や友人たちが支えてくれた第一作、家族はいなくても導き手である道の長に守られていた第二作に比べ、彼には庇護者がいない。アルカ館(マンド)の主人夫妻は奴隷たちからファーザー、マザーと呼ばれ慕われているが、身分の差は歴然としており、主人と奴隷の婚姻はない。また主人一家の横暴は見逃されており、ファーザーたる一家の当主は、穏やかな長男より粗暴な次男トームに期待をかけている。そして学者肌の主人公ガヴィアは彼とその子分格であるホビーの標的としていじめられる。先生でさえも主人筋の子供の暴力を止められない。先生もまた主人に雇われている身だからだ。 三作全て大人になった主人公が過去を回想する形式になっているため、最終的に彼等が救済されたことは最初から読者に提示されている点が安心できる。しかし、本作は、そこに至る過程は三作中最も過酷である。ガヴィアはまず、自由という概念を持たなければならない。『ヴォイス』も被征服者によって自由を制限されていたが、彼等には自由とは何かがわかっていた。“自由”を知らないガヴィアは「生まれつき自分や奴隷の運命はこういうものだ」という諦念と共に生きていた。しかし奴隷の幼い少年がいわれなく死んだ時にも違和感を抱き、満足な答えをくれない先生にももやもやした思いは残る。それが何なのかわからないままに、今度は身近な人物の死が訪れ、遂にガヴィアの我慢が切れる。 攫われて奴隷となった少年が、様々な場所を旅しながら、自分とは誰か、何をしたいのかを見つけていくビルドゥングスロマン。第一作、第二作の登場人物も登場して大団円のラスト。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
January 25, 2022 12:00:20 AM
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