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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
みなさん、こんばんは。ロシアのプーチン大統領は対ドイツ戦勝記念日の式典で演説を行いましたが、ウクライナへの戦争宣言はせず、冒頭で「われわれはいまだドンバスのために、ロシアの安全のために戦っている」と強調しました。今日は軍師官兵衛が登場する戦国ミステリを紹介します。
黒牢城 米澤 穂信 KADOKAWA 本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重を、秀吉に命じられた村重と旧知の仲でもある小寺孝隆(官兵衛、のちの黒田孝高、以下官兵衛)が説得に来る。ところが村重は孝高を拘束し土牢に監禁した。ここまでが史実。 以後、村重は有岡城に篭城し、織田軍に対して1年の間徹底抗戦したが、側近の中川清秀と高山右近が信長方に寝返ったために戦況は圧倒的に不利となった。物語はちょうどここから始まる。 籠城はあくまでも援軍が来るまでの一時的な策に過ぎない。当然である。いずれ兵糧が尽きてしまうし、閉塞した空間で限られた人々との交流しかなければ、人心が荒む。包囲されれば情報は入ってこないので疑心暗鬼が進む。だから、訳の分からない事件など起きてもらっては困るのだ。というわけで、城内で起きる難事件に翻弄された村重は、動揺する人心を落ち着かせるため、自分と同等の知恵者と認める土牢の囚人官兵衛に謎を解くよう求めた。 第1章『雪夜灯篭』は、人質として取っていた裏切った武将の息子安倍自念が、皆の前で村重が「命は助ける」と宣言したにも関わらず、何者かに殺されていた事件を扱う。第2章『花影手柄』は、キリシタン大名の高山右近の父友照が率いる軍と雑賀衆が打って出た戦で、両者によって共に敵方の大将らしき者が討ち取られた。しかし誰も敵将の顔を知らない。キリスト教信者でもある高山衆への反感が城内に渦巻き、雑賀衆に褒美を取らせたほうがいいと城内の空気が固まるが、村重は迷う。第3章『遠来念仏』では、とうとう毛利が織田方に寝返ったという知らせが届き、村重は息子の嫁の父でもある惟任日向守(明智光秀、『麒麟がくる』の主人公)に降伏の手紙を出す事を決意し、僧侶無辺を使いとする。ところが無辺が殺されてしまう。第4章『落日孤影』は、『遠来念仏』で村重が犯人を言いあてたもののまずい雰囲気になった所で落雷によって犯人が死んでしまう。ところが現場に鉄砲の弾が落ちていた。犯人は殺害されたのか、誰によってなぜ? 一歩も牢から出たことのない官兵衛が「名探偵みなを集めてさてと言い」をするわけではなく、あくまで断片的な事を言うのみで、最後に解くのは村重である。ということは本編の中では村重と官兵衛の知能は同等で、優秀な武将であることが窺える。 ところで、史実では村重は単身で城を脱出し、降伏を説得しに行った城守を追い返してしまったため、妻子や家臣の妻子が惨殺された。一人だけ逃げた卑怯者というのが村重の通説だ。にもかかわらず本編の村重は逃げる気は全くなく、家臣からの信頼も厚い。これでどうして単身逃亡に繋がるのか?という謎が浮かぶ。実はそこにこそ官兵衛と語らう時間が生じた所以があり、本来籠城と書くべき所を牢城としたタイトルの意味がある。 黒牢城 [ 米澤 穂信 ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 10, 2022 12:00:21 AM
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