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September 9, 2022
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みなさん、こんばんは。 ドイツを代表する映画監督のひとりで、映画「U・ボート」や「ネバーエンディング・ストーリー」などを手がけたことで知られるウォルフガング・ペーターゼン氏が亡くなりました。81歳でした。
今日は何度も映画化されたラクロの名作を紹介します。

危険な関係 (エクス・リブリス・クラシックス)
Les liaisons dangereuses
ラクロ
白水社エクス・リブリス・クラシックス

はじまりは、嫉妬である。

 メルトゥイユ侯爵夫人は、自分を棄てて若い裕福な娘セシル・ヴォランジェと結婚するジェルクール伯爵に復讐しようと考える。そこでこうした悪だくみの仲間であり、つかず離れずの関係を繰り返す遊び人ヴァルモン子爵に
「この件がすっかり片付くまでは他のお遊びには手を出さないと約束していただきたい。これはまさに英雄にふさわしい一件」
とセシルの誘惑を提案。ところがヴァルモンは
「新作小説のヒロインにでもなれそうな」
セシルの誘惑なんて簡単すぎてつまらない、それよりも貞淑と評判のトゥールヴェル法院長夫人を落としたい!と逆提案。

 さて、その時のメルトゥイユ侯爵夫人はというと
「あら、面白いわねぇ、やりなさいよ」
ではなく、徹底的にトゥールヴェル法院長夫人をディスる。曰く、顔も平凡で面白みもない。曰く、おしゃれにも関心がない。曰く、人妻を落として何が楽しいわけ?

 おや?口ではディスりつつも、自分とは違った魅力を持つトゥールヴェル法院長夫人にメルトゥイユ侯爵夫人嫉妬してる?そう思いたくなるくらい、ディスり具合が執拗だ。ヴァルモンも「そうだねえ」とあっさり同意せず「彼女は嘘がないのがいいんだ!だいいち、着飾ればかえって美しさが損なわれてしまうだろ?」と力説。おや、こちらは既に惚れている?

 ヴァルモンは
「彼女の身に染みついた偏見を打ち砕いてやろうなどとは考えまい そうした偏見があるからこそこちらの至福と栄誉が高まるのだ 美徳への信仰は抱いたままでいるがいい ただし私のためにその美徳を犠牲にするのだ」
「我が身の過ちにおののくがいい しかしそれでも踏みとどまることはできまい そしてそのときにこそ「愛しています」と私に言えばいい あらゆる女たちの中でこの女だけがその言葉を口にするにふさわしい」
内心はSっ気全開で、外見はしおらしく、難攻不落のトゥールヴェル法院長夫人にアプローチ。つまんなーい、と思っていたメルトゥイユ侯爵夫人だが、トゥールヴェル法院長夫人に「ヴァルモン子爵はワルなんだから、あなた近づけちゃだめよ」と助言したのがセシルの母ヴォランジェ夫人だと知ったヴァルモンがセシル誘惑を快諾。かくしてヴァルモンは侯爵夫人のリクエスト&自身のミッションの両方に挑む。

 成果を報告するために、ヴァルモンは相手や自分の手紙をせっせとメルトゥイユ侯爵夫人に送り付けるが、その中でメルトゥイユ侯爵夫人が
「あなたが見落とされているのは、恋愛においては自分が感じていないことを書き表すことほど難しいものはないという点です。つまり、あたかも真実であるかのように書くことは難しいということです」

嘘と思ってる文句が、いつしか自分の気持ちとイコールに、つまりはミイラ取りがミイラになるんじゃないの?と忠告。「百戦錬磨の俺様がそんなはずないだろ」とあくまで強気のヴァルモンだが、そうそう人は思い通りには動いてくれない。そして、最も思い通りにならないのが、自分の気持ちだったりする。そしてその事を一番最後に知るのが自分である。本音を吐いているはずの書簡に混じる嘘、書簡からにじみ出る本音、書簡に書かれなかった本当の思いなど、分け入ればなお深き沼の人間心理が175通の書簡で綴られる。いやぁ、これは確かに古今東西こぞって演出したくなる題材だ。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


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最終更新日  September 9, 2022 12:00:28 AM
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