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みなさん、こんばんは。安倍元首相の国葬ですね。今日も横溝正史作品を紹介します。

坊主切り貞宗 人形佐七捕物帳全集 (6)
横溝正史
春陽文庫

　神田お玉が池で親の代から十手捕縄を預かる御用聞き、佐七。その美貌から「人形佐七」と渾名される彼は、人気も実力もあるイイ男。だが3年前、幕府の改革で上司・神崎甚五郎が失脚した。佐七も十手捕縄をお上に返し、女房を連れて江戸を離れる。甚五郎の復帰と共に、ようやく八丁堀に返り咲く。お粂が血のついた簪を拾った事から、佐七は事件に関わってゆく事に。

全くの第三者の会話から、佐七一家の紹介。或いは、辰か豆六が聞き込んできた町の噂から事件へ。話の進め方としては、この2パターンが多い。とにかく女にモテモテの佐七に、ヤキモチをやく女房・お粂。独身の辰と豆六が面白がって、やいのやいのとたきつける。だが結局は惚れた弱みで、夫婦はすぐ元のさやに。アツアツの二人に当てられて、ややクサクサしている独身男。見事なまでにワンパターンなこの展開が、毎度毎度繰り広げられる。だが、このアットホームなヒトコマが、ドロドロした事件の多い本作の緩衝剤になっている。

それに、今回のように長く仕事を離れていた佐七にとっては、たとえ馬鹿馬鹿しくとも、彼等との会話は、随分と恋しかった事だろう。いればからかったり、揚げ足を取ったり、まるでオモチャ扱いだが、いないと寂しい。空気のような存在となった辰と豆六は、第三話『藁人形』で、ようやく揃う。

戦後に書かれたものもあり、「テクニシャン」「進軍ラッパを鳴らして」など、「時代劇にこんな言葉が？」と思われる比喩もある。山風のように確信犯的に居直ってノーコメントの時もあれば、「そんな事は言わないが」と但し書きが入っている時もある。セックス描写は、やたら「鼓舞鞭撻」が使われる。「こぶ・べんたつ」って、「奮い立たす事、強く励ます事」という意味。江戸時代の人々は随分と、セックスへの探究心豊かだったと見えますな。まあ、夜も長かったでしょうしね。

　佐七のドッペルゲンガー騒動を描く『離魂病』、なぜか坊主の姿が見える妖刀騒動『坊主斬り貞宗』、他『夢の浮橋』『夜毎来る男』『風流女相撲』『風流六歌仙』『緋鹿の小娘』『本所七不思議』全10話収録。

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