映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんにちは。日韓両政府は岸田首相と尹錫悦大統領がカンボジア・プノンペンで会談すると発表しました。対面での正式な首脳会談は2019年12月以来、約３年ぶりですね。今日から6日間韓国小説を紹介します。

僕の狂ったフェミ彼女​
ミン・ジヒョン
イースト・プレス

　韓国のタイトルは少々挑発的である。映画『猟奇的な彼女』でも、どんなサイコな彼女かと思いきや、チョン・ジヒョンが演じれば可愛いものだった。

　だから本編のヒロインが“狂った”と書かれていても、そう構えなくて良い。むしろそのように表現した側にこそ問題がある。

　就活を前に不安な僕を癒してくれた愛らしい彼女と、毎日のようにベッタリ付き合って1周年を迎えたスンジュンは、1年間の海外インターンシップに行くことに。遠距離は不安だが、彼女ならきっと待っていてくれるはずだと思っていた。しかし出国当日、空港でスンジュンは彼女から別れを告げられ呆然とする。

　初恋を引きずりながら 大企業に就職し3年目を迎えたスンジュン。周囲はほとんど結婚して「まだ独身なの?」とからかわれることも多いが、なかなか結婚への意欲がわかない。そんなある日、スンジュンは筋金入りのフェミニストになっていた彼女と再会した。

　「私達はどうしても合わない」と言いながらも、会えばふらふらっと関係を持つ彼女に「もしかしたらまだ自分の事が好きなんじゃないか」と期待したスンジュンは、賭けを持ち掛ける。男性の方から賭けを持ち掛けること自体、自分の価値観に絶対沿わせてみせる！と自信満々なのが透けて見えるため、特に女性読者は、はなから「ああこの二人はどこまでもすれ違うだろう」と言う未来が見えている。そもそも、二人が別れるきっかけとなったインターンにしても、「彼が行き、彼女が待つ」という成り行きが既定路線としてスンジュンの頭の中にあったからだ。つまり、彼女の側に立つという視点が欠けていた。

　ならば少しは成長しているかと思えば、相変わらずスンジュンの思い込みは止まらない。最後まで名前のない彼女が、最初からある程度達観しているのに対して、同じような考えの友達とつるみ、彼女の前でさりげなく「自分の考えの方が“世間一般”なんだよ」と諭してみせる。子供の頃から刷り込まれている考えなので自身に全く悪気がなく、「つまりは長いものに巻かれた方が世の中うまくいくんだから」と、作家からセクハラを受けた際の彼女の必死の訴えにも弱腰だ。それでは彼女が本当に望んでいる共感は生まれるはずもない。

説明しないとわからないことは、説明してもわからないんだよ

「待ちの姿勢」「受けの姿勢」だけでは足りない。必要なのは歩み寄りだ。だから彼女は説明を続ける。何度空しい思いにぶち当たったとしても。

　ところで説明という点で見れば、本書は対照的な二人を主軸に据えた、とてもわかりやすいフェミニズムの説明書である。さて、あなたはわかりましたか？

　韓国でドラマ化・映画化決定。


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