映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。まさかり投法で知られた元野球選手村田兆治さんが火事で亡くなりましたね。
今日も韓国小説を紹介します。

そこに私が行ってもいいですか?​
イ・グミ
里山社


「そこに私が行ってもいいですか？」タイトルは、畳と引き換えに子爵の家に働きに行く時に、ダブルヒロインの一角・スナムが聞いた言葉だ。なぜ彼女がそんな事を言ったかというと、貧農で子沢山の一家に生まれたスナムが、富裕な貴族の家で暮らすことなど、当時ありえなかったからだ。

　スナムが赴いた子爵の家には、蝶よ花よと育てられた令嬢チェリョンがいた。生まれ育ちが全く異なるのに、第三者からは“よく似てる”と言われた二人は、日中戦争から長い戦いに突入する激動の朝鮮半島の歴史に飲み込まれていく。

　ここまで書いて「あ、これ、韓国ドラマでよくあるやつ！」と思ったあなたは正解！特に「“よく似てる”と言われた」設定は韓国ドラマの大好物だ。貧しい生まれながら、韓国、日本、中国、ロシア、アメリカと、世界を渡り歩くごとに視野を広げ、勇気を蓄えていく逞しきスナム。対日協力者の子爵の娘として生まれ、同じように世界を渡り歩くことで世間の厳しさを知っていくチェリョン。気位が高く、苦労知らずのお嬢様チェリョンは、必ずしも自分の願いが叶うわけではない他人ばかりの世界で挫折を知るが、それでも尚、プライドを保とうとする。実の家族からも見捨てられ、拾われた子爵家からも大切にされなかったスナムが、たった一人親切にしてくれた相手に真実の愛を捧げるが、チェリョンには次第に複雑な思いを抱いていく。最も大事なものを守るために、他のものを一つ一つそぎ落としていった末に、二人の女性に残るのは何か。

　二人の女性の歴史を縦糸に、現代もくすぶっている日本軍慰安婦問題、対日協力者、アメリカ日系人収容所など、複雑な日韓近現代史を横糸に描く。ことに、貧しく低い身分で、有力な家族もいない女として生まれたスナムの伸びしろが果てしない。ドラマになったら是非見たい。



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