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November 17, 2022
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みなさんこんにちは。ロシアのミサイルがウクライナの隣国ポーランドに着弾し、2人が死亡したそうです。ロシアがウクライナに侵攻して以来、北大西洋条約機構(NATO)の領域にロシアのミサイルが着弾したのは初めてです。今日も韓国小説を紹介します。

君という生活 (単行本)​
キム・ヘジン
筑摩書房


 英語では二人称の「君」を意味する言葉は「YOU」だけだ。ところが韓国語では、日本語と同様複数の言い方がある。中でも本編のタイトルで使われる【너(ノ)】は対等な相手、もしくは年下や友達など、タメ口で話ができる極めて相手を呼ぶときの言い方である。にも拘わらず、そんな君が極めて遠い存在に思える。そんな「私」の物語が全8編収められている。

「三区域、一区域」
教会にやってくる猫にテビと名付けた私は、猫を待っている時に君から声をかけられる。彼女は猫の口内炎を心配し、雌猫の去勢手術をしたいからと捕獲器を持参していた。猫のために、地面にはいつくばるような姿も辞さない彼女に好意を抱いた私は、頼まれるままに君と行動を共にする。私生活や携帯写真からは、住居を売って裕福になり、更に資産を増やそうとする成功者としての君の姿が垣間見える。一方で私は再開発で追い立てを食らっている住居の賃借人である。決して私が卑屈になるような物言いをしたわけではないが、次第に私は君との距離を感じるようになる。

「異なる記憶」
君と私は大学の同じ新聞社で活動していた。ある日主幹教授のイムが立場を追われ、教授に可愛がられていた君は困った立場に追い込まれる。周囲の空気が変わる中、教授に心酔し続ける君を支えようとするが、次第に良い思い出話ばかりをしようとする君に、私は辛くなってくる。

「君という生活」
福祉関係の仕事のの面接に向かう君に私は同行し、資格として求めている就労時間が足りないからと言ってはねつけられる姿を目撃する。私は君の性格をよく知っており、だからなぜ足りない事態になったかをよく知っていた。

「午前零時を迎える頃」
同性カップルの君が、友人ユリに対して気を遣うのを好ましく思っていなかった私は、衝突しながらも彼女の事務所の開所パーティに向かう。

「ご近所さん」
同性カップルの話。君が老婆に接触した出来事は、後から近所の人達も含めた大糾弾大会に発展する。

「私たちは」
同性の友人どうしの君と私。格安物件を契約して店を始めた君が起こすトラブルを、立場上いろいろ相談される私。

「知り合いのお姉さん」
同性カップル。知り合いのお姉さんに心酔して媚びるような君の態度に耐えかねた私は、ある日君に思いのたけをぶちまける。

「八福広場」
再開発で広場が作られる予定の近くに住む事にした君と私。しかし開発されるはずの近所は重いの他さびれていた。

 ほとんど「次第に」変わってゆく君に「次第に」違和感を覚える私という構図になっている。この「次第に」という速度がポイントだ。豹変すれば、さすがの私も即座に君への態度を決められるが、いつか知らぬ間に「あれ、この人こんな人だったっけ」と思いながら変化が続く場合、どこで私が選択をするのか逡巡する時間が生まれる。流されるままに続けていけば、彼女も変わってくれるかもしれないと期待するのか。変わらないと諦めて付き合っていくのか。「じゃあ明日」とリミットを決めて決別するのか。

 単純ではないのが、ともすれば「変化する君」が第三者の背後にある社会を意識していることだ。単に君だけを拒否して別の場所で生きていく事を選んでも、また同じ事が起きるのではないか。また、そもそも君はもともと私が親近感を覚えた時のままなのだが、社会を意識して変化せざるを得ないのではないか。つまり私が考えなければならないのは、単純に君個人との関係だけではないのだ。

 働いて、或いは学んでいる限り、日本にいる私達も絶えず社会と対峙し、第三者と接している。私の逡巡は、いつかどこかであなたも体験しているかもしれない。



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最終更新日  November 17, 2022 12:00:26 AM
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