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December 1, 2022
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みなさんこんばんは。東京八王子市の東京都立大学で、この大学の教授で社会学者の宮台真司さんが刃物のようなもので首や背中などを切りつけられました。今日も藤沢周平作品を紹介します。

白き瓶/一茶 藤沢周平全集 第八巻​
藤沢 周平
文藝春秋

冒頭は、為さぬ仲の母に疎まれて、故郷を出てゆく弥太郎とその父・弥五兵衛の別離の場面から始まる。この様子は、一般に知れ渡っている「優しい眼差しの俳人・一茶」のイメージを裏切らない。しかし江戸に目を向けた弥太郎は、もう今までの彼ではない。泣いた事や、悄然として牟礼の方に引返して行った父親を瞬時に忘れた彼は、やがて会った事もない元葛飾派の先輩俳人の弟子を詐称して旅の路銀をねだり、晩年義弟との財産争いで骨肉の争いを繰り広げる、ふてぶてしい男になる。

『白き瓶』は『小説長塚節』と副題がついているが、結核に冒されて37才で早世した歌人・長塚節を中心にした、明治大正文壇史といってもよい。小説というよりは、評伝に近い。ここで驚かされたのは、「お民さんは野菊のような人だ」と少年少女の控えめな純愛を書き綴った伊藤左千夫の、作品イメージとは裏腹の、数々の行状である。自分を脅かす恐れのある新進歌人・斉藤茂吉への執拗な攻撃、同じ正岡子規門下であった節が新聞連載を依頼された時の原稿料にこだわる態度。

 藤沢氏が一茶と長塚節の両名を書く事に決めたのは、おそらく『旅の誘い』で「あなたの風景には誇張がない。気張っておりません。恐らくそこにある風景を、そのまま写そうとなさったと、あたしはみます」と言われた歌麿同様、両者が自分と似ているからだ。歌麿も一茶も節も、皆奇想や技巧をめぐらさず、あるものをあるがままに描こうとするタイプだ。

 裕福な商家の旦那である俳人の成美から、一茶は「ぶしつけに貧しさを句にするようになった。あなたはご自分の肉声を出してきたということでしょうな。」と言われる。更に一茶の作風が変わらないのを見ると、成美は貧乏を描きすぎるなと警告する。長塚節も、師の正岡子規から学んだ「飾りや先入観を取りさって、自然の真相をつかむ」手法で、夏目漱石から依頼された朝日新聞の連載小説『土』を勇んで書き出す。しかし「真実の百姓を書いた小説」など読みたがらない読者の反応は散々で、とうとう連載短縮を打診されてしまう。自分の好きな事を職業にしている彼等は、「自分の思う所を文章にしたい。けれどそれでは売れない」という-おそらく藤沢氏も経験した-ジレンマにぶつかる。

だがここで物語は終わらない。
「だが、もういいだろうと一茶は不意に思ったのだ。(中略)のぞみが近づいてきたわけではなかった。若いころ、少し辛抱すればじきに手に入りそうに思えたそれは、むしろかたくなに遠ざかりつつあった。それならば言わせてもらってもいいだろう、何十年も我慢してきたのだ、と一茶は思ったのである。世間にも、自分自身にも言いたいことは山ほどあった。」
節も、推薦してくれた漱石が自分の土を理解していないのを序文で悟るが、自らの歌作にうちこみ、とうとう「長い間心のなかで歌の形をとるのを待っていて、できたときはその待っていたものがようやく心の深部から出て来て日の目を見たような」境地にたどり着く。『滑稽で憎むべきもの-貧』と、貧と縁が切れない自分と正面から向き合う俳句を輩出し続けた一茶と、晩年の大作『鍼の如く』を生み出す節。
売れるために、意に沿わないものを書くか。あくまでも自分の道を追求するか。文学者として、藤沢氏がどちらの生き方を称揚したのかは、言わずともわかるはずだ。


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最終更新日  December 1, 2022 12:00:22 AM
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