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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
みなさんこんばんは。W杯ブラジルもポルトガルも決勝トーナメント進出が決まりましたね。今日も藤沢周平作品を紹介します。
補巻 1 藤沢周平全集 第二十四巻 藤沢周平 文藝春秋 幼名を直丸といい、のちに鷹山と号した米沢九代藩主上杉治憲は、日向高鍋藩三万石の秋月家から、八代米沢藩主上杉重定の養子に迎えられ、明和4年(1767)、17才で上杉家の家督を継いだ。治憲がまだ12の少年だった頃、江戸の上屋敷で素読師範の藁科松柏に、領国が人別銭という悪税を課さざるを得ないほどの窮境にある事を教えられ、「それでは家中、領民があまりにあわれである」と涙した。 「ああ、何と心優しい名君だろう。」 そう思った後で、現実をくぐり抜けてきたこの大人は、やや皮肉な見方をする。 そうはいっても、あなたのその思いは、子供の一時の感傷に過ぎない。たとえここで奮起しても、幼い理想主義は、大人になれば現実主義に、たやすくとってかわる。政治は部下に任せ、忘れた頃に「そう思った頃もあったか。」と感傷にふけるが関の山。 ところが彼の決意は、元服して後も変わらなかった。大倹令を発し、自ら一汁一菜を用い木綿を着用し、殖産興業に務めた。執政の竹俣当綱は、剛胆で、豪快な夢を語り、一方、軽輩から出世して後に中老となった莅戸善政は、緻密で、地味だが実現可能な政策を打ち出す。この図ったような取り合わせの妙が面白い。この好対照の両輪と、バックアップする治憲がいて、国の立て直しという大事業に着手できたのだろう。中でも、大風呂敷と揶揄され、弱気になった当綱に治憲がかける言葉がいい。 「人間誰にも欠くるところがある。(略)思うところを遠慮なく行えばよい。それが私のための恣意にあらず、藩のためにすることだというのは、見る者が見ればすぐにわかることだ。」 太っ腹にして抑える所は抑える、こういう上司がいてくれたら、部下は思いきり動けるだろう。 馬廻組と五十騎組で鉄砲上覧をどちらが先にするかという争いに対しても、治憲の裁定は見事である。いわばメンツ争いなのだが、治憲は「藩が貧困に苦しんでいるのに、そんな重箱の隅をつつくような事で争うとは何事か。」と藩主の威光で押さえつけない。双方の心情に配慮し、武士の名誉心を巧みにくすぐる対処は、とても二十歳とは思えない。 もしかしたら、この人ならば。当初の皮肉は引っ込んだ。 理想が実現しなければ、すぐ現実という二者択一でなく、両方の利点をうまく取り入れた見つけ出し、うまく乗り切っていくのではないか。 そう思えたからだ。 だからこそ、努力すればした分だけ報われる筋立てのドラマのように、うまくは行かない現実が描かれていく後半は哀しい。中でも-短編『幻にあらず』でも描かれているが-国を救わんと奮闘し、あげくに苦い挫折を味わう当綱の失脚は、『山月記』で遂に自らの野性を抑え得なかったもう一匹の虎を見る思いだ。彼だけではない。執政の者達は、満足した結果を残して去るのでなく、ちっとも減らない借金、結果の見えない事業に、ほとほとに疲れ果てた末、次々と致仕を選択する。更に天明の大飢饉という、不可抗力の災難まで降り掛かる。強い意志を持って臨んでいたはずの治憲までが、天に向かってヨブよろしく呼びかける。もちろんそれは一時の話で、すぐに治憲は民を守る為政者の立場に戻るのだが。 著者が倒れ、鷹山の死に至る所まで行かずに物語は終わるが、私はこの終わり方でいいと思う。漆の実が、自分が考えていたよりもっと小さな物であった事に気づいても-つまり理想と現実の落差に気づいても-その小さな物を積みあげ、やがて大きな実のある国を作り上げてゆく現実を予感させているからだ。 補巻 1 藤沢周平全集 第二十四巻 [ 藤沢 周平 ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
December 2, 2022 12:00:20 AM
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