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December 15, 2022
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みなさん、こんばんは。流通大手セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店大手そごう・西武を売却する方向で最終調整に入りましたね。今日もジョージ・エリオット作品を紹介します。

サイラス・マーナ―
Silas Marner: The Weaver of Raveloe
ジョージ・エリオット
光文社文庫

19世紀の初め頃サイラス・マーナーという機織りがラヴィロー村のはずれの石積みの小屋に住んでいた 子供達は怖い者見たさでサイラスに近づいていくが子供達に気づいたサイラスが彼等をにらみつけると逃げていく 「無知なひとびとは、力はすなわち慈悲なりとは容易に考えられなかった。日々の暮らしに追いまくられ、熱い信心がもたらす恩恵に浴したこともないひとびとにとって、その
 19世紀の初め頃、サイラス・マーナーという機織りがラヴィロー村のはずれの石積みの小屋に住んでいた。子供達は怖い者見たさでサイラスに近づいていくが、子供達に気づいたサイラスが彼等をにらみつけると逃げていく。何だか日本の民話『泣いた赤鬼』の赤鬼みたいだ。

 もちろんサイラスだって最初から‘怖れられるおっさん’だったわけではない。ランタンヤードに来た当時は、青白い顔をした若者だったが、人付き合いが良いほうでなく、茶色の目は近視で飛び出していた。おまけに北方系の見てすぐわかる顔立ちで、村人達とは異質だったので何となく近寄り難かったというわけだ。但し、機織りの腕は確かだった。そんなサイラスをますます異端視させる事件が起こる。教会の祈祷会で斃れてしまい、意識喪失が一時間続いた。現代なら単なるてんかんの発作と見られるが、皆はサイラスが特別な苦行を課せられたのかもしれないと考えた。「課せられるだけの何かがあるのでは?」という発想が当時の一般的な考え方だ。

 教会の信者仲間にウィリアム・デインという若者がいて、サイラスとはダビデとヨナタンと呼ばれるほどに親友になったが、一人の同じ女性を巡って争い事が起き、声の小さいサイラスが村を出ていく羽目になる。

 ラヴィローで御神籤が引かれ、やってもいない盗みで有罪と出たサイラスは、ラヴィロー村では人も宗教も信じられず、ひたすら金を信じることになる。ところがその金も悪者の仕業で盗まれ、金があった所には金髪の女の子が置かれていた。サイラスはその子供を母と妹にちなんでエピ―と名付けて育て始める。

 『アルプスの少女ハイジ』のアルムおんじとハイジのように、エピ―が登場してからサイラスの人生は変わり始める。子育てのあれやこれやを何もしらないサイラスを助けるドリー夫人をはじめとする近所の人達が優しい。また、村人たちもエピ―を通じてサイラスが悪い人ではないと思うようになる。前半は善良なサイラスを襲う過酷な運命と、裕福だが根性が汚いある一族の物語、後半はサイラスとエピ―の人情話になっている。

 このままほのぼのハッピーエンドかと思われたが、エピ―とサイラスに劇的な事実がもたらされる。
「天の恵みを門前ばらいなさりゃあ、それはもう迎えいれたもののもんになるんだ」
「わたしたちのお家って、なんてすてきなんだろう!わたしたちほど幸せな家族って、どこにもいないね」
 お互いの幸せを望みながらも、お互いが一緒にいることが何よりの幸せなんだと同じ方向を向いて微笑みあう親娘、血の繋がりはあっても二度と取り戻せない事があるのを痛感する実の親、勧善懲悪のおとぎ話的展開だった。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。


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最終更新日  December 15, 2022 12:00:21 AM
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