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みなさんこんばんは。女優の松原千明さんがハワイで亡くなっていたそうですね。今日はアンドレ・ジッド作品？と思うような内容の小説を紹介します。

法王庁の抜け穴 （光文社古典新訳文庫）
アンドレ・ジイド
Caves

アンティム・アルマン＝デュボワ(フランス人の名前は長い！)は長年リュウマチ性疾患で苦しんでいる。生理学者なので、ガチガチの科学至上主義にして無神論者だ。一方アンティムの妻ヴェロニックの弟ジュリウス・ド・バラリウルは、作家で敬虔なカソリック信者であり、神の奇跡を信じないどころか幼い姪ジュリーが聖母マリアのメダルを見せても
「聖母様はジュリーちゃんをお望みでなかったということかね？ジュリーちゃんがまだここにいるってことは」
と言ってしまう義兄の大人げない性格に困り果てている。そんなアンティムが聖母マリア像を破壊した後、ジュリーが
「アンティム伯父さまの罪のためにも、お祈りをお捧げいたします」
と言っているのを聞き、その夜マリア様の夢を見る。翌朝麻痺がすっかりなくなっていたアンティムは回心を宣言。ところがローマ教会が異端放棄の宣言を行うよう要求してきたため、フリーメーソン会員のアンティムは、結社の支援を全て失ってしまう。

　一方ジュスト＝アジェノール・ド・バラリウル伯爵は、息子ジュリウスに自身の庶子ラフカディオ・ルーキの身元を明かさないまま、調査を命じる。あっさり調査対象ラフカディオに見つかってしまったジュリウスは、彼を秘書として雇いたいと嘘をついてごまかす。ところがラフカディオは、後に伯爵から自身の出自を知らされ遺産を譲られる。ジュリウスの義弟アメデ・フルリッツソワールは敬虔なカトリック信者で、幽閉されたローマ法王を救い出すという計画に参加するが、実は〈百足組〉の首領プロトスが考えた詐欺だった。

　1893年聖母マリアのお告げを受けたと称する女性がローマ法王庁に断罪された。女性は「自分を断罪したのは偽の法皇であり、本物は幽閉されている」と言い出し、信心深い者が多数ローマに向かう。男女3組が救出資金と称して彼等から金を騙し取った実際にあった詐欺事件にインスパイアされた。

　えっ、これ、ジイド？と思うくらいドタバタ劇。人は宗教を利用し、宗教法人もまた人を利用する。と書けば、何だか現在日本を騒がせている某宗教団体のようだ、ラフカディオには『罪と罰』のラスコーリニコフみも。原題Cavesには「間抜け」の意味もある。さて、バティカンの間抜けとは誰を指すのか？

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。



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