映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。現代音楽の作曲家として数々の前衛的な作品を発表し世界的にも高い評価を受けた一柳慧さんが東京都内の病院で亡くなりました。89歳でした。今日は監督もやっている作家の小説を紹介します。

あなたの教室
Le celf-volant
レティシア・コロンバニ
齋藤可津子訳
早川書房

インド旅行体験者から「インドに行ったら人生変わるから」と言われて以来、行く気が全くなくなった。ところが、本当に人生を変えてしまった人がいるようだ。

　冒頭に登場し、学校の開校を迎え、緊張しているフランス女性レナがその人だ。誰だって初めては緊張するが、彼女の緊張の理由はちょっと違うようだ。というわけで、レナがある少女と視線を合わす件で、レナが人生を変えてしまった理由について物語は語り始める。

　教師を辞めインドに来た人・レナと、彼女が海で溺れかけているのを救った少女・ホーリー。レナは、「女だから」学校に通えないホーリーのために恩返しとして授業を行う。するとどこからか授業を受けたい女性達が集まり始めて。

　映画監督らしく、全般的に冗長な描写は排除して、読者の想像に任せる。ある状況を最後まで描くのではなく、結果に飛ぶ所などあるので、この作品をベースに映画化も可能だろう。
　
　著者の作品『三つ編み』に、娘に教育を受けさせたいと願う不可触賤民のインドの若妻スミタが登場した。本編はその内容を別の方面から掘り下げた作品と言える。

　児童婚、女性への暴力、労働をさせておきながら給料を搾取するなど、インドの子供が置かれている苛酷な環境が紹介される。勉強して広い世界を知れば、自由を求めたくなるのは当然だが、一方で旧弊な価値観に縛られた家族からすれば、「子供が勉強して知識を得たため反抗的になった」と映る。西洋にかつて支配された過去を持つインドならなおのこと、“上から目線でまことしやかな事を言う”西欧人への反発は強い。多勢に無勢、たった一人の教師が全てを解決できるわけではない。それでも動かなければ、何も変わらない。辛抱強く説得することで、西洋人の道楽と見ていた現地の人々が協力し、崩れるはずのなかった壁に、少しだけ抜け穴ができる。道半ば、しかしその道は必ず通れると信じることができる作品であった。

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