映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさんこんばんは。アメリカでアカデミー賞の前哨戦とされるゴールデングローブ賞の発表が行われ、最も注目を集める作品賞のドラマ部門はスティーブン・スピルバーグ監督の「フェイブルマンズ」が受賞しました。
一方、アニメ映画賞にノミネートされていた湯浅政明監督の「犬王」の受賞はなりませんでした。TVドラマシリーズの優しい伯爵を演じていたヒュー・ボネヴィルが悪役を演じる映画を紹介します。

ロンドン・バーニング​
The Corrupted

出演
ティモシー・スポール　ヒュー・ボネヴィル　サム・クラフリン

　腐敗した警察と手を組み、闇不動産売買やコカインの密輸を行う犯罪組織のボスであるクリフォード・カレンは、警察幹部アンソニー・ハモンドから、オリンピック開催の際に買い上げられる土地を聞き出していた。今からその土地を押さえることができれば、膨大な利益を得る事が可能なためカレンはその土地の買い上げに動く。その土地に作業場を持つ男イーモン・マクドナーの元を、部下と共に訪れたカレンは、言葉巧みに土地の売却を承諾させ、イーモンに書類にサインさせると、カレンは彼を殺害。自殺したかのように偽装。カレン一味が去った後、作業場に現れた幼いリアムとショーンの兄弟は、父であるイーモンの遺体を見つける。

　ここからが本編で大人になった兄弟が描かれる。強盗で服役していた元ボクサーのリアムは刑期を終えて出所し、弟ショーンの世話になりながら妻子を養うための堅気の仕事を探していた。実業家のカレンから声をかけられてボクサーに復帰したリアムは、彼が父の仇であることも、弟が運び屋をしている組織のボスであることも知らない。ある日ショーンが金を持ち逃げしたことに激怒したカレンは、ショーンを殺害。リアムは復讐のため、汚職警官を追う刑事のベケットと手を組み、カレンを倒そうとするが。

　オリンピックやW杯のような、国家を挙げたイベントが行われれば地価が跳ね上がることは、世界共通の傾向だ。日本もコロナ禍でケチがついたものの、それまではホテル建設などが積極的に行われていた。イギリスの実話を元にした本作のような利権絡みの表に出ないボスの暗躍はあったはずだ。

　リアムやベケットが悪を追求しようとしても常に先んじられてしまう。実は身近に裏切者がいたわけだが、その意外な素顔を知ると共に、腐敗が隅々まで行き届いてしまった堕ちた英国の姿が垣間見える。父の自殺に見せかけられた死によって、その後の人生を狂わされた兄弟が哀れ。とりわけ妻や息子とまっとうな暮らしを目指していたのに、ショーンの仕事をきっかけに裏社会と繋がりができたために逃げ回る羽目に陥るリアムの理不尽な運命が痛ましい。どんなに浄化システムが働いても、本当の悪は退治されずキレイな顔をしているラストが空しい。


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