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February 20, 2023
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みなさんこんばんは。H3ロケット打ち上げできませんでしたね。今日もイーディス・ウォートン作品を紹介します。

歓楽の家
The House of Mirth
イーディス・ウォートン
荒地出版社

NY郊外、ローレンス・セルデンは29歳のリリー・バートを見かける。18歳で華々しく社交界にデビューしたリリーが、夜更かしとダンスに明け暮れた11年を経て29歳の誕生日を迎えた時点から物語は始まる。

 リリーが19歳の時父ハドソンは破産し、父の死後母とリリーは放浪生活を送る。母親は逗留先の家政を批判したり不運な仲間の食事を避けたりしたので頼るべき友人が減ってしまうが、リリーの美しさに全てを賭けていた。

「まるで、復讐のためにゆっくりと作り上げた何かの武器であるかのように、彼女は娘の美貌を、激情に近い気持ちで、吟味した。それがバート家に残された最後の資産であり、母と娘の生活が、それを中心に再構築されるべき核だった。彼女は、まるでそれが自分の財産であり、リリーは、単に、その管理人であるかのように、娘の美を油断なく見張った。そして、美人に課せられている責任感を教え込もうとした。彼女は、心の中で、他の美人たちの経歴を辿って、美しいとどんなことが成し遂げられるかを、娘に指し示した」
 

「みすぼらしい生活に忍び寄られて、足を引っ張り込まれないようにしなさいね。どうにかして、そんな生活をしなくて済むように、頑張りなさいな-あなたは若いからできるわよ」

2年の放浪生活の後にミセス・バートが死に、リリーは父の姉ミセス・ベニントンに引き取られるが、母が言い残した「美こそあなたの財産」「貧乏暮らしをするな」という言葉が呪いのように彼女を縛りつける。威圧的な母親像はウォートンの実体験に基づいており、母親の異常性がかなり執拗に描かれる。

「彼女のまわりには活気があり、同時に優雅であり、強健でありながら、同時に繊細だった。こんな彼女を作り出すためには、金に糸目をつけなかったに違いないし、大勢の鈍感で不器量な人たちが、何か不思議な方法で、犠牲になったに違いない。」

『無垢の時代』のエレン同様、上流階級婦人による活人画の場面、社交界進出を望む西部出身者のパーティ等、ヒロインに芸術的素養が備わっている事は度々提示されるが、当時それだけで女性は自活できない。結局彼女が密かに頼んだのは男性を代行者とした投資だったが、あらぬ誤解を受けてしまう。

 リリーの理想の相手は冒頭で出会ったセルデンである事が明示されるが、両者の価値観は真っ向から対立する。
セルデンの考える成功とは
「成功とは、個人の自由ですよ。あらゆるものですよー金銭、貧乏、安楽、心配、あらゆる物質的な災難から、解放されることです。精神の共和国のようなものを保持すること-それこそ僕の言う成功というものですよ」

セルデンと同じように精神の自由を渇望しながら、それだけでは腹は膨れないことを知っているリリーは

「わたしが欲しいのは、必要な時には、嫌なことも恐れず言って下さる友人なんです。時々、あなたがそういう友人かもしれないって思うことがありますの」


「わたしはひどく貧乏ですわーでも、とても費用がかかる人間ですの。わたしには、たくさんお金がなくてはなりませんの」

彼を遠ざけるリリーの価値観は、幼少時からの母親の刷り込みそのままなのだが、当時の女性の立場の不自由さも関係している。

「女性は結婚しなければならないのに、男性は、自分の意思で、したければするかもしれない、っていうことなんですね。」

「女は、本人と同じくらい、着ている服で、よそにおよばれするのですわ。服は背景であり、粋だとおっしゃっても構いません。服は成功を生みだしませんが、でも、その一部になっています。誰が薄汚い女を望むでしょうか?わたしたち女性は、駄目になるまできれいで着飾っているべきだと思われているのです-もしそういうことを、ひとりでやっていけないのなら、わたしたちは共同経営者を見つけなければなりませんわ」

自由に生きるには金が要る。金を得るためには限られた方法しかない。外面の豊かさを得るためには内面の豊かさを捨てなければならず、文明は必ずしも人を幸福にしない。自身も社交界にいたウォートンの痛烈な社会への皮肉。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。






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最終更新日  February 20, 2023 12:00:21 AM
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