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カテゴリ:その他のジャンルの海外小説
みなさんこんばんは。中国不動産大手の恒大が米国で破産申請を出しましたね。
今日は当時子供だったはずのダニエル・デフォーが書いたペスト大流行時代の作品を紹介します。 新訳ペスト A Journal of the Plague Year ダニエル・デフォー 興陽館 「あれは一六六四年、九月の初めごろだったと思う。」 大都市ロンドンを恐怖に陥れたペストの流行はこうして始まった。 「当時はまだ、事実や噂を広く知らせるための新聞は存在しない」 もちろんTwitterやFacebookもないため、原因不明の病がどこでどれだけ流行しているのかわからない。この国だけなのか、この地方だけなのか。知らせとして届くのは、教区の死者数を知らせる死亡週報だ。すぐ収まるかと思われたが、次第に数値と記載される地方が増えていく。この記載は新聞で毎日報じられた新型コロナの報道そのものである。 国や地方公共団体のセーフティネットー今でいう所の休業補償はない。結局は「自ら助く者を助く」で、馬具屋を営む書き手の私は、雇っている職人や取引先の事を心配しなければならなかった。 また「何によって感染するのか」という明確な提示がなかったため、ロンドンからの避難民は、野宿ではなく、目的地に着くまで毎日宿屋に泊まる。もちろん感染対策など取らないので、知らぬうちに伝染病を広めていたことになる。原因不明の病に倒れる人が増えた時、人が頼るのは神である。科学が登場してくるまでの神の万能感がすごい。「神が助けて下さる」事に賭けた私は兄の誘いを断ってロンドンに残る。 ただあまり神に頼りすぎると病の本質を見誤る。その点筆者は近代的な視点の持主で 「今回の疫病が「伝染」というかたちで蔓延した」 ことを理解し 「医者が「発散気」と呼ぶ蒸気のようなもの、あるいは、患者の息や汗、ただれた皮膚の発する悪臭、いやひょっとすると医者さえも想像できない何かが媒介になっていて、一定の距離よりもそばまで患者に近づくと、その発散気のたぐいが健康な者を冒す」 ほぼ現代のウィルス感染のしくみを理解している点が素晴らしい。そうでない場合は 「疫病は、天から直接もたらされるものであり、中間的な媒介は存在しない。この人間、あの人間と特定された者に、じかに与えられる」 と選民思想とは別の選ばれし者が病気にかかる説に傾いてしまう。 ロンドンは閉鎖され、感染者が出た人の家は隔離され、監視員が見張る事になる。必要な食糧は監視人が購入するが、費用はまず家人が出し、余裕がなければ国が出す。国定伝染病と認定されれば、今では国が全面負担するところだ。新型コロナでもホテルを抜け出す感染者がニュースになったが、中世でも感染者が雇人だった場合は放り出して家族だけ穴を掘って逃げるという悲惨な話もあった。原因がわからないながらも、隔離・消毒の徹底という現代に通じる基本原則をきちんと守っていたのは素晴らしい。しかし筆者は行き過ぎた隔離を批判しており、この辺りは日本で最初に感染したクルーズでの対応に通じる。陸上に上げなかったがために、船内で感染者が蔓延してしまった。どこも似たような事をやっているのである。 それにしてもロンドンを襲ったペストのあんなこんなをまるで見てきたように書いているデフォーが流行時5歳というのが一番の驚きだ。 新訳ペスト [ ダニエル・デフォー ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
September 13, 2023 12:00:27 AM
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