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カテゴリ:その他のジャンルの海外小説
みなさんこんばんは。国の認証取得の不正問題で「ダイハツ工業」は、国内に4つあるすべての自動車工場の稼働を25日から順次、停止しています。会社は少なくとも1月中は稼働の停止を続けることを明らかにし、ダイハツの経営だけでなく取引先などを含めた地域経済への影響が避けられない見通しです。今日は実在の女性をモデルに描いた小説を紹介します。
ルクレツィアの肖像 The Marriage Portrait 新潮クレスト・ブックス マギー・オファーレル 彼女の夫の祖母は有名人である。ルクレツィア・ボルジア、嫁いだのは3度。最後に嫁いだのはアルフォンゾ1世・デステ。父も兄も悲惨な死を迎えたが、彼女は女児出産後、産褥の合併症で亡くなる。当時は、まだフツーの死である。 その孫が彼女の夫、アルフォンゾ2世・デステ。3度結婚するも、いずれも子供をもうけることができず、庶出の子供もいなかった。よって、デステ家が絶えた原因は彼にある。 しかし当時はそうは考えられなかった。16歳の新妻ルクレツィア・デ・メディチは1558年結婚し、1560年にフェラーラへ移った翌年に急死。夫に毒殺されたと、広く噂された。フランス王が、不細工な嫁と離婚するのに法皇の許可をわざわざ貰った時代である。離婚は難しい。離縁でなく死別という手段を選んだのは、ルクレツィアの父が後にトスカーナ大公となるやり手だったからだ。 1561年、まさに彼女が死ぬ日から物語は始まる。 「ほんとうは夫の目を見ながらこう言いたい。あなたが何を企んでいるのかはわかっているのよ。夫は不意を突かれて驚くだろうか?夫は彼女のことを、うぶで世間知らずの妻、子供部屋から出てきたばかりの女だと思っているのだろうか?彼女にはすべてわかっている。夫が綿密に、あらゆることに配慮して計画を立てたのがわかっている。ほかの人たちから引き離したのだ。」 「上手におやりなさいね、と夫に忠告してやりたい。彼女の父親は娘を殺されて黙っているような人間ではないのだから。」 彼女は16歳の何も知らない少女ではなく、怜悧と言われる夫の企みを見抜く賢い女性として描かれる。また、彼女が幼い頃雌虎と出会うエピソードが紹介されているが、虎の死を知り病気になった彼女が回復した後、どうやら獣を体の内に取り込んだような示唆がある。そして怜悧な夫は勿論気づいており、 「妻の芯の部分には何かがある。ある種の反抗心のようなものだ。ときおり妻に目を向けるとそれが感じられるのだー妻の目の奥に動物がいると言ったらいいか。結婚前にはこんなことはまったく知らなかった。何も気がつかなかった。釣り合いの取れた性質で、健康状態も良好だとばかり思っていた。とても素直に思えた、うっとりするほどね。若くて純真で。ところがこうしてあれが見えるようになると、どうして見逃していたのかわからない。妻のなかには常に、服従することもなければ支配されることもない部分があるのではないか、と気になるのだ」 「妻は意思の力とか性格的な病弊とかによって懐妊しないようにしているのではないだろうかと。ああいうひどく不安定な精神状態の女性の場合、子どもがその胎内に根付く望みがないということはあり得るのだろうか?」 その獣性こそが子供を生めない原因ではないか、と言うのだ。酷いいいがかりである。彼女の獣性は、押さえつけられた彼女の個性そのものなのに。わずか27歳でも、宮廷の権謀術策を知り抜いた夫が、せっかく得たソウルメイトや楽しみを奪おうとする中で、ルクレツィアが最後に選んだ道は。 産む性を強要される点で、マーガレット・アトウッド『侍女の物語』と共通。『ハムネット』でシェークスピアの陰に隠れていた妻アグネスの生涯を描いた著者が、同じく歴史の陰にいた少女の短い人生を描く。ロバート・ブラウニングの有名な詩『最後の公爵夫人』にインスパイアされた。全て過去の話なのに、現在形で語られる点も、大いに臨場感を煽る。 ルクレツィアの肖像 (新潮クレスト・ブックス) [ マギー・オファーレル ]楽天ブックス お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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