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カテゴリ:海外のミステリー&ファンタジー小説
みなさんこんばんは。2024年6月22日からイギリスを公式訪問されていた天皇皇后両陛下が28日、かつて留学していたロンドン郊外にあるオックスフォード大学を訪問され雅子さまには、このあと、大学から「名誉法学博士号」が授与されましたね。
今日はH・G・ウェルズの有名作品を含む短編集を紹介します。 モロー博士の島―他九篇 H・G・ウェルズ 岩波文庫 「モロー博士の島The Island of Doctor Moreau」 遭難した船員プレンディックはモロー博士とその部下モンゴメリーに救助される。プレンディックが生物学を学んだ事があるため、二人は彼を迎え入れるが、プレンディックは島にいる奇妙な形の人間に目を止める。実はモロー博士の創造物である動物人間だった。メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』を読んでいたウェルズが作り上げたマッドサイエンティストのモロー博士は、島で自分が作り上げた動物人間たちに掟をおしつけ、自らを神として振る舞う。プレンディックは自然に反したモロー博士に反感を抱く。 獣だった頃は自然に環境に適合してそれなりに幸せな暮らしをしていたはずである。それが今はどうだろう。人間性などという空しい拘束を受けて、理解もできない法に縛られている。彼らの疑似人間生活は苦しみに始まり、永い内面の葛藤、モロー博士への恐怖に終始するのだ。何のために?気紛れのためか? 本作の掉尾はラストであろう。帰国したプレンディックは街を行く人たちに、ありえないものを見出す。それは幻か、それとも。 出会う男も女も全て外観は人間だが、実際は人間に改造された獣であり、いつかは退化して獣性を露わにするのではないかという不安である。 私は周囲の人々に恐怖心を抱くのだ。明るい顔、暗い顔、危険な顔、不安な顔、不真面目な顔といろいろだが理性あるしっかりと落ち着いた顔は見当たらない。彼らの顔に獣性が表れて、モロー博士の島の堕落が英国全土で繰り返されるのではないかという妄想に悩まされる 獣性も人間性も、科学で人工的に作らずとも、それぞれ持っていたのでは。 「エピオルニス島Aepyiis Island」 顔に傷のある男が語る伝聞スタイル。探検商会にやとわれているという彼はエピオリヌスという、飛べない巨鳥を捕まえたというのだ。最初は従順だった巨鳥と彼の間に何が。 「蛾The Moth」 昆虫学者ハブレーとポーキンズは、正反対の性格故に常に争っていた。弁の立つハブレーの方に人が集まり、ポーキンズの怒りと嫉妬は留まることを知らない。そしてその怒りを抱えたままポーキンズはあっけなく病死。するとハブレーに奇妙な現象が起こり。SFというよりホラー。 「ブラウンローの新聞The Queer Story of Brownlaw’s Newspaper」 未来の新聞が手に入る話。未来を利用して金持ちになるとかそういう発想は全くない。1932年に描いた1971年の未来は、合っている所もあり。 「故エルヴィシャム氏の物語The Story of the Late Mr.Elvesham」 「お前は既に死んでいる!」とは言われなかったがもうすぐ死ぬと言われたイーヴンが、高名なエルヴィシャム氏から人格を入れ替えることを提案される。しかしうまい話には必ず裏があり。 「マハラジャの財宝The Rajahs Treasure」 マハラジャが宝物を隠すために金庫を購入する。王位継承者や家臣は、マハラジャを殺して宝を手に入れようと画策。 SFではなく、何を考えているかわからないブラックボックスのマハラジャと彼を巡る周囲の人の権力闘争。さてマハラジャにとっての宝物とは? 「デイヴィドソンの不思議な目The Case of Davidsons Eyes」 ディヴィッドソンが盲目になった?のではなく、突然船や島が見え始める。それらの光景は実は全く空想の産物ではなく。この現象によって巻き起こるドラマを描きたいというよりは、ただ現象を描きたかっただけ? 「アリの帝国The Empire of the Ants」 人々を悩ませるのは、なんと蟻。毒性を持っている蟻との対決の顛末は。 「紫色のキノコThe Purple Pileus「パイクラフトの真実The Truth About Pycraft」 盗まれた細菌/初めての飛行機にも収録。 2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。 ![]() 『中古』モロー博士の島 他九篇 (岩波文庫)KSC お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
July 1, 2024 12:00:34 AM
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