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July 22, 2024
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みなさんこんばんは。日本時間の19日、世界各地で、セキュリティーソフトが原因とみられるコンピューターのシステム障害が起き、旅客機の運航や医療、放送など幅広い分野に影響が広がりました。障害の復旧は進んでいますが、アメリカの空港では影響が続いています。今日もエミール・ゾラ作品を紹介します。

テレーズ・ラカン〈下〉​
Therese Raquin
エミール・ゾラ
岩波文庫

 さて、邪魔者カミーユを排除して、結婚までに工作を労したにも関わらず、ローランは
「いまではわずらわしい女だが、この女をひとりじめにするために、どんなにいやな努力をしたことかと思うと、この女と結婚しなければ、人殺しも無意味でむごたらしいものになるのではないかという気がしてきた。」

 結婚の本質が、最終目的ではなく、殺人の元を取ろうとする行為にすり替わっていった。一方テレーズも、結婚さえすれば悪夢は見なくなると考える。
「再びはげしい愛欲にかられたときも、結婚の夜を待ち、身に疑いがかからないことが確実になったとき、そのそきこそ狂ったように愛欲の喜びにひたろうと、自制した」

二人にとっての結婚の意味がすりかわっていったのだ。にも拘わらず二人は既定路線を突っ走る。そこに破綻が生じるのは自明の理である。
「ただ腕をさしのべさえすれば、情熱をこめて抱き合えるのに。だが、ふたりの腕はぐったりして、まるでみちたりた愛欲ですでにつかれているかのようだった。」

 ローランは死ぬ間際にカミーユに噛まれた傷が今も痛む(ここちょっとホラー風)し、自分が書いたカミーユの肖像画にすら怯える始末。ラブストーリーが始まるはずが、ホラーが始まってしまったわけだ。

 さてホラーはここで終わらない。ラカン夫人が中風になって、満足に話もできなくなったことで、二人の感覚が鈍ったのか、カミーユ殺しを彼女に聞かれてしまう。夫人の友人たちが訪れた時、必死の思いで「テレーズとローランが」と書くのだが「二人がよくしてくれるって言いたいんだろ?」と友人たちはわかってくれない。
嬉しい誤算といえば、仕事を辞めたローランが絵に打ち込むと、友人に激賞される。
「ローランは、たぶんあの大きな錯乱状態で肉体と精神をはげしくゆさぶられた結果、気の小さい男にもなったが、同時に芸術家にもなったのであろう。」

ところが、その絵のベースに全てカミーユがいるという呪縛展開になっていく。愛情が全て憎しみに転じた三人が毎日食卓を囲むのもまたホラーである。さてこのホラーストーリーの行方は。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。​
テレーズ・ラカン(下) (岩波文庫) [ エミール・ゾラ ]​​楽天ブックス






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最終更新日  July 22, 2024 12:00:27 AM
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