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July 31, 2024
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みなさんこんばんは。オリンピックは柔道女子48キロ級で角田夏実が金メダルを獲得しましたね。今日もゾラの作品を紹介します。

ボヌール・デ・ダム百貨店―デパートの誕生 (ゾラ・セレクション)
Au Bonheur des Dames
エミール・ゾラ
藤原書店

ヴァローニュから弟ジャンとペペを連れてパリにやってきたドゥニーズ・ボーデュが、まず目を向けたのは、叔父のラシャ&フランネル専門店ではなく、ボヌール・デ・ダム百貨店だった。ジャンがパリの象牙職人の所で働けるようになったが、何かと女性絡みのトラブルを起こす彼を一人でパリに遣るのは心もとない。ドゥニーズは、叔父がパリに来るよう勧めた手紙を頼りに家族全員でパリにやってきた。ところが、手紙を出した一年前は、羽振りが良く、親戚の面倒を見ようかと申し出るほど余裕があった叔父の店は、よりによって目の前にできた近代的百貨店に押されて寂れていた。
「叔父の店には居心地の悪さを感じた。それは古臭い商売の凍りつくような穴蔵に対する理由のない軽蔑であり、本能的な嫌悪だった」

それでも他に知り合いもなく、叔父の店で就職することを考えていたドゥニーズだが、やはり人を雇う余裕などないと言われる。困ったドゥニーズだが、ひょんな事からボヌール・デ・ダムで職を得る。

 ボヌール・デ・ダムの所有者は、『ムーレ神父のあやまち』のセルジュの兄オクターヴだ。彼は『ごった煮』でボヌール・デ・ダムの所有者エドゥアン夫人と結婚した。オクターヴが商才ありのモテ男で征服欲の塊だ。オスマン(作中ではアルトマン男爵)のパリ大改造と相まって、この時期百貨店はフランスに広まっていく。買い物が単なる用事・家事ではなく、それ自体がイベントとして楽しめることに、女性たちが気づいてしまった。

 オクターヴが店員を競わせる意味で
「彼らが売ったどんな小さな布地の切れ端であろうと、ちょっとした品物であろうと、決められた歩合を与えることにした」
ため、社内競争が激しい。来たばかりのドゥニーズは当然不利。店員からのいじめはまるで『スチュワーデス物語』。そんな彼女をなぜか気にかけるオクターヴとの間に恋が始まる。

 これまで悲惨な運命に遭う登場人物ばかり見てきただけに、目の覚めるようなハッピーエンド。女性を征服する側だったオクターヴが、遂に女性に征服されたと見ても良い。

 ただ一方で、ドゥニーズの叔父ボージュ一家は
「ボヌールは彼らから何もかも奪っていくのだ。父親からは財産を、母親からは死にかけている娘を、娘からは十年前から待っていた夫を。」

と書かれたように、悲惨な末路を辿る。大量消費時代に応えることのできる大型店のみが生き残り、小型店舗が淘汰されていく様は、現在にも通じる。


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最終更新日  August 27, 2024 10:25:36 PM
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