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みなさんこんばんは。ニューヨークタイムズのデジタル契約者が1000万人を超えたそうですね。
今日はロシアを舞台にしたファンタジー小説を紹介します。

魔女の冬: 冬の王3
The Winter of the Witch
キャサリン・アーデン
創元推理文庫
訳　金原瑞人・野沢佳織　

​　モスクワを火事から救ったワーシャだったが、彼女を火事を起こした魔女と糾弾する民衆に捕らえられてしまう。火あぶり寸前のワーシャの命を救ったのは、かつて縛ったはずの混沌の精霊、熊（メドベード）だった。だがワーシャは熊との共闘を拒み、力を使い果たした冬の王が囚われている真夜中の国へ向かう。

　昔からいる神と、キリスト教との対立は、ソ連だけではなく、世界各国で見られた。しかし、遂には国王を破門できるまでになり、権力と結びついたキリスト教によって、古来からの神は駆逐される。そんな中で精霊の言葉を聞くことで家族や地域社会から疎外されてきたヒロインが、彼らの側に立っていくのは自然な流れである。世慣れた兄姉がいて、いかにもな忠告をしてくるにもかかわらず、自分の正義感のままに突っ走って周囲を不幸に陥れてしまう。しかしその正義感と優しさにとことんほれ込んだ冬の王の献身を力に、周囲を味方につけていく。キリスト教は、本書の中でははっきり悪として描かれており、体現するのがコンスタンチン神父である。金髪碧眼で見目麗しく、言葉も美しい。しかし心の奥底にはワーシャに対して邪な思いを抱いている。見た目と中身とは異なるという点は、本作のテーマである。

　人間と精霊のいずれも拒否せず助け、両者の架け橋となり故国を守ろうとする少女の恋愛と戦いを描くシリーズ完結編。正直第1巻はあまりぴんとこなかったが、バレエでも有名な火の鳥が出てくる辺りから俄然面白くなり、完結編まで読了できた。クライマックスに登場するのは、実際にあった1380年のクリコヴォの戦いである。モスクワ大公ドミートリー1世（ドミートリー・ドンスコイ）の率いるルーシ諸侯連合軍が、ジョチ・ウルスの事実上の支配者ママイの軍とそれに同盟したリトアニア大公国・ルーシ諸侯などの連合軍を破り、タタールのくびきから脱却するきっかけとなった。


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