ところ変われば豆腐も変わる~小説『香港の甘い豆腐』
みなさん、こんにちは。インフルエンザが流行の兆しですね。私は今日ワクチン接種してきましたよ。みなさんはお済みですか?さて、今回は最近新作を発表した大島さんのティーンズ向け作品を紹介します。香港の甘い豆腐大島 真寿美進学か就職かという進路は、否が応にも見えてくる十八才。高校生になりたての十六才。二つの間の十七才は、どうにも中途半端だ。とうてい将来の姿なんて思い浮かべられないのに、大人達は、「あと一年なんてすぐなんだから勉強しなさい。」「ちゃんと将来の事考えなさい。」とせっつく。それも、自分達がその頃どうだったかなんて、すっかり忘れた口ぶりで。 「そんな事言われても、スタートラインもゴールも見えないのに、何に向かってどこを走るっていうのよ。」 主人公・彩美も、やっぱりモヤモヤした思いを抱いていた。親の小言に「しょーがないなぁ。でも、あーやっぱりノラない。」とボヤきつつ、机に向かうのが、こういう時の無難なやり方。だけどあいにく彩美には、伝家の宝刀とも言うべき一言がくすぶっていた。「これを言ったら、母さんは絶対何も言い返せない。」と確信を持てる、この言葉。 「どうせ父親も知らない私ですから」 効果は抜群。母親は口をぱくぱくさせて沈黙。ところが、この先が予想とは違っていた。 母親は、銃口をつきつけるように彩美にパスポートとチケットを握らせ、一緒に香港に旅立つ。 「銃口をつきつけるように」とは、穏やかでない。並々ならぬ決意が見てとれる。「お母さんは、さぞかしあれこれ思い悩んだ末に出かけたのだな」と思ったが、後に明らかになる経緯からすると、これが的外れ。かなり行き当たりばったりの選択だったようだ。但し、いざ「これだ!」と決めた後の勢いはある人だ。行き先が香港で良かった。ヨーロッパだったら、これほどフットワークは軽くあるまい。 母親の母親-つまり祖母も、かなりユニークな人だ。 何せ、まだ見ぬ父親にこれから会うという彩美に対する最初のアドバイスが、 「どついて、蹴りたおして、成敗しておいで。」なのだから。 そんな二人の遺伝子が入っている彩美だから、どうしてなかなかたくましい。おろおろする母親を尻目に、ホームステイを決め、香港の言葉や食べ物に、どんどん馴染んでいく。行った所がまた、良かったんだろう。遠慮が美徳の日本とは違って、狭い領土に沢山の人が住んでいる香港では、皆「怒ってんのか?」って勢いで自己主張している。そうしないと自分が埋もれてしまうのだ。ホームステイでは、カルチャーショックを受けて萎縮する場合もあるが、彩美の場合はプラスに働いたようだ。日本にいる時は気になっていた母親や祖母の言い争いも、コントとして聞き流せるようになり、もやもやしていたスタ−トラインも見つけてしまう。 醤油と鰹節、または味噌汁。日本料理なら豆腐の定番料理はこれ。でも、中国に行けば、また違った豆腐の味が楽しめる。 人だって、おんなじだ。 「自分の世界は、目に見えるここしかない。自分のキャパは、これしかない。」そう決めつけてしまう前に、すぐ側にある甘い豆腐に、ちょっと箸をつけてみませんか? 香港の甘い豆腐 (小学館文庫) [ 大島 真寿美 ]楽天で購入送料無料☆ スペルガ スニーカー キャンバス 2750 COTU クラシック SUPERGA 2750-COTU 50代 30...価格:5,490円(税込、送料込)