変わりゆく瞳 映画「ラブ・レター~パイランより~」
みなさんこんばんは。2025年4月に開催する大阪万博のパビリオンが大幅に遅れているそうですね。今日も韓国映画を紹介します。『ラブ・レター~パイランより~』 ソン・ヘソン / シネカノンFailan 出演セシリア・チャン(白蘭=パイラン) チェ・ミンシク (カンジェ)監督脚本ソン・ヘソン 原作浅田次郎「ラブレター」40を過ぎてもチンピラ止まりでだらしのない生活を送るカンジェ。かつての友人で今はしがない組織のボス・ヨンシクから身替わりの出頭を頼まれて承知した矢先、警官の訪問を受ける。「あなたの奥さんが死にました。」カンジェは小銭欲しさに中国娘パイランと偽装結婚していた。オープニングは韓国に来たばかりの白蘭の映像で始まる。彼女の目は、おどおどしているが、まっすぐ前を向いている。画面が切り替わり、煙草の煙がこもる店にいる男が映る。突っ伏して寝ている所を起こされた男は、カンジェ。彼は死んだ魚のような目をしていた。かつての友人を駒としか思ってないヨンシクは、すぐに「うん」と言ってくれないカンジェを、「飼い主の手を噛んだ犬」のような目で見る。一瞬の後、斬るんじゃないかと思う鋭い目だ。でも、目から下は笑ったまま。「心で怒って顔で笑う」芸当が、彼にはできる。カンジェはその逆。自分の店の新しい店長として入り込んでいた若者に「ヨンシクさんに確かめるからな。」と凄むが、実際に会った時には確認しない。実は若者の言う事が真実だとわかっているが、一応凄んでみただけ。安全圏で意気がる本当に情けない男だが、パチもんのピカチュウを枕に眠る姿は、どこか憎めない。そんな彼の目が、変わってゆく。一度も目を会わせた事もなく、存在すら忘れていた妻・白蘭が、確かに生きていた。その事が、段階を経て実感としてわかってくるからだ。白蘭の住んだ町に向かう電車の中で最初に手紙を開ける時、カンジェは封筒の広い方をぞんざいに指で破っていた。しかし、二度目の手紙を受け取った時は手紙、近所の人達の話などから、彼女の人となりや、自分に向ける感情を知っている。だから、彼はちゃんと封をした所を丁寧に開ける。とても静かな、穏やかな目で。クライマックス。号泣が大安売りで宣伝されて、何だか見る前からハンカチを用意されている雰囲気に反発していたが、やはりあの場面にはじんときた。白蘭のたどたどしい韓国語か、手紙の内容か、カンジェを演じるチェ・ミンシクの演技のゆえか、それともその全ての相乗効果か。それまでずっと第三者の目で見ていたが、あの瞬間、カンジェの心情にぐぅっと自分の心が寄ってゆくのを感じた。日本語版とは違うけど、あれ以外の結末にしたら、それこそファンタジーになってしまっただろう。飼い主は、手を噛んだ犬を決して許さない。【中古】 ラブ・レター~パイランより~/ソン・ヘソン(脚本)(監督),チェ・ミンシク,セシリア・チャン,ソン・ビョンホ,コン・ヒョンジン,浅田次郎(原作),アン・サンフン(脚本),キム・ヘゴン(脚本)価格:990円(税込、送料別) (2024/3/10時点) 楽天で購入